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映画『怒りの荒野』レビュー ★★★

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

メキシコの国境近くにある町クリフトン。

大きな樽を二つ乗せ、通りをリヤカーを引いてきた青年は、店から出された汚物を樽に流し込む。

スコット(ジュリアーノ・ジェンマ)は娼婦の私生児という生い立ちから町の人々から疎まれ、差別と屈辱の中、町のゴミ回収や掃除をすることで生きていた。

スコットは厩に戻ると、手作りのガンベルトを腰に巻き、木で作った銃で早撃ちの練習し、一流のガンマンになることを夢見ていた。

そんなある日、ひとりの男が馬に乗って町にやってくる。

ただならぬ空気をまとったその男を見つめるスコット。

男はスコットの前で立ち止まり、馬から下りると厩と宿を聞き、1ドルやるから馬を連れて行ってくれと頼む。

そしてスコットに名前を聞くが、母親を知らないので名字はないというスコットに、母親の名前がマリーならスコット・マリーはどうだという。

そんな名前にしたらみんなに笑われてしまうよというスコットに、男は「笑う奴には笑わしとけ」といい、俺はタルビー(リー・ヴァン・クリーフ)だと名乗る。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:1967年/イタリア・ドイツ/111分
  • 監督:トニーノ・ヴァレリ
  • 脚本:エルネスト・ガスタルディ
  • 原作:ロン・バーカー
  • 音楽:リズ・オルトラーニ
  • キャスト:ジュリアーノ・ジェンマ/リー・ヴァン・クリーフ/ワルター・リラ/ルカス・アンマン

レビュー

 マカロニ・ウェスタンといえばまずセルジオ・レオーネ監督の作品が浮かんでくるが、その「荒野の用心棒」で助監督を務めていたトニーノ・ヴァレリ監督作『怒りの荒野』を久しぶりにBlu-rayにて鑑賞。

大分前に観たきりだったが、とにかくオープニングで流れるテーマ曲が抜群にかっこよくて、まずこのタイトルを聞くとこの曲が頭の中で流れてきた。

そして何十年かぶりに観て、ラストも知っているのでワクワクと同時に哀愁も感じ、今聞いても素晴らしい曲だったが、ジュリアーノ・ジェンマとリー・ヴァン・クリーフの顔の同じ画像がずっと流れているだけのオープニングに苦笑いだった(^^;)

へえ~、こんな手抜きだったんだあ(爆)

 ある町で娼婦の子として町の人々からさげすまされながら生きてきたスコットが、ある日ふらりと現れた凄腕のガンマン タルビーに弟子入りしたことで、銃の腕と自信を培い、みんなから一目置かれる存在に成り上がっていく。

ただ町を牛耳ろうとするタルビーの、保安官まで撃ち殺してしまう強引さに納得できなくなったスコットは、次第に袂を分かっていく・・・。

 虐げられてきた主人公が腕利きのガンマンに弟子入りし、「決して他人を信用するな」とか「決して銃と標的の間に立つな」など、ガンマンの心得を一つずつ学んでいく過程がとにかく秀逸。

まだ銃も撃ったことがないひとりの青年の成長をテーマとしている西部劇って、異色といいうか、私はあまり観たことなかったので、この設定に大いに惹かれた。

キャスティングについては、すでに「夕陽のガンマン」などヒット作に連続で主演し、マカロニ・ウェスタンの世界で大スターとなっていたはずのジュリアーノ・ジェンマの、まあ青臭いへたれ感が見事だった(笑)

後半で自信をみなぎらせた姿もイカしていた。

そこにリー・ヴァン・クリーフのカリスマが加わってくるんだから、面白くなるに決まってるよ(^^)

出典元:https://www.amazon.co.jp/

 ただねえ、やはりセルジオ・レオーネ監督作がお気に入りで見慣れてる私は、無意識に比較してしまうことに。

銃一つだけで生き抜いてきた男たちの、あの汗ばんだギラギラとした熱気と、ジリジリと迫る緊張感を煽る演出が、本作ではちょっと物足りないかな。

例えば同じリー・ヴァン・クリーフの顔がアップになるシーンがあるが、身にまとうギラついた空気感と迫力が全く違うのだ。

そして肝心な西部劇の見せ場となる、命を賭けて渡り合う銃撃シーンがいかにカッコいいかが肝なんだけど、レオーネ版はクリント・イーストウッド自体が輝いていたこともあるが、本作はどうもそこら辺も精彩を欠いていた。

だいたいリー・ヴァン・クリーフ本人に、地面を一回転して撃つなんてアクションをよくさせたものだと驚いた(^^;)

出典元:https://www.amazon.co.jp/

 ただ、そんなレオーネ監督と比べてしまうと拙い演出であってもなお、本作は観る者を惹きつける不思議な魅力に溢れている。

ここからネタバレになってしまうが、せっかく運命のように出会い師弟関係を結んだふたりが、やがて袂を分かち、向き合う時がやってくる。

このいいようのない切ない展開に胸を熱くさせられ、ラストではこの世の無常を突きつけてくる。

爽快な気分は味わえないという異色な西部劇だけど、ガンマンとなったものたちの哀しい定めというものを感じさせる、素敵な作品でした。

 なお、Blu-rayの特典映像については、残念ながら予告編だけでした。

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このレビューをアップした時点で、残念ながらPrime videoでは配信されていません。(2024/06/23)

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