あらすじ
デトロイトの町並みの中、ある人目のつかない裏通りに止められた一台の大型トラック。
荷台にぎっしりと詰められた段ボール箱を見せ、「ひっぱりだこのモクだ」と売人らしき二人組の男にまくし立てる一人の黒人の男。
そこへ偶然通りかかったパトカーに見つかり、トラックを急発進して逃げ出す売人と、荷台から振り落とされないように鎖にしがみつく黒人の男。
大通りを走る一般の車を弾き飛ばして逃走する大型トラックと、それを追跡する何台ものパトカーのカーチェイスが繰り広げられる。
道路を封鎖していたパトカーに激突して止まった大型トラックから、売人はどこかへ逃走し、荷台にいた男に大勢の警官が一斉に銃を向ける。
しかしその男の顔を見て銃の構えを解いたひとりの警官が、「またお前だな」とあきれたように首を振った。
デトロイト市警の刑事アクセル・フォーリー(エディ・マーフィ)は、許可なしに独断でオトリ捜査をやったために、パトカーを何十台も大破させる騒動を引き起こし、市長から苦情がきてると上司のトッド警部(ギルバート・R・ヒル)を激怒させた。
「お前は腕はいいが鼻を突っ込みすぎる」と、二度と独断でのオトリ捜査をやらないよう釘をさされ、今度やったらクビだと、すぐに家に帰るように言い渡される。
おんぼろシボレーで帰宅したアクセルは、自分の部屋のドアが少し開き中から物音がしたため、銃を構えて中に入り、部屋にいた男に銃を向けた。
冷蔵庫を空け食卓で食事をしていた男を見てアクセルは笑った。
勝手に鍵を開け部屋に侵入していた男は、おさな友達のマイキー(ジェームズ・ラッツ)で、突然の再会にふたりは抱き合って喜ぶ。
街へ繰り出したアクセルとマイキーは、ひとしきり遊んで帰宅すると、突然部屋の前で背後から二人組の男に襲われ、後頭部を殴られ倒れたアクセル倒れる。
「マイキー、捜したぜ」
ザックと呼ばれた男は、盗まれた無記名債券の束を取り返すと、いきなりマイキーの腹を殴り、倒れ込んだマイキーの頭を掴み射殺した。
アパートの前、捜査にやってきた大勢の警官たちの中、トッド警部はアクセルに「なぜ病院で手当を受けない」と声をかけると、アクセルはなぜ担当が12年も机仕事だったランダなんだと詰め寄る。
殺されたのは友人で自分も手伝いをしたいというアクセルに、トッドはだから彼がいいんだという。
引っ込んでいろというトッドに、アクセルは休暇を取らせてくださいという。
マイキーから働いていた場所を聞いていたアクセルは、犯人への足掛かりを得るため、ビバリーヒルズの街へおんぼろシボレーでやってきていた・・・。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:1984年/アメリカ/105分
- 監督:マーティン・ブレスト
- 製作:ドン・シンプソン/ジェリー・ブラッカイマー
- 脚本:ダニエル・ペトリ・Jr
- 音楽:ハロルド・フォルターメイヤー
- キャスト:エディ・マーフィ/ジャッジ・ラインホールド/ジョン・アシュトン/リサ・アイルバッハー/ロニー・コックス/スティーブン・バーコフ
レビュー
エディ・マーフィが当時24歳にして、大スターの座を不動のものとした大ヒット映画、マーティン・ブレスト監督作『ビバリーヒルズ・コップ』をBlu-rayにて久しぶりに鑑賞。
当時エディ・マーフィのことなど全く知らず、ただ全米No.1(このフレーズに弱い)の大ヒット映画というだけで劇場へ観に行き、缶バッジを貰ったのを憶えている。
さすが全米No.1の映画って面白い!
この作品以降、全米No.1というフレーズは、私の映画選びの重要なキーワードとなってしまった。
最近はど~もこのフレーズに騙されることが多いんだけどねえ(笑)
アメリカの人気コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」で人気者となり、82年映画初出演となった「48時間」も大ヒットとなったエディ・マーフィ。
本作はそんな彼が大スターへの道を駆け上がってる絶好調の時期に出演した作品で、その精悍な顔立ちと画面からあふれ出る才気は自信に満ち溢れていた。
そしてエディ・マーフィ演じるアクセルの、口八丁手八丁で犯人を追い詰めて行く型破りな姿は、時にシリアスであり時に爆笑を誘い、かつての刑事アクション映画の常識をことごとく覆していく。
大胆不敵にいきなり悪玉のボスの前に現れ啖呵を切る痛快さに、さらに持ち前のコメディアンの一面も覗かせ、とにかくカッコいいけど面白いというオンリーワンなキャラクターが誕生する。
また舞台が、人種が入り交じり治安もよくないだろう荒廃した街並みのデトロイトから、明るい日差しが降り注ぎ、ブランド店が建ち並ぶ通りをセレブたちが行き交うビバリーヒルズへと一瞬で変わり、その環境のギャップを笑い飛ばすアクセルがまたいい。
以降の刑事ものの映画に多大な影響を与えたのは言うまでもない。
そしてそんなはた迷惑なアクセルの行動に振り回されるものたちの、まあ愛らしこと(^^)
脇を固めるタガート刑事役のジョン・アシュトンとローズウッド刑事役のジャッジ・ラインホールドのデコボココンビの戸惑いぶりも楽しく、次第にアクセルに巻き込まれ感化されていく姿も可愛らしい。
メイキングに収録されていたが、メイトランドの屋敷に親友するとき、この二人が塀をよじ登るシーンがあるが、すべてアドリブだったとのこと(^^)
俳優同士の相性の良さも合わせて、抜群のコンビネーションをみせてくれた。
他にもキャスティングされた俳優さんたちとキャラクターが抜群に合っていて、あの前半で強烈な凄みを見せる上司のトッド警部を演じたギルバート・R・ヒルは、実際にデトロイト市警の殺人課で警部だったとのこと。
他にもビバリーヒルズ警察のボゴミル警部補を演じたロニー・コックスの、優秀でいてさらにスマートだとか、画商メイトランドを演じたスティーブン・バーコフのどす黒い悪玉感など、本作のキャスティングがほんとに素晴らしい。
私の一番のお気に入りのキャラクターは、ビバリーヒルズにやってきたアクセルが最初に訪れる、幼なじみのジェニーが営む画廊にやってきたときに登場する従業員の男。
エディ・マーフィーも笑いをこらえるのに必死だったという、ブロンソン・ピンチョット演じるセルジュというオネエ系の従業員とアクセルとの掛け合いが、まあ面白いといったら爆笑だった。
さらにこの作品を語る上で外せないのが、音楽の素晴らしさ。
グレン・フライの「ヒート・イズ・オン」やパティ・ラベルの「スター・イット・アップ 」など、大ヒット曲が作品を盛り上げるのはもちろん、ハロルド・フォルターメイヤーの「アクセル・F 」の、流れてくるだけで湧き上がるワクワク感がまたいい。
見終わった後も、あのテクノポップなメロディは、しばらく頭の中で流れている(^^)
そしてこの映画が他の刑事映画と大きく違ってたのは、カリフォルニアの太陽のせいだろうか、常に画面が明るく美しかったこと。
豪華なホテルにレストラン、綺麗なお店に最後の銃撃戦となる屋敷の美しさ。
犯罪の匂いなど微塵も感じられない。
深読みすれば本当の犯罪はこういうところで、誰にも知られずに暗躍しているという、現代のアメリカ社会を痛烈に批判しているのだろうか。
な~んて、この映画を観てそんなこと思ったことなんか一度もないけどね(爆)
アクションとコメディが融合した、80年代を代表する超オススメの刑事ドラマです。
また、3年後の87年に続編となる2が公開され、懐かしいキャスト再結集がただ嬉しかったのを思い出す(^^)
さらに94年に、シリーズ3作目となる3が公開されるが、あまりいいできではなかったのかその年のゴールデンラズベリー賞にノミネートされてしまう、残念。
そして今なんと30年ぶりの最新作となる「ビバリーヒルズ・コップ: アクセル・フォーリー」が(^^;)
Blu-rayの特典映像について
DVDの映像特典にメイキングが収録されていたが、その中に興味深い裏話が入っていた。
当初企画段階ではアクセル役はミッキー・ロークで進められてて、スケジュールの都合出演できなくなり、次に白羽の矢が立ったのはなんとシルベスター・スタローン。
しかしスタローンの意向でどんどんアクションシーンが増え(笑)、と同時に制作費も莫大なものになったために、エディ・マーフィに変わったんだって。
エディ・マーフィのために生まれてきたような映画だと思っていたのに、いろんな経緯があったんですねえ。
そしてキャスティングされたときは、まだ主人公はスタローンとなっていたのに、いきなりエディ・マーフィに変更になったことに戸惑っただろう、リサ・アイルバッハーやジャッジ・ラインホールドらのコメントも楽しいです。
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