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映画『心の旅』レビュー ★★★☆

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 ニューヨークのエリート敏腕弁護士ヘンリー・ターナー(ハリソン・フォード)は、この日も法廷で過失により告訴された大病院の弁護に立ち、言葉巧みな弁論で見事に被告側勝訴を勝ち取る。

仲間たちと勝訴を喜ぶヘンリーの視線の先に、病院の医療ミスで息子を失った老夫婦の悲しみの姿が映るが、ヘンリーは何事もなかったようにその場を去って行く。

 妻のサラと一緒に夕食会へ出席したヘンリーは、家に帰るとタバコがきれてるので買ってくると外へ出て行く。
近くの店に入ったヘンリーは、店主に「メリットを1箱くれ」と言うが、無言の店主はレジの前にいる若い男に目配せする。

するとその男はいきなり銃を向け「財布を出せ」というと、「待て」というヘンリーの胸と頭を撃ち、倒れたヘンリーの体をまたいで店から逃げていった。
 
玄関のベルが鳴り、サラはまたヘンリーが鍵を忘れたと思いドアを開けると、警察官がひとり立っていた。
急いで病院に入ったサラは、ベッドで意識を失い横たわるヘンリーを見て愕然とする。

 クリスマスの夜、意識が戻らないヘンリーに近況を伝えたサラが、今夜は帰るとキスをして去って行った後、ヘンリーは意識を取り戻し目を覚ます。

サラは医者から、幸い命はとりとめたが、心臓停止の間の脳への酸欠による後遺症により、長期の困難なリハビリが必要だと言われる。

そして今は体を動かすことも口を利くこともできず、記憶さえも失っているヘンリーが、いつの日か突然すべてを思い出す可能性もあるが保証もなく、一生口もきけず体の自由が戻るかどうかも分らないと告げられる。

 さっそくリハビリセンターへと移されたヘンリーは・・・。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:1991年/アメリカ/106分
  • 監督:マイク・ニコルズ
  • 脚本:J・J・エイブラムス
  • 音楽:ハンス・ジマー
  • キャスト:ハリソン・フォードアネット・ベニング/ビル・ナン/ミッキー・アレン

レビュー

 ハリソン・フォードが「スター・ウォーズ」に「インディ・ジョーンズ」と、ハリウッド映画のヒーローとしての地位を確立する一方、「刑事ジョンブック」で演技派としても新たな魅力を発揮し、その集大成のような静かな演技で話題を呼んだヒューマン・ドラマ『心の旅』をDVDにて鑑賞。

 ニューヨークで敏腕弁護士としてその地位を確立していたヘンリーは、ある夜タバコを買いに入った店で強盗に遭遇し、胸と頭を撃たれてしまう。
幸い命はとりとめたが、その後遺症として体を動かすことも口を利くこともできず、記憶さえも失ってしまう。

しかし、リハビリセンターに入ったヘンリーは、献身的な看護士たちによるリハビリにより、歩けるようになると遂に声も取り戻し、まだ思い出せない妻や娘と接していくうちに、次第に生きる力を取り戻していく・・・。

 始まってすぐ見慣れないハリソン・フォードのエリートぶった尊大な振る舞いに、かなり不快にさせられる。

裁判で勝つためには証拠も隠滅するし、娘のレイチェルにまで一方的に責め立てるし、お手伝いさんや秘書に対しては何の感情も抱かないという非情ぶり(^^;)

しかしこのフリが抜群に効いていて、それまで周りの人や家族すらも省みることがなかったヘンリーが、徐々に愛と温もりを内に目覚めさせていく姿に、心地いいい安らぎを感じていく。

出典元:https://www.amazon.co.jp/

 記憶を失ったことでゼロから始まった生活に、戸惑いながらも少しずつ家族や身近な人たちに感謝や慈愛を感じていくヘンリーを、ハリソン・フォードが演技派と呼ばれる俳優たちの洗練されたテクニックとは違う、無骨ながらも情感溢れる演技で魅せてくれる。

 そしてそんなハリソン・フォードの抑えた演技を受けて、聡明でいじらしい妻役を愛おしく演じたアネット・ベニングの好演が光る。

同じ年に公開された「真実の瞬間」でも、同じような献身的な妻役を演じており、この頃そのナチュラルな演技で評論家達に絶賛されていたのを思い出す。

 さらに、ヘンリーを一番勇気づけただろうリハビリセンターの介護士ブラッドリーを、ビル・ナンが軽快に演じる。

その気さくで屈託のない明るさは、塞ぎ込んでしまいそうなヘンリーの心を和らげ、踏み出す一歩の活力を与え、生きる力さえも吹き込む。

朝食にタバスコをたっぷりと混ぜ込ませてヘンリーに食べさせるシーン、最高!

そして、そんなヘンリーを励まし続けるブラッドリーのポジティブな明るさは、いつしか観ている自分にも向けられているように、心が救われていく感覚を味わう。

友人達の心無い言葉に傷ついたヘンリーを、励ましに来たブラッドリーがドアの影からぬっと現れるシーン、一番好きなシーン(^^)

”「人の言うことなんか気にするな、時間を掛けて自分の道を見つければいい」”

シンプルで飾らない、素敵なセリフです(^^)

 最後の方で娘が入った寄宿学校の先生が、なぜこんな勉強しなければならないのかと生徒達に問う。
続けて先生は周りはみんな競争相手なんだから、負けないためにも一生懸命勉強しましょうと言う。

人との触れ合いによって育まれていく、人を大切に思う心と人を愛する心。
この映画を観た後は、人に対してすごく優しい気持ちで接することができる気がする。


まあそんな気持ちでいられるのもわずかなんだけど(笑)

この作品は観るたびに、人生にとって一番大切なものが何かを改めて考えさせられ、そして確信させてくれる。

 ただよく考えると記憶を失う前のヘンリーも、自身にとってはそれなりに充実した人生を送っていたんじゃないかと考えると、内容が優等生過ぎるようにも感じる。

それに最後は弱者に寄り添う弁護士になるって、思わせでもいいので入れて欲しかったなあ。

 社会では成功しそれなりの地位を手に入れていた主人公が、あることをきっかけに人生で一番大切な物は何かを改めて知るという、自分を見つめ直す系の作品がいくつか並ぶ中で、本作はなにより誠実で素直に感動できる作品だった。

 なお本作のDVDには特典映像は予告編すら入っていませんでした(泣)
そしてメーカーさん、早くBlu-ray化をお願いしま~す(^^)

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Bitly

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