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映画『ガタカ』レビュー ★★★★

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 近い未来、人類は遺伝子操作により、生まれつき優れた知能や体力を備えた新生児を作ることが可能になり、さらに潜在する病原さえも消し去ることで寿命をも延ばし、その技術は暴力性などのリスクをなくすことにまで及んでいた。

自然分娩で生まれたビンセント(イーサン・ホーク)は生まれつき虚弱体質だったことで、子供の頃からの夢だった宇宙飛行士をめざし努力を重ねたが、宇宙飛行士を養成するガタカ社へは血液検査で除外された。

 夢を諦めきれないビンセントは、優秀な遺伝子をもつ適正者を不正に仲介するDNAブローカーの元を訪れる。

そこで出会った適正者ジェローム(ジュード・ロウ)は、金メダル確実といわれた水泳選手だったが、事故により下半身不随となり選手生命を奪われたため、その優れた遺伝子を高値でビンセントに提供することに合意する。

 ビンセントはジェロームから提供された血液を始め尿から毛髪に至るまで、巧妙に偽装し利用することでジェロームになりすまし、夢であったガタカ社に優秀な適正者として入り込むことに成功するが・・・。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:1997年/アメリカ/106分
  • 監督・脚本:アンドリュー・ニコル
  • 音楽:マイケル・ナイマン
  • キャスト:イーサン・ホーク/ユマ・サーマン/ジュード・ロウ/アラン・アーキン/アーネスト・ボーグナイン

レビュー

 気品さえ感じさせるシックな近未来社会を描いた、アンドリュー・ニコル監督作『ガタカ』をBlu-rayにて鑑賞。

 タイトルのガタカ(gattaca)とは、DNAを構成する5種類の主な塩基のグアニン(G)・アデニン(A)・チミン(T)・シトシン(C)の頭文字を取ったもの。

 遺伝子操作を受けず自然分娩で生まれたビンセントは、不適正者として宇宙飛行士への夢をたたれていたが、DNAブローカーにより、紹介された優秀なDNAを持つジェロームと出会い、彼になりすますことでガタカ社に入り込む。

努力を重ねたビンセントは、遂に念願だった宇宙飛行士として土星への切符を手に入れるが、探査船出発が間近となったタイミングで、ビンセントの正体に不信を抱いていた上司が殺されるという事件が発生してしまう。

警察の捜査の手は、次第にビンセントに及んでくる・・・。

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 人工授精に遺伝子操作を加え、知能や体力が向上させられた人間”適正者”を生み出すことが当たり前の近未来社会。

そして何も手を加えることなく自然出産で生まれた人間を”不適正者”として扱い、その持って生まれた遺伝子によって夢を絶たれることを不条理としない社会。

当然優秀な人間を生み出すための遺伝子操作にはお金がかかる。

 まずこの、本来その人間が持っているはずの資質を科学により支配し、科学によって差別する世界という近未来の設定が、おぞましくも秀逸だ。

生まれてすぐに夢や希望がたたれる心と血の通わない世界。

オープニングから血液検査を自動で行うゲートを通り抜け、アンドロイドのように無表情で歩いて行く人の群れ。

そこは音や光さえも飲み込まれた宇宙空間のように静かで寒々しく、そしてどこかもの悲しくそして冷たい。

物語はそんな世界を真っ向から否定し、自らの可能性を信じて適正者になりすますビンセントの正体が、いつばれるんだろうというドキドキの張り詰めた緊張感で、サスペンスフルに展開していく。

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そんなビンセントの偽装に協力する適正者ジェロームは、将来を約束された人生を歩むはずが事故によりその未来を絶たれ、ただ生きていくために失意の中で自らの血液や尿に皮膚までも提供していく。

そしてふたりは、最初金銭の契約というだけの関係だったが、時が経つにつれ心を通わせ淡い友情のようなものを育んでいくことになり、SFサスペンス作品ながら友情という意外な展開にどんどん引込まれていった。

まず最初は遺伝子によって否定された夢を懸命に叶えようとするビンセントに、勇気づけられ寄り添って観ていくことになる。

ただそんなビンセントに、生きる力をなくしてなお自らの夢を託すように応援していくジェロームの方へ、次第に激しく感情移入してしまう。

事故により半身不随となってしまった若者ジェロームを演じる若きジュード・ローの、痛々しいほどの悲しみをまとう美青年ぶりが強烈に印象に残り、残念ながらイーサン・フォークは食われてたかなあ(^^;)

さらに、ザンダー・バークレー演じるガタカ航空宇宙局で身分鑑定を行うドクターや、アーネスト・ボーグナイン演じるの清掃課長など、名バイプレイヤーによって生み出された、不適正者として排除されたものたちの人としての温もりを感じさせるキャラクターも素晴らしかった。

そして紅一点、ビンセントと恋人になるアイリーンを、あくまでもクールに演じるユマ・サーマンの透き通るような美しさが輝く。

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 自然の摂理を凌駕しようとする人間のおごりは、いくら科学が進歩しようと、人間に宿る精神まで創り出すことは不可能であり、様々な環境によって育まれる精神が体に宿ることで人間は進化する。

そんなことまで考えさせられるSFサスペンス作品だけど、”適正者”と”不適正者”の間で交わされる暖かな人間ドラマが、静かな感銘を受ける作品だった。

Blu-rayの特典映像について

 Blu-rayの特典映像として、公開当時の宣伝用のメイキングが入っていたが、キャストのインタビューがなんだか台本のようなセリフでちょっと残念だった。

メイキングとは俳優だったら映画では消してみることの出来ない素の表情を出して欲しいんだよね。

 あと未公開シーンとして、最後まで悩んだけど採用されなかったエンディングシーンが収録されていたが、この映像が衝撃だった。まず、

”人間は自らの進化の方向を決められるまでに進化した、
もっと早くその知識があったなら彼らは生まれなかったかも知れない”


という字幕が流れ、続いてリンカーンの肖像と共にマルファン症候群という字幕が入り、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ/てんかん、アルバート・アインシュタイン/失読症、スティーヴン・ホーキング/筋萎縮性側索硬化症など、次々と偉人たちと彼らが抱えていた病を紹介していき、最後に

”もちろんあなた自身の命も誕生しなかったかもしれない”

という字幕が流れる。

強烈なメッセージは伝わってはくるけど、想像上の物語に実際の偉人たちを結びつけるのは、なんだか不謹慎というかやり過ぎで、止めといて正解かな。

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