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映画『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』レビュー ★★★★☆

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 12歳の少年イングマルが大好きなのは、ママの笑顔と愛犬のシッカン。

遠くに出稼ぎに行ったきりのパパのいない暮らしは、意地悪ばかりしてくる兄も嫌だったが、いつしか病気でベッドに寝たきりになってしまったママは、自分とお話しするより本を読んでばかりで、なんだか寂しかった。

 兄弟げんかや失敗ばかりすることで、ママはヒステリックに泣き喚いたり、次第に笑顔もあまり見れなくなっていった。

落ち込んでしまったそんなときは、
”それでも人工衛星に実験で乗せられたライカ犬よりはまだまし”
と、イングマルは自分に言い聞かせる。

 そして日に日に病状が悪化していくママの療養のために、イングマルは一人遠くガラス工場のある小さな町の、グンネル叔父さんの家に預けられることに・・・。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:1985年/スウェーデン/102分
  • 監督:ラッセ・ハルストレム
  • 脚本:ラッセ・ハルストレム/レイダル・イェンソン/ブラッセ・ブレンストレム/ペール・ベルイルンド
  • 音楽:ビョラン・イスフェルト
  • キャスト:アントン・グランセリウス/メリンダ・キンナマン/マンフレド・セルネル/アンキ・リデン

レビュー

 その名を世界に知らしめるきっかけとなった、ラッセ・ハルストレム監督の名作『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』を観る。

本作はアメリカでも注目され、88年のアカデミー賞 最優秀監督賞、最優秀脚色賞にノミネートされる。
映画好きの中で必ず出てくるタイトルであり、私も大好きな作品なのだ。

 母親の不治の病により、叔父がいるのどかな田舎町で過ごすことになった中で、日々少しづつ成長していくイングマル少年を、詩情あふれるスウェーデンの美しい風景と共に、監督の優しい眼差が映し出していく。

子供がそのまま大きくなったような無邪気なグンネル叔父さんと優しい叔母さんに、男勝りだがツンデレな女の子サガや、官能的なお姉さんに屋根の修理ばかりしているおじさん。

新たなる地で出会う素朴でヘンテコで優しい町の住人達と繰り広げる出来事の数々が、次第にイングマルの心を癒していく。

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そしていつしかイングマルと同じように、観ている自分の心までも癒されていることに気づく。
観終わった後のあったか~い温もり感も、最高に心地いい作品なのだ。

 イングマルは自分に降りかかる不幸を、最初人工衛星に乗せられ見殺しにされたライカ犬に、自身をダブらせているんだけど、次第にライカ犬は家に残してきた愛犬のシッカンに重なり、ついには病気で亡くなってしまったママに重ねてしまう。

それは自分のことしか考えていなかったイングマルの心が、次第に周りに向けられ、残されて死んでしまったであろうシッカンを想い悲しみ、ママに対して自分のふがいなさを嘆き、死をその小さな体で受け止め涙する。

一つ一つ悲しみを乗り越えて成長していくイングマルの姿が、そのふっくらしたほっぺの様に瑞瑞しいく、その小さな体に抱えきれない想いを飲み込んでなお、健気に未来に向かって踏み出していく姿に心打たれる。

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 ラッセ・ハルストレム監督の作品は、「ギルバート・グレイプ」や「サイダーハウス・ルール」もそうであったように、暖かさの中にいつも人生の厳しさを突きつける。

そして厳しさを乗り越えた主人公に、光は穏やかに降り注ぎ、爽やかな風が吹き抜けていく。
本作もそんな人間の力強さを愛してやまない監督の、やさしさがいっぱいに溢れた素敵な映画なのだ。

そしてハリウッドの名子役たちの演技とは明らかに違う、自然体で素人感を残す子供たちの清々しい姿は、演技を超えるリアルさでみせる。

ただスウェーデンというお国柄なのか、子供たちの性に対するオープンさに、そんなことを気にかけて観る作品ではないと思いながらも、少々引いてしまった(爆)

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 Blu-rayの特典として、オリジナル・ブックレット(28P)が封入されていて、そこにはなんと淀川長治さんの記事があり、

”描かれる童心が、芸術的にハイクラスに染みこんでいるところに、この映画のレベルの高さがある”
と、本作を絶賛していた。

 ぜひたくさんの人に観て欲しいと想う映画なんだけど、なんかやっぱりそっと自分だけにとっておきたくなる、そんな宝物のような作品だった。

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