あらすじ
将来は町を出て、世界を股にかけて活躍する建築家にと、ジョージ・ベイリー(ジェームズ・ズチュアート)はいつも熱い思いを抱いていたが、チャンスにことあるごとに問題が発生し、いつまでも町を出られずにいた。
やがて尊敬する父親が、町を牛耳る実力者のポッターからずっと守ってきた住宅金融会社を、父親の死によって引き継ぐことになる。
貧しいながらも妻メアリーと4人の子供たちとの幸せな暮らしと共に、会社の経営も順調で、何もかもが順風満帆と思われたが、ある日最大の災難がジョージに降りかかる。
しかしそんなジョージの下に、クリスマスの夜奇跡が舞い降りる・・・。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:1946年/アメリカ/130分
- 監督:フランク・キャプラ
- キャスト:ジェームズ・スチュアート/ドナ・リード/ライオネル・バリモア/ヘンリー・トラヴァース
レビュー
ハリウッドスタジオ黄金期に数々の名作を発表し、この時代の屈指の名監督といわれたフランク・キャプラの『素晴らしき哉、人生!』を観る。
この時期にあわせて、クリスマスの映画を調べていたら、偶然この作品を発見し、以前から観たいと思っていた作品だったので、早速注文し取り寄せることに。
ちょっと前に問題になった著作権切れの映画の中に入ってるらしく、500円のDVDもあったが、メイキングが入ってた<特別編>の方を購入。
この500円DVDって、安すぎてなんかおまけみたいにうそ臭くて、かえって買いにくいという不思議なDVDなんだよなあ^^;
まさしくタイトル通り、自分が歩んできた人生がキラキラと輝きだしてくるような感覚と、幸せを感じ、何もかもひっくるめて人生って素晴らしいと感じさせてくれる作品だった。
そして”アメリカの良心”を体言するジェームズ・スチュアートの姿に、私も含めラストで流す涙のなんと心地よいことか。
自分のいない世界を目の当たりにし、誰にも意味のない人生、意味のない命ってないんだというメッセージが胸を熱くする。
また劇中でジョージの父親が語る”人は自分と違う人間を憎む”というセリフに、なにかすべての争いがこの言葉に凝縮されているように感じ、ハッとしてしまった。
ただ最後の運命を神様に委ねるという、ストーリー的にはかなり楽観的な展開なんだけど、こんな幸せな気分にさせてくれる映画なら、それもありかな^^
キャスティングについては、やはり古い作品ということで、ほとんど知らない俳優さんたちだったが、メイキングを見るに、J・スチュアートをはじめかなり豪華なキャスティングだったことがわかる。
そんな中で私の一番の注目は、妻メアリーを演じたドナ・リード。
この時代の女優さんたちは、今と美人の基準が違うんだろうなと思わせる顔立ちをしてたりするんだけど、このドナ・リードの聡明な美しさはどうだろう。
こんなに美しい女優さんがいたんだと驚いてしまった。
現在では観る人のほとんどが傑作と言われる本作が、意外なことにメイキングで公開時は興行成績もよくなく、次第に忘れ去られていったと語っている。
そういえば当然受賞していると思ったアカデミー賞も受賞していない。
皮肉なことに、例の著作権切れにより、TVで繰り返し放送されたことで、改めて見直され、そしてクリスマス映画の定番となる程の人気となる。
それでも私が感じたことは、今この混沌とした社会の中で、知らず知らずのうちに魂の欠片が失われていると自覚できるこの時代だからこそ、キャプラの理想主義や夢が詰め込まれた本作が受け入れられたんじゃないかと思う。
ただキャプラ作品は『或る夜の出来事』しか見たことがないんだけど、あのウィットに富んだ会話や笑いが少し影を潜め、なにかバタ臭いものを感じたのも確かだ。
そしてこの作品を観て純粋に幸せ感を感じられた人が羨ましく、こうしてなぜか大絶賛できない自分の嫌らしさをちょっぴり自覚することになってしまった。
何か物足りないものを感じ、このレビューを書いている今も、どこが不満なのかを考えている・・・。
最後に、ドラえもんの”もしもボックス”の元ねたは、本作だったんだろうなとすぐに確信した(笑)
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