あらすじ
夜のニューヨーク、立ち並ぶビル群の夜空に浮かぶ二つの大きな満月?
ここは宇宙の遙か彼方、地球と建物から文化に至るまでほぼそっくりな星だったが、唯一この星の住人は人間ではなく、人間のように喋り、人間のように生活しているアヒルたちだった。
仕事で夜遅くに帰宅したハワード(エド・ゲイル)は、ママからの留守電を聞き、冷蔵庫からビールを取り出してソファーに腰掛けると、葉巻をくゆらせながらテレビのくだらない深夜放送にも飽き、雑誌”プレイ・ダック”のグラビアを眺めている。
すると、突然地震でも起きたように部屋が揺れはじめた。
なぜかソファーから動けないハワードは、ソファーごと何かに引っ張られるように宙に舞い、アパートの壁を突き破ると、空に出来た大きな渦の中に巻き込まれ、宇宙まで放り出される。
宇宙空間を叫びながら飛んでいくハワードは、ある星に出来た渦に引込まれていった。
そして空から落下したところは、なんと地球のクリープランドだった。
廃墟ビルのソファーに座り込んでいたハワードだったが、さっそく夜の町を徘徊する不良たちに絡まれ、状況が分らないまま走って逃げ出したが、路地裏のドラム缶の中に殴り飛ばされる。
そこへロック・バンド”チェリー・ボム”のリード・ボーカリストのビバリー(リー・トンプソン)が通りかかると、路地から現れた二人のチンピラに声を掛けられる。
ビバリーは無視して立ち去ろうとするが、チンピラにいきなり抱きつかれ「誰か助けて!」と叫んだ。
ドラム缶の中で女性の助けを求める声を聞いたハワードは、我慢の限界だとドラム缶から飛び出し、話しかけてくるアヒルに驚くチンピラを「私はダック・フーの達人だ」といって叩きのめすと、どこかへ逃げていった。
言葉を喋るアヒルに呆然とするビバリーに、ハワードはここは何という星だと尋ねる。
ここは地球だと答えたビバリーは、助けてくれた礼をいうとすぐにその場から立ち去ろうとしたが、突然降り出した雨の中にひとりたたずむハワードを見て、自分のアパートに連れて帰ることに。
部屋に入りお互いに名前を名乗り合うと、何か飲み物をとお皿にミルクを注ごうとするビヴァリーに、ビールはあるかというハワードに驚く。
ビバリーは慌てて自分はペットを飼ったことがないからといい、ハワードは冷めた目で粗相をしないように気をつけるよと答える。
なぜこんな所へ来てしまったんだと戸惑うハワードに、ビバリーはあっちでは何をやっていたかと聞くと、ハワードはゆっくりと自分の身の上を語り出した。
自分を医者にしたかった両親により医学部に通っていたが中退し、昼間は建築現場で働き、夜は作曲してたが、その夢もあきらめ先月広告のコピーライターになったという。
それじゃあまるで人生を降りてしまったみたいだというビバリーに、ハワードはそれでも時々特別な運命が自分を待ち受けていると感じることがあると答える。
ビバリーは「そいつよ!」といい、何かの目的のため宇宙の力か何かでここへ来たんだというが、疲れたハワードは帰る方法は分らないが帰らないとといって眠ってしまった・・・。
翌朝ビバリーはハワードと共に、自然科学博物館を訪れ友人でもある科学者のフィル(ティム・ロビンス)に相談するが、ハワードを目の当たりにして興奮したフィルは話にならず、さらにフィルは科学者でもなく博物館でバイトをしていた用務員だとわかり、ふたりは呆れて出て行く。
用務員に知能検査をされたとむくれるハワードに、フィルのことは知らなかったとあやまるビバリー。
それでもハワードが「もうほっといてくれ」というと、ビバリーは「力になってあげようと思ってたのに」と言い残し去って行った・・・。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:1986年/アメリカ/110分
- 監督:ウィラード・ハイク
- 脚本:ウィラード・ハイク/グロリア・カッツ
- 製作総指揮:ジョージ・ルーカス
- 音楽:ジョン・バリー
- キャスト:エド・ゲイル/リー・トンプソン/ジェフリー・ジョーンズ/ティム・ロビンス/ポール・ギルフォイル/リズ・セイガル
レビュー
マーベル・コミックの同名漫画をジョージ・ルーカス製作総指揮のもと、ウィラード・ハイク監督が映画化した『ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀』をBlu-rayにて鑑賞。
まず魔術により地球に飛ばされてきたアヒルの宇宙人を主人公にしたコミックの映画化ということだけど、もう見るからにディズニーの超有名なあのアヒルのキャラクターを連想させるが、まったくリンクしてないので安心してください(笑)
はるか宇宙の彼方に、地球とそっくりな惑星があったが、そこに生きる住人たちは人間ではなくアヒル。
ある日テレビを見ていたハワードは、何かの力により宇宙に放り出されると、飛んでいった先は地球だった。
ロック・バンドのボーカルのビバリーは、偶然チンピラに絡まれていたところを助けてくれたハワードを、なんとか元の星に帰そうと、博物館で用務員のバイトをしている友人のフィルに相談するが、まったく役に立たなかった。
ただ後日フィルはジェニングス博士を連れてくると、博士はハワードが地球へやってきた日、レーザー・スコープである星のガス層の測定をしていたところ、突然装置が暴走しレーザー光線が方向を変え、ハワードを地球に引き寄せてしまったと説明する。
ハワードから事情を聞いた博士は、ハワードを送り返すためさっそく研究所の装置を再起動させたが、またもや装置が暴走してしまい、今度は宇宙の外れに閉じ込められていた暗黒騎士を引き寄せてしまうと、ジェニングス博士の体に乗り移ってしまう。
さらに体を完全に乗っ取られた博士は、他の悪魔の一団までも地球に転移させようとするが・・・。
公開時あの「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカスが製作しているということで、観る前からめちゃめちゃ期待度が上がった作品だったけど、公開されるや評論家たちにめちゃめちゃ酷評され、ラジー賞の最低作品賞など4部門を受賞してしまう作品となってしまう。
当時私も劇場で見たが、期待しすぎたせいだったのか、思ったより盛り上がらなくて、劇場で観た映画のパンフレットは必ず買って帰る派なのに、この時は買わなかったことを思い出す(^^;)
ただ今回改めて観ると、違和感しかなかった着ぐるみの主人公が、空想のキャラクターが技術の発達により当たり前に目に入ってくる時代になったこともあり、ハワードをすんなり受け入れることが出来、以外に楽しく観ることができた(^^)
それでも前半は、とにかく失笑しまうほどの幼稚な演出に、主人公が着ぐるみということで、子供向けの作品と思いきや、いきなりハードボイルド風のイントロから、地球にきたハワードは風俗店でバイトしたり、早々にアヒルと人間が同じベッドに入って思わせぶりなシーンを突然見せてくる。
思いがけず目の当たりにする予想外の下ネタに、たぶん不評だったろう空気を醸し出す(爆)
ただ、ジェニングス博士が現れてから俄然面白い展開になっていき、相当な時間と製作費が掛かっただろう大がかりなセットやカーチェイスに、小型飛行機まで飛び回るシーンなども加わり、どんどんスケールアップして行く様にテンションが上がっていく。
そしてこんな奇抜な作品に、本作の前年に公開された「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で大人気となっていたリー・トンプソンをはじめ、ティム・ロビンスなど全力で自分のキャラクターを演じる俳優たちを、ただ見ているだけで楽しくなってくる。
なかでも私が一番好きなシーンは、撮影に1ヶ月を要したという、宇宙の暗黒騎士に体を乗っ取られたジェニングス博士を連れて、ハワードとビバリーがレストランに入っていくところ。
どういうわけかここの店員全員が、旭日旗を思わせる絵に萬歳(ばんざい)と漢字が入ったはちまきをしているんだよね(^^;)
完全に暗黒騎士に体を支配されたジェフリー・ジョーンズ演じるジェニングス博士の、次第に凶悪さが増していく表情や言動に、呆れるハワードとビバリーのリアクションも楽しく、ついにその悪魔のパワーを解放して大暴れする博士の暴走ぶりは、当時の最新のSFXも含め、もう何度観ても面白いのだ。
私は観終わった後、ここだけもう一度観てしまった(^^;)
本作は先ず、この着ぐるみのハワードをスムーズに受け入れられるかが肝であり、「アベンジャーズ」や「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」など何でもありのキャラクターを見慣れた今、細かいことは置いといて、ただこの80年代の無邪気な空気感を楽しむことが出来たら、面白い映画・・・かな(^^)
Blu-rayの特典映像について
Blu-rayの特典映像として、”「ハワード・ザ・ダック」を振り返って”という26分ほどのメイキングが収録されており、監督・脚本のウィーラード・ハイクと共同脚本の監督の妻でもあるグロリア・キャッツに、出演者たちが当時を振り返っている。
まずリー・トンプソンだけど、ビバリー役のオーディションに、シンディ・ローパーとマドンナの中間を狙ってコスチュームを選んだと言った後、役が決まって原作を読んだと語る・・・、ッエ!
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で人気者となり、あらためてあの頃オアファーが殺到してたんだろうなあ、なんだけど、原作も読んでないのにオーディション受けるって(^^;)
さらにボーカル役で歌えることが条件だったため、歌は苦手だったというリー・トンプソンが毎週末歌のレッスンを受けたいたといい、その当時の練習している貴重なシーンが収録されていた。
また当初ハワードはパペットを操作して撮影していたが、羽が取れたり口が破けたりで撮影が進まず、ジョージ・ルーカスが「これじゃダメだ」と言って着ぐるみに変更し、撮り終えてたシーンも撮り直したと、監督が語っていた。
あと”「ダック」が誕生するまで”という13分ほどのメイキングでは、公開時”駄作だ”と評論家からこき下ろされたときの様子を、それぞれが語るシーンが面白かった。
脚本のグロリア・キャッツが映画会社で試写会をしたとき、重役たちが何の感想も言わないで黙って出て行って、ジョージ・ルーカスに「嫌な予感がする」と話したエピソードを、大変だった当時を振り返って笑っていた。
またハワードの中に入ったエド・ゲイルは、テレビでくだらない映画だと紹介され、恥ずかしくなったと語り、リー・トンプソンはあまりのショックに次回作の撮影初日にどうしていいか分らず泣き出してしまったと語っていた。
落ち込むグロリアにジョージ・ルーカスは、
”「25年後にこの映画は再評価される、時代がこの映画に追いつくだろう」”
と言われたとのこと。
そして時代が流れ、作品は次第に見直されるようになり、今ではカルトムービーだと笑うグロリアをみて、私もなかなかBlu-ray化されなかった本作が、そういうことでやっと発売されたんだと納得した(^^)
よかったね、ハワード(^^)
さらに次のマーベルのヒーロー作品は、ハワード・ザ・ダックになるとかならないとか・・・(^^;)
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・Prime video
このレビューをアップした時点で、残念ながらPrime videoでは配信されていません。(2024/02/23)
・DVD/Blu-ray
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