あらすじ
とあるホテルの一室。
いつまでも進展しない愛人サムとの関係に、疲れてしまったマリオンは結婚を迫るが、借金などを理由にいつものようにはぐらかされてしまう。
失意の中会社へ戻ったマリオンは、社長に顧客との商談成立によって急に入ってきた現金4万ドルを、銀行に預けてくるようにと指示される。
大金を前に心が乱れるマリオンは、その現金をそのまま持ち去り、愛人の元へ向かうことを決意する。
頭痛を訴え、家に戻ったマリオンは、急いで身支度を整え、車を走らせていた。
しかし夜のハイウェイで突然の激しい雨にあい、目の前に現れたモーテルで休むことを余儀なくされる・・・。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:1960年/アメリカ/109分
- 監督:アルフレッド・ヒッチコック
- 脚本:ジョセフ・ステファノ
- 原作:ロバート・ブロック
- 音楽:バーナード・ハーマン
- キャスト:アンソニー・パーキンス/ジャネット・リー/ヴェラ・マイルズ/ジャン・ギャヴィン
レビュー
サスペンス映画の神様、アルフレッド・ヒッチコックの代表作『サイコ』を観る。
本作が1954年当時、フランスで発表されたアンリ・ジャック・クルーゾー監督作「悪魔のような女」の大ヒットを受け、当のヒッチコックが「自分ならもっと客を驚かす作品が撮れる」なんて意気込んで製作されたというのは有名な話。
どちらに軍配が上がったかは、私も「悪魔の・・・」方を見ていないので分からないが、ヒッチコックって随分大人げないなあ、なんて当時は思った。
昔TVで手塚治虫が、石森章太郎の作品に嫉妬して酷評し、後で謝りに行った、なんて話を思い出してしまった。
天才って意外に他の人の才能に敏感なんだなあ。
まあそれでも嫌らしいというより、なんだか素直で気持ちいいね(^^)
サイコ・スリラーなるジャンルの、その後次々と製作される作品たちのバイブルとなった本作。
ヒッチコックの細部まで緻密に計算されつくしたサスペンス描写に、ただただ驚嘆する。
床から頭上からと、いろんなアングルから映し出される構図の面白さに、短いカットをテンポよくつなぎ合わせることで、緊迫感を煽る巧みさ。
今では当たり前のように使われるこれらのテクニックは、衝撃のラストも含め、当時の観客の幼さを考えると、もう失神ものだったんじゃないだろうか。
あの2階への階段を上がっていった探偵が、突然襲われるシーンの不気味さ。
そしてあまりにも有名な、何度もザクッザクッと振り下ろされる凶器と女性の表情だけで、その異常さと恐怖を見せつけたシャワーシーン。
あまりの痛々しさに、周りの温度が急激に下がったような寒気を感じる。
スクリーンいっぱいに映し出される、恐怖で見開かれた瞳は妖しげに、そして美しく輝く。
ただ一点、久しぶりに見て気になったことがある。
ラストでノーマンがいかにして異常になったかを説明するシーンがあるんだけど、当時の観客には分りにくいだろうとのことだったのかな、かなりの時間を費やして精神科医に喋らせていた。
今実際に身の回りで次々と起こっている異常犯罪を考えると、このノーマンの異常さが確実に現実味があり、そういうモンスターたちを生み出しているこの時代のことを考えると、いいようのない不安を感じる。
本作はその後アンソニー・パーキンス主演で続編が3作も作られている。
見ていないのでわからないが、どうなんだろうなあ。
ショックシーンをオリジナルそのままのカット割りでリメイクしたという1998年版の「サイコ」というのもあるんだけど、こちらは主演のヴィンス・ヴォーンという役者はあまり知らないんだけど、そのほかにジュリアン・ムーアやヴィゴ・モーテンセンにアン・ヘッシュなどど、なかなか魅力的なキャスティングで、機会があればぜひ見てみたい。
でも結局どれもオリジナルは超えられないんだろうなあ。
今なお色あせない恐怖と驚きを与えてくれるヒッチコック、やっぱり素晴らしい。
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