映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』レビュー ★★★★☆

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 偶然同じ病室に入院することになったマーティン・ブレスト(ティル・シュヴァイガー)とルディ・ウルリツァー(ヤン・ヨーゼフ・リーファース)。

自己主張が強く無鉄砲なマーティンは、脳腫瘍で医者に余命数日と宣告され、慎重で臆病なルディーは父親と同じ骨肉腫と宣告されていた。

性格が正反対の二人は、お互い死期が迫っていたことを告白することで意気投合し、厨房でテキーラを飲み交わすことに。

ほろ酔いのマーティンは、今天国で一番の話題は海の話をするのが流行だと語る。
それを聞いてルディは、自分は今まで海を一度も見たことがないがどうしたらいいかと問う。

マーティンは海を見ていないと天国で仲間はずれになるぞと、泥酔したルディーと二人で病棟を抜け出し、駐車場に止めてあったベンツに無断で乗り込み、海に向かって勢いよく走り出した。

ただしそのベンツは、ギャングが乗っていた車で、トランクには大金が積まれていた・・・。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:1997年/ドイツ/87分
  • 監督:トーマス・ヤーン
  • 脚本:トーマス・ヤーン/ティル・シュヴァイガー
  • 音楽:ゼーリッヒ
  • キャスト:ティル・シュヴァイガー/ヤン・ヨーゼフ・リーファース/ティエリー・ファン・ヴェルフェーケ/モーリッツ・ブライプトロイ

レビュー

 本国ドイツで観客動員数350万人という、ドイツ映画史上空前の大ヒットとなった『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』をBlu-rayにて鑑賞する。

 ジャケットの写真からチンピラ二人組が、死ぬ前にやりたい方題するっていう映画だと勝手に思い込み、今まで見る機会がなかったんだけど、偶然AmazonでBlu-rayを発見したことと、あまりにも他の方たちのレビュー評価が高かったため観ることに。

そして見終わった今、こんなに素晴らしい映画があったんだという喜びと、まだこんな素敵な作品が、自分が発見できてないだけでたくさんあるんだと思うと、それだけでワクワクしてしまった(^^)

 まず当時タクシードライバーだった監督のトーマス・ヤーンが、ある書店で偶然見かけた俳優のティル・シュヴァイガーにいきなり話しかけ、脚本を送ったことがきっかけで製作されたという、嘘のような奇跡に驚いてしまう。

トーマス監督の本作とは別の脚本だったが、送られてきた脚本を読んだティルがその才能を確信し、それ以降もやりとりを続け、その中に本作の脚本があったという。

その後ティルはこの作品の映画化のために、資金面やキャスティングに至るまで自らが奔走し、本作は完成する。

 死期が迫った若者二人が、偶然同じ病院の同じ病室で出会ったことで、まだ見ぬ海を目指して旅をするというロードムービー。

正反対の二人の間に次第に芽生えていく友情と、死という恐怖に耐えながら純粋に海を目指す姿に、ジャケットに写る海の画像から、最後は海にたどり着いて・・・、というシーンを予測でき、それだけでたまらなく切なくなってしまう。

そして観ている間中、彼らの願いがなんとか叶うように、願わずにはいられなくなっていった。

 旅立つために盗んだ車がギャングの車だったことで、ギャングの二人組に追われることになり、さらに服を買うために銀行強盗をしたことで、警察にも追われることになるんだけど、このドタバタがほぼコメディのノリで展開されるので、”死”をテーマにしていながら、作品に暗いイメージがない。

 なかでもベンツをあるところへ送り届けるというだけの命令を、ボスから受けていたギャングのヘンクとアブドゥルが、そのベンツを盗まれたことで、マーティンとルディを追いかけるんだけど、この二人がほんとにドジで間抜けで、しかも憎めないというキャラクターが秀逸だった。

と、ここで私はこの間抜けなギャングや、黒のスーツに黒ネクタイの二人組というスタイルから、すぐにクエンティン・タランティーノの「パルプ・フィクション」をイメージした。

そういえばオープニングに店のステージの後ろに「トゥルー・ロマンス」という文字のネオンがあったが、これもタランティーノの脚本の映画ということから、トーマス監督がかなりタランティーノをリスペクトしていたことが分かる。

まあ得意げに書いてしまったが、このことはタランティーノ作品を知ってる人はすぐに気がついたようで、Blu-rayの中にあった冊子に、タランティーノの諸作品に影響を受けていて、本作のヒットを受けトーマス監督は「ドイツのタランティーノ」と呼ばれるようになった、なんてことが書かれてあった。

とかいいながら、タランティーノだっていろんな監督の作品をリスペクトとしてるんだけどねえ(爆)

 さらになかなか二人を確保できない警察官や、強盗される銀行員に中古車販売店の男に至るまで、どのキャラクターもしっかり性格づけがしてあり、テンポのよいストーリー展開と合わせて、楽しくてずっといい気分に。

そしてこのコメディチックな演出は、ラストに最高に効いてきて、最後のシーンでは映画の主人公のように自分もボブ・ディランの「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」を聞きながら、静かに海を眺めている気分になり、しばらく動けなかった。

“天国の扉をノックする”

死を間際にしてやっと自覚する、後回しにしてきたもの、そして思い描いていた夢。
天国の扉をノックする前に、今できることがないのかを自らに問いかけてみる。


見終わった後も、切なくも不思議な安らぎの余韻にいつまでも浸っていたくなる、素敵な作品だった。

特典映像のインタビュー集について

 Blu-rayの特典映像は、なんと本編よりはるかに長い計251分というボリュームで、貴重な映像がたくさん収録されており大満足だった。

内容的にはトーマス・ヤーン監督やルディ役のヤン・ヨーゼフ・リーファースなどキャストに、ティル・シュヴァイガーが自らがインタビューするというものや、映画賞の授賞式の様子などが収録されている。

なかでも授賞式で、ヤン・ヨーゼフがギターを弾き、トーマス監督とティルの3人で「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」を歌うシーンがあり、これはもう大感激だった(^^)

 最後に、本編ラスト前に現れるギャングの大ボスに、驚きの名俳優が特別出演してることと、エンドロール後に素敵なおまけシーンがあるので、見逃さないようにしっかり観てくださいね(^^)

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