映画『カイロの紫のバラ』レビュー ★★★☆

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 1930年代大恐慌時代のアメリカ、ニュージャージーで仕事もせず遊んでばかりいるうえに、暴力まで振るう夫モンクのために、ウェイトレスとして働くセシリア(ミア・ファロー)の楽しみは、劇場で映画を観ることだけだった。

ある晩映画を観て家に帰ると、モンクは部屋に女を連れ込んで大いに盛り上がっていた。
愛想をつかしたセシリアは、すぐにトランクに服を詰め込み、必死に取り繕うモンクを振り切り家を飛び出した。
ただ酒場に入っていく娼婦達を見て、そのまま家に戻っていく。

そんな中、ウェイトレスをクビにされるセシリア。
行き場のない生活の繰り返しは、彼女の足をまた劇場へと運んでいた。

 上映中の「カイロの紫のバラ」はもう5回目だったが、いつしか夢中で見ていたセシリアに、突然スクリーンの中の登場人物の一人、探検家のトム・バクスター(ジェフ・ダニエルズ)が視線を向け話しかけてきた。
「この映画が好きなんだね、前にも2度来てただろう」
そしてもっと話したいと言い、スクリーンの中から客席に出てきたトム・バクスターは、セシリアを劇場の外へと連れ出していった・・・。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:1985年/アメリカ/82分
  • 監督・脚本:ウディ・アレン
  • 音楽:ディック・ハイマン
  • キャスト:ミア・ファロー/ジェフ・ダニエルズ/ダニー・アイエロ/ダイアン・ウィースト

レビュー

 ウディ・アレン監督作品の中でも、特に映画ファンの間で人気の高い作品『カイロの紫のバラ』を、久しぶりにBlu-rayにて鑑賞。

ウディ・アレン作品はどうも苦手とか、自分で主人公しない方がいいとか、結構好き嫌いが分かれるんだけど、本作は彼の最高傑作と呼ぶ人も多く、なによりアレン自身もっとも気に入っている作品のひとつということで、かなり期待させる作品だった。

 仕事もせず暴力を振るう夫に耐えながらウェイトレスとして働く女性セシリアが、スクリーンの中から抜け出てきた登場人物のトム・バクスターと、恋に落ちてしまうという奇想天外なストーリー。
さらに現実世界のトム・バクスターを演じた役者ギル・シェパードまで現れ、事態はスクリーンの中の世界と現実の世界を巻き込んで、予測不能の展開をみせていく。

ただ薄幸なセシリアに、神様のマジックが舞い降りたような、ロマンチックな恋のゆくえにワクワクしながらも、かなりの確率でハッピーエンドを予感させるが・・・。

 アレン自身は監督に専念するも、劇場の中でスクリーンの中の俳優達と、映画を観に来ている観客達とが交わすセリフや、現実の世界で巻き起こすトム・バクスターの無邪気な言動など、あいかわらずのシニカルな笑いは健在(^^)

ただ本作はどこまでもロマンチックなファンタジーに仕上がっており、アレン監督作としては異色の作品となっている。

 大好きな映画の大好きな登場人物と、現実の世界で出会えるという、これ以上無い夢のような展開は、リアリティを超えて映画好きには堪らない設定。
自分の身にもこんなことがって夢見るほどウブではないけど、ただそんな奇跡が楽しく、セシリアの幸せを願いながら観ていくことに。

さらにセシリアが心を奪われるのが主役ではなく、駆け出しの脇役の俳優というところに、アレン監督自身の映画愛を感じられる嬉しさもいい。

そんな愛と幸せを渇望するセシリアを、絶妙な表情と眼差しで演じるミア・ファローの、にじみ出る薄幸感がさすがの上手さです。
ほんとこのミア・ファローという女優さん、情緒不安定な役を演じさせると絶品です(^^)

さらにセシリアと奇妙な三角関係に陥る、トム・バクスターとギル・シェパードの2役を軽やかに演じたジェフ・ダニエルズは、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされる。

そしてラスト、劇中のスクリーンを見つめるセシリアと、まったく同じ気持ちで映画を見てる自分がそこにいた。
なんという見事なラストなんだろう。
ウディ・アレンのすべてがこのラストに結集されていた。

そうだよね、映画は至福の時を与えてくれるが、所詮は夢の世界。
それでも映画を愛さずにはいられない、映画が好きなすべての人に捧ぐ、みたいなウディ・アレンのメッセージを勝手に感じ、なんとも幸せな気分に浸る(^^)

夢見ることの幸せと、いろんな感情を呼び起こしてくれる映画って、やっぱりいいなあ、なんてますます映画を観ることが好きになっていく(^^)

 ウディ・アレンとミア・ファローとの泥沼の関係は、誰もが知る関係であり誰もが知るこじれた別れだったが、映画製作においては抜群の相性をみせ、本作以降も「ハンナとその姉妹」や「ラジオ・デイズ」など素晴らしい作品を生み出していく。
ただミア・ファローが、まさかのラジー賞の最低主演女優賞にノミネートされたという、1982年のアレン監督作品「サマー・ナイト」については、未見なのであしからず(笑)

 なおBlu-rayの特典映像は、残念ながら予告編だけでした(涙)
ただジェフ・ダニエルズの日本語吹き替えを、富山敬さんがあてていて、その優しい声を久しぶりに聞けて、懐かしくも得した気分になりました。

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このレビューをアップした時点で、残念ながらPrime videoでは配信されていません。(2022/08/06)

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