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映画『英国王のスピーチ』レビュー ★★★★

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ


 1925年の大英帝国博覧会。

父王ジョージ5世より閉会のスピーチを依頼された次男のヨーク公アルバート(コリン・ファース)は、スタジアムに集まった大勢の観客が見守る中、設置されたマイクの前に緊張した面持ちで立つ。

最初の言葉をなんとか絞り出して演説を始めたアルバートだったが、どもってしまい次の言葉が出てこない王子の声を聞いていた観客達は下を向いてしまう。

 1934年ロンドン ピカデリー145番地。

アルバートの吃音症を治療するため、妻のエリザベス(ヘレナ・ボナム=カーター)は様々な方面から医者を集めていたが、この日の医者はアルバートの手のひらにいくつかビー玉を乗せ、それを口に入れろと言う。

エリザベスがこの治療法は古すぎないかと言うが、戸惑いながらも口いっぱいにビー玉を頬張ったアルバートは、手渡された本を読み始めるがえいずいてしまい、ビー玉を吐き出し「飲み込むところだったぞ」と怒って部屋を出て行く。

アルバートはエリザベスに「もう治療はやめようと」という。

 ハーレイ街のある建物を訪れるエリザベス。

中に入り、エレベーターの”L・ローグ 言語障害専門”と表記されたボタンを押す。

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作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:2010年/イギリス・オーストラリア/118分
  • 監督:トム・フーパー 
  • 脚本:デヴィッド・サイドラー
  • 撮影:ダニー・コーエン
  • 音楽:アレクサンドル・デスプラ
  • キャスト:コリン・ファース/ジェフリー・ラッシュ/ヘレナ・ボナム=カーター/ガイ・ピアース/ティモシー・スポール

レビュー

 第83回アカデミー賞の作品賞・主演男優賞・監督賞・脚本賞を受賞し、他世界の映画賞を独占したトム・フーパー 監督作『英国王のスピーチ』をBlu-rayにて鑑賞。

 内気で弱気なアルバートは、4歳から煩っていた吃音で、王家のものとしてある意味一番大切なスピーチがうまく喋れずにいた。

そんな時、妻エリザベスが探し出したあるセラピストの指導により、アルバートの吃音症は徐々に回復すると、ラストでは全国民に向けた開戦のスピーチを見事に披露するいう史実を基に描いた物語。

 世界中の映画賞を受賞し、評論家からも絶賛された本作は観る前から非常に期待していた作品だった。

ただその期待度が大きすぎたのか、最初に本作を見終わった後の感動が、思いのほか薄かったのを思い出す。

始まってすぐに作品に引き込まれると、終始ひ弱な国王を応援している状態で観ていくことになり、最後は見事なスピーチを聞いて胸をなでおろす。

まずそんな感想しか浮かばなかった。

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 さらに観る前にスピーチの内容が、当然心を揺さぶられるもののように思い込んでいたので、その内容は置いといてただ上手にスピーチできただけというこの結末はどうなんだろう。

またそのスピーチ自体も、なんだか国王が国民に向けて発したメッセージには思えず、なにか腑に落ちない違和感だけが残ってしまった。

なので、こんなに絶賛されていた作品でもあったし、これはちょっと間を空けて、もう一度しっかり見直さないといけないと思い、しばらく寝かせることにする(^^;)

そして今回久しぶりに観ることに。

最初に観たのが2020年なので、実に約3年ぶりの鑑賞となり、ここで初めてなぜそんな感想しか浮かばなかったのかが判明する(^^)

 それは私が、タイトルから英国王がいかに素晴らしいスピーチをするのか、そのスピーチ自体に注目していたが、この注目するところが全く違っていたのだ(^^;)

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あくまでも中心となるストーリーは、そのスピーチに至るまでの話であり、アルバートの吃音を治すために雇われた言語聴覚士のライオネル・ローグとの友情と、王にずっと寄り添っていた妻のエリザベス妃の献身的な愛。

初見で国王の吃音は心の病だと見抜き、まずその不安をなくすことに尽力するローグと、時に衝突しながらも国王と一般人という身分を超えた友情により、次第にアルバートは自信を取り戻し、国王としての使命をも自覚していく。

そう、スピーチではなく、”ジョージ6世”が成長して行く過程に注目する作品だった。

今さら(爆)

ラストで国民から称えられる国王の背中を見つめる、ローグの優しい眼差し。

普通なら決して交わることがないふたりが、めぐり巡って必然だったように出会う人生の奇跡。

そして人生とは良くも悪くも、人との出会いによって大きくその舵を切られ、まだ見ぬ未来へと誘われるもの。

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 奇跡といえば、この作品自体についても撮影開始の2週間前に、なんとローグの孫という人物が現れ、所蔵していたローグの日記が見つかるという奇跡が起き、それを読んで脚本も書き換えられたとのこと。

 本作は英国史上もっとも内気な英国王ジョージ6世の逸話として紹介されているんだけど、彼の詳細を調べてみると、実際に第二次世界大戦中のイギリス国民への誠実な姿勢と態度で、とても愛された国王だったとのこと。

吃音だけに目を向けずに、かれが第二次大戦中に屹然とした態度で、イギリス国民を大いに勇気づけた事実。

本編にはそういうシーンはないが、史実が実に魅力的で、国王の人となりを大いに語るこれらのエピソードをもっと入れてほしかったなあ。

あくまでもセラピストと吃音克服に懸命に取り組む姿が人間臭く、それだけで愛すべき国王として描かれていところがなんだかちょっと物足りない・・・かな。

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 キャスティングについては、もうこれだけ魅力的な演技派が揃ったというだけで、素晴らしい作品になるだろうことが確定というぐらいの贅沢さ(^^)

まずもともと英国紳士のモデルのようなコリン・ファースは、王族としての品格と威厳がピタリと役にはまり、醸し出すひ弱さと不器用さが国民から愛されたジョージ6世を体現し、見事アカデミー主演男優賞を受賞

さらに本作でライオネル・ローグを演じ、アカデミー助演男優賞にノミネートされたジェフリー・ラッシュの、ユーモアと優しさ兼ね備えたある種異端のセラピストを、魅力的に描いた卓越した演技力がとにかく素晴らしい。

これだけの演技を披露して、なんでノミネート止まりだったのか気になり、2011年に発表された第83回のアカデミー賞を調べてみたら、この年の助演男優賞にはデヴィッド・O・ラッセル監督作「ザ・ファイター」のクリスチャン・ベールが受賞していた。

この「ザ・ファイター」、恥ずかしながら私は全く知らなくて、今調べてみるとクリスチャン・ベールは13kgの減量をし、髪の毛は抜くは歯並びは変えるはの凄まじい怪演で、映画賞を総なめだったとか。

「ザ・ファイター」ね・・・メモメモ(^^;)

また、ティム・バートンのせいでへんてこりんな役が多かったヘレナ・ボナム=カーターが、優しさと品位に溢れたエリザベス妃をおおらかに愛おしく演じる。

エリザベス妃は実際にもとても愛された王妃だったようで、101歳で命を全うした時は多くの国民が涙したとのこと。

 閉ざされた王室という世界で、決して垣間見ることができないそこに生きる王族たちの人となりを身近に感じ、周りの人たちに支えられながら困難を克服していく王の姿は、実話ということでさらに感動的であり、何度も見たくなる素敵な作品だった(^^)

Blu-rayの特典映像について

 Blu-rayの特典映像として、20分ほどのメイキングが収録されており、作品について語るトム・フーパー 監督や、主演のコリン・ファースなどのインタビューシーンを観ることができます。

また初回生産限定特典としてブックレットと、なぜかスピーチ原稿なるものが付いており、英語なので意味は分からないけど、ところどころに赤ペンで修正が加えられていて、そこが貴重なのか・・・な(^^;)

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