映画『リトル・ミス・サンシャイン』レビュー ★★★★★

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 ビデオでミスコンの授賞式のシーンを、繰り返し熱い視線で見つめる少女オリーヴ。

 セミナーで世の中には”勝ち組と負け組”がいるといい、生徒たちに勝ち組になるためにと自分が提唱する”負けないための9段階プログラム”について熱く語る父親のリチャード。

自室にこもり、黙々と体を鍛える兄ドウェーンに、部屋の中でこっそりヘロインを吸う祖父エドウィン。

一方母親のシェリルは、病院から兄のフランクが自殺未遂をしたとの連絡を受け車で向かっていた。
病院へ着いたシェリルは、医者から本当は入院した方がいいと言われるが、保険がきかないので家に連れて帰るという。

自宅へ戻ってきたふたりは、早速息子の部屋にフランクを案内し、医者からひとりにしないと言うことで相部屋を承知して欲しいという。

部屋でベッドに横になっていたドウェーンは、無言で部屋を出た行く。

夕食で全員が揃った食卓は、またチキンかと不満を漏らす祖父、勝ち組になるための9段階プログラムについて語り出すリチャード、そして自殺にいたった経緯について語り出すフランクの話でカオスな状態になる。

 そんななか、リチャードはシェリルの妹のシンディから留守電が入っていたことを伝える。
留守電には、

「先月オリーヴが全米美少女コンテストのリトル・ミス・サンシャインの地区予選で2位になったが、1位の子がダイエット薬を飲んでいたことで失格となり、オリーヴが繰り上げになり州大会に出れることになった」

というメッセージが入っていた。

美少女コンテストのクイーンを夢見るオリーヴは、それを聞き喜びを爆発させ絶叫する。

 次の日曜日にカリフォルニアで開催される大会に向けて、飛行機で行くというシェリルに、金が掛かると反対するリチャードだったが、他に方法がないということで車で行くことになる。

ただマニュアル車が運転できないというシェリルに代わりリチャードが運転することになり、孫の晴れ姿を見たい祖父に、ひとりで家に残すことが出来ない叔父と、航空学校に行かせてあげるという言葉に渋々握手をする兄も含め全員で行くことになる。

ばらばらだったフーヴァー一家は、一路アリゾナから本選が開催されるカリフォルニアの会場へ、黄色のおんぼろミニバスで走り出した・・・。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:2006年/アメリカ/100分
  • 監督:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス 
  • 脚本:マイケル・アーント
  • 音楽:マイケル・ダナ
  • キャスト:グレッグ・キニア/トニ・コレット/スティーブ・カレル/アラン・アーキン/ポール・ダノ/アビゲイル・ブレスリン

レビュー

 ”全米が “負け組み家族” に大喝采!”

第79回のアカデミー賞で作品賞をはじめ5部門にノミネートされ、助演男優賞と脚本賞を受賞した『リトル・ミス・サンシャイン』を観る。

もともとは「40歳の童貞男」で人気が出たスティーブ・カレルの新作ということで注目されていたらしいんだけど、サンダンス映画祭でプレミヤ上映されるや各メディアで絶賛され大ヒットに。

予告編もすっごくよかったんだよねえ。

 ヘロインを吸ったことで老人ホームを追い出された祖父に、人生で勝ち組になることだけに執着する父親と、ニーチェに心酔し夢の実現のため沈黙の誓いをたて一言も喋らない兄。

そんな家族の中で奮闘する母親に、ゲイで自殺未遂をした伯父も巻き込み、娘のオリーヴが出場する美少女コンテストが開催されるカリフォルニアへ、オンボロの黄色のフォルクスワーゲン・ミニバスに乗って向かうが・・・。

 まずそれぞれが自分の主張ばかりし、一家団欒のはずの夕食もまったくかみ合わずギスギスする家族に、観ている方は自殺未遂を起こしたゲイのフランクが一番まともな人間に見えてくる(笑)

そんな家族が、夢見る娘のためになんとか全員が乗り込んでカリフォルニアに向け出発する。

しかしワーゲンが早々にギアが入らない故障となり、全員が車を後ろから押しエンジンが掛かったタイミングで走り出した車に飛び乗っていくという始末にいつしかクスクスと笑っていた。

さらに次々と不運が降りかかるフーヴァー一家を、気がつけば”がんばれ”って応援している。

 いつの頃からか普通に使われるようになった「負け組み」という言葉。
この作品は勝利至上主義を、そして人に評価されることのばかばかしさを、痛烈に笑い飛ばす。

コンテストを前に負けることを心配するオリーブに、おじいちゃんが優しく語り掛ける。

「負け組みの本当の意味を知っているか。それは負けるのが怖くてチャレンジしない奴らのことだ」
勝とうが負けようがそんなことはどうでもいい。

一生懸命やったということに意味があるんだよって。

そして伯父のフランクが、つらい経験が人生の糧になるんだとドウェーンを励ます。

何をやってもうまくいかない家族が、ジタバタしながらも懸命に生きる姿に共感し、いつしかまるでフーヴァー一家の一員になったように、笑ったり悲しんだりしているという心地よい一体感。

出典元:https://www.amazon.co.jp/

家族の再生を描いているというレビューもあるが、この家族はみんなが別の方向を向いてるようなバラバラの状態なんだけど、反発しながらも心の奥にはお互いを想い合ってるという家族愛を、最初からずっと感じさせる。

それもこれが家族というもんだよって見せ付けるんじゃなく、さりげなく感じさせてくれるところが、・・・好きだなあ。

なにより終始太陽の暖かい日差しがこの家族に降り注いでいるような、作品全体を包み込んでいる明るい空気感がいい。

 映画のパンフレットに、フーヴァー一家となる役者さんたちが役作りのため、撮影がスタートする一週間前に一緒に過ごしはじめ、なんとキャラクターになりきったままミニバンに乗り込み旅に出たという裏話が載っていた。

アドリブのように交わすセリフの間や、家族としての一体感はそうして生まれたんだなあ、なんて感心してしまった。

 そしてラストのミスコン会場のステージで、その家族愛が一気に爆発する感動のシーン。
すっごく可笑しくて笑ってるんだけど、気がつくと一緒にポロポロと涙が溢れていた。

こんなにも心を温かく満たしてくれる映画に出会えたことが嬉しい。
超オススメのハートフル・ムービーなのだ。

あと余談なんだけど、この美少女コンテストのために集められた、たぶん本物のコンテスト常連であろう少女達の、子供らしからぬ表情や仕草は強烈だったなあ(^^;)

Blu-rayの特典映像について

 Blu-rayの特典映像として、なんと4つも別エンディングが収録されていた。

 警察署のあとに続くシーンとして、車で帰る途中で休憩所に立ち寄り、ランチを食べながら家族全員でにこやかに乾杯しているシーンや、みんなで優勝のトロフィーを盗んで逃げるっていうとんでもないエンディングまで(^^;)

 本作で使われた、走り去っていくミニバンの向こう、これからもいいことも悪いこともいろいろあるぞっていう人生を感じさせるシーンが、いかによく出来たエンディングだったのか分かり、さらにこの映画が好きになった(^^)

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