あらすじ
夢のマイホームに向けやっと土地も決まったTV放送作家の飯島直介(田中直樹)と美術教師の妻の民子(八木亜希子)は、いよいよ家の設計について話し合う。
知らない設計士だとセンスが合わないとき不安だと民子はいい、以前リビングのテーブルを依頼したことのあるインテリアデザイナーの柳沢(唐沢寿明)はどうかと直介に聞きくが、仕事で手一杯の直介は上の空で「いいんじゃない」と答える。
さっそく柳沢の事務所を訪れた直介と民子だったが、柳沢はちょうど自分がデザインした明日オープンの店に向かう途中だったので、ふたりも一緒に向かうことにする。
柳沢の乱暴な運転に直介は車酔いしてしまうが、店に入った柳沢はかまわずにモダニズム建築について熱く語り出す。
しかし話してる途中に急に席を立つと、内装の作業をしている男に向かって荒々しい声で「違う!やり直し、明日はオープンだぞバカヤロー」と怒鳴った。
急なことに驚くふたりだったが、柳沢はふたりの方に振り返ると、何事もなかったように「ぜひやらせていただきます」と言う。
ただ柳沢は建築士の免許は持っていないので、市に登記の申請が出来ないと言うが、民子はそこは自分の大工の父親が免許を持っているので、そっちでやってもらうと答える。
家に戻ると民子はすぐに実家に電話をし、父親の長一郎(田中邦衛)に設計の方は自分の知り合いに頼むが、申請や実際に家を建てるのをお願いというが、長一郎はあまり乗り気でない返事をする。
ただ電話を切った長一郎はすぐに戸棚から墨壺を取り出し、にやりと笑う。
不安になる民子だったが、母親の光代はあの電話のあと長一郎が最近は下請けの下請けしかやっていなかったため相当嬉しかったみたいで、すぐに昔の仲間に連絡して回り、久しぶりの大仕事で張り切っていたと伝える。
そしていよいよ家族4人に、長一郎の馴染みの建築士の須賀が待つ実家に、設計が完成した柳沢がやってくる。
ぎこちなく握手を交わす長一郎と柳沢だったが、完成した図面を一目見た長一郎は薄ら笑いを浮かべ、須賀は困った顔でこれでは違法建築になってしまうと言う。
あそこの土地は第一種低層住宅専用地域に指定されているため、この設計では申請が降りないと説明する。
長一郎は
「もういっぺん考えてきてもらえますかね」
と、柳沢に笑いながら冷たく告げる。
その後長一郎はあれでは話にならないと、勝手に須賀に念のためにと設計を依頼する。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:2001年/日本/115分
- 監督・脚本:三谷幸喜
- 音楽:服部隆之
- キャスト:唐沢寿明/田中邦衛/田中直樹/八木亜希子/白井晃
レビュー
「古畑任三郎」や「王様のレストラン」で人気脚本家となった三谷幸喜の、映画監督デビューとなった「ラヂオの時間」に続く、監督作第2弾『みんなのいえ』をAmazonプライムで鑑賞。
マイホームを建てる決心をした直介と民子夫婦が、施工を民子の大工をしている父親の長一郎に、設計を妻の後輩で今はインテリアデザイナーとして活躍する柳沢に依頼しする。
しかし和風で頑丈な家を作りたい長一郎と、既成概念にとらわれないモダニズムを追求する柳沢とは、ことあるごとにぶつかり合い、マイホーム建設は早々に頓挫する。
観ている間ずっと楽しくて、もう何回も観ている大好きな作品(^^)
どこか人ごとではない夫婦の間に起きる不満や、親子の間で起きるめんどくささに加え、次々とその輪の中に集まってくる有象無象。
観ている方はそれぞれの登場人物の誰かに自分を重ね、また身近にいる誰かを勝手に重ねて観ていくことに。
とにかくその登場人物すべてが人間くさくクセがあり、そんな連中が巻き起こすいざこざや、テンポよく交わされる会話に、終始クスクスと笑っていた。
他の方のレビューなんかを読むと、登記申請がどうとか施主を無視するとはとか、あげくの果てにテーマが分らないと、結構辛辣な感想がでててちょっと驚いてしまう。
この映画はそんな細かいことをつついて観る映画じゃあないと思うんだけどなあ。
なかでも一番愛すべきキャラクターはやはり田中邦衛演じる頭領の長一郎。
昔ながらの施工にこだわり、とにかく頑丈が一番と譲らない長一郎が直介と民子に最初に言う
”「風はバカに出来ねえぞ」”
は爆笑の名言だった。
一方自信満々の出来る男として登場してきた唐沢寿明演じる柳沢の、早々に「大先生」と嘲笑されるも、玄関を内開きにしたり寸法はインチで設計したり、迷惑を顧みない執着を押しつけるエゴに加え、それをことごとく却下されるという気の毒さがまたいい(笑)
そしてそんな長一郎と柳沢がお互いの信念とプライドをぶつけ合ううちに、次第にお互いの建築に賭ける想いに共感しあっていくという、自分のことに固執せず、相手を素直に認めることで信頼を築いていく展開がまた心地いい。
そんな意気投合してしまう長一郎と柳沢に嫉妬し、涙を流す直介を演じる田中直樹の、演技派揃いの中でちょっと浮いている感はあるが、調子がいい優柔不断さがキャラクターにピタリとはまる。
そして2000年にフジテレビを退社してフリートなり、その翌年に民子役に抜擢された八木亜希子の、持ち前の明るさとナチュラルな演技は、意外な女優としてのポテンシャルの高さもみせてくれる。
他にも短いシーンながら、強烈なインパクトを残す蒼々たる豪華出演陣が素晴らしく、三谷幸喜の退屈させない演出が嬉しい。
普通なら直介役にキャスティングされてもおかしくないところが、なぜかバラエティの面白番組にTV出演する俳優役の中井貴一をはじめ、あまりの驚きにまさかと画面に顔を近づけて二度見したバーテンダー役の真田広之に、野際陽子・戸田恵子・伊原剛志・小日向文世・香取慎吾、そしてセリフもない明石家さんまなどなど、なんとも贅沢なキャストに得した気分になる(^^)
何度観てもそれぞれのキャラクターのパーソナリティが際立つ身近な人間模様は、それだけで可笑しくそして楽しい(^^)
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