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映画『狼男アメリカン』レビュー ★★★★

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 朝靄の中、山々が連なる原野を横断する一本道をヘッドライトを灯したトラックが走ってくる。

羊たちを積んだそのトラックの荷台から降りる、アメリカ人大学生のデヴィッド(デヴィッド・ノートン)とジャック(グリフィン・ダン)に運転手が声を掛ける。

「真っ直ぐ行けよ、荒れ地は危ない 気をつけてな」

 3ヶ月の休みの間、ふたりで好きなところを旅をしようとヒッチハイクでやってきたイギリスの片田舎。

一本道を歩き続け日も暮れかけたとき、やっと目の前に小さな村が現れる。
寒さと歩き疲れたふたりは、不気味な看板が掛かるパブへ入ることに。

大勢の村人で賑わっていた店内は、ふたりが入ってきた瞬間静まりかえり、全員が一斉に視線を向ける。

気まずい中一旦はテーブルに着いたふたりだったが、壁に描かれた星のことに触れた途端、店内に険悪な空気が広がり、村人たちとトラブルをさけるためそうそうと店を後にする。

去り際に「月に注意しろ」という言葉を投げかけた男のことを考えながら、すでに真っ暗となった荒れ地を歩いて行くふたり。

するとそこへ獣の遠吠えが聞こえてくる。

辺りを見回したふたりは、今満月のもと荒れ地を歩いていることに気がつき、慌てて戻ろうとするが道に迷ってしまう。

足早に荒れ地から離れようと急ぐふたりだったが、今度は近くで獣のうなり声が聞こえ慌てて走り出したが、デヴィッドがこけてしまう。

笑いながら手を差し伸べるジャックに、突然大きな獣が襲い掛かってくる。

一瞬でズタズタにされるジャック。
獣はデヴィッドにも襲い掛かってきたが、駆け付けた村人に銃で射殺される。

 3週間後重傷を負ったデヴィッドは病院のベッドで目覚め、ジャックが死んだことを知る。

ショックを受けるデヴィッドは、その日から悪夢に苦しめられていく・・・。 

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:1981年/アメリカ・イギリス/98分
  • 監督・脚本:ジョン・ランディス
  • 音楽:エルマー・バーンスタイン
  • キャスト:デヴィッド・ノートン/ジェニー・アガター/グリフィン・ダン/ジョン・ウッドヴァイン

レビュー

 公開時センセーショナルな狼男への変身シーンで話題となった『狼男アメリカン』を久しぶりにBlu-rayにて鑑賞する。

1941年ゴシックホラー映画の代表作「狼男」を、現代風にアレンジして見事に蘇らせたジョン・ランディス監督が描く「狼男」は、監督の持ち前の明るさと、特殊メイクを手がけたリック・ベイカーのおどろおどろしさが絶妙にマッチしたホラー作品となる。

 物語はゴシックホラーを思わせる薄暗い不気味な村から始まる。

思わせぶりに何かを隠して口を閉ざす村人たちの謎めいた姿が緊張感を煽る、狼男映画の定番の展開なんだけど、舞台は意外にも途中からにぎやかなロンドンの街へ変わる。

出典元:https://www.amazon.co.jp/

 本作の見所はやはり、人間が狼に変身するシーン。

ジョン・ランディスの筋肉や骨がゴリゴリと変形すれば痛みを伴うはずだというこだわりは、リック・ベイカーの手によってリアルに描写され、以降のホラー作品に多大な影響を与えた。

1981年の第54回アカデミー賞のメイクアップ賞を受賞したリック・ベイカー手がけるこの変身シーンは、今見ても昨今のCGでは決して味わえないだろう息苦しさと生々しさで、楽しませてくれる。

なかでも私のお気に入りは、呪いから死にきれずズタズタに切り裂かれ血みどろになって現れるジャックの気色悪くも生っぽい皮膚感、もう最高(^^)

併せて狼男に襲われたことではからずも狼男の血を受け継いでしまったデヴィッドの見る、ショッキングな悪夢のシーンを含め、結構グロイ描写がされていてホラーとしての見応えも十分。

そしてこのホラー要素に、当時としては画期的だったろうジョン・ランディス流の全編にちりばめられるコメディの要素を加えることで、今なお熱狂的ファンが支持するカルト・ホラー作品となる。

 このジョン・ランディスが盛り込むブラック・ジョークは、深刻な状況のはずの主人公の脳天気な行動を呼び、死にきれずに次々と人間を襲っていく姿に、いつしか観ている方は早く死んでくれと願うようになる。

何人もの命を奪い、動物園で目覚めたデヴィッドが子供から風船を奪い取り、裸で走って行くシーンの可笑しいやら腹立たしいやら(笑)

まさしく本作はまさかの主人公の死を願うような展開になっていくという、監督の最高のブラック・ジョークが炸裂する作品なのだ(爆)

 キャスティングについてはほぼ知らない俳優さんたちばかりだったが、やはりデヴィッドと恋愛関係となるアレックス看護師役のジェニー・アガターの美しさが際立つ。

これだけ魅力的な女優さん、他の出演作はとちょっと調べてみたら、90年の「チャイルド・プレイ2」に12年には「アベンジャーズ」で世界安全保障委員会メンバーなる役で出演している。

「アベンジャーズ」は何度も観てるが、まったく印象に残ってなかったので、今度機会があれば早送りで探してみたい(^^)

 なおジョン・ランディスとリック・ベイカーのコンビは、翌年マイケル・ジャクソンの「スリラー」のミュージックビデオを世に送り出し、喝采を浴びる。

Blu-rayの特典映像について

 「狼男アメリカン」ドキュメンタリーや撮影秘話などのメイキングに加え、ジョン・ランディス監督や特殊メイクのリック・ベイカーのインタビューまで収録されており、かなり得した気分になる(^^)

 リック・ベイカーがインタビューで特殊メイクについて熱く語っているんだけど、変身シーンについて監督と交わした言葉が面白かった。

監督が
「これまでにない狼男を作るには何が必要か」
と聞いてきたとき、リック・ベイカーは、
「時間と金があればなんとかなる」
なんて答えたとのこと。

 ジョン・ランディスは誰もが口をそろえて笑いと恐怖は相反するもので両立はしないといわれたと語り、両立は出来るんだとリアルに描くことに心がけたと語る。

あと一番の見せ場についても自ら語っていて、これは私も一番印象的なシーンだったので、監督としても会心のできだったんでしょうね。

それは地下鉄で狼に追われ迷路のような通路を逃げるもエスカレータで倒れてしまい、そこに画面上から狼がゆっくりフレームインしてくるというシーン。
臨場感が素晴らしいシーンです。

またエンディングについても過去の狼男は悲劇の象徴として描かれていたが、本作の狼男は呪われた哀れな男、そして結局この狼男はマヌケだった、と笑いながら語っている。

そこで初めて本作のエンディングについて感じていた、もっと主人公の死を感動的に描くことも出来たのに意外とあっさり流していたという疑問が晴れた。

これもジョン・ランディス流のブラック・ジョークだったんだね~(^^)

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このレビューをアップした時点で、残念ながらPrime videoでは配信されていません。(2022/08/06)

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