あらすじ
人付き合いも悪く、いつもしかめっ面の頑固じいさんアーサー72歳。
今日も公民館へ合唱団“年金ズ”の練習をしている妻マリオンを迎えに行く。
仲間たちに囲まれ楽しそうに歌っている妻を、アーサーは一人部屋の外でタバコを吸いながら終わるのを待っている。
車椅子に乗って出てきたマリオンにアーサーは「遅いぞ」といい、ここは禁煙だから外で吸ってという音楽教師のエリザベスを無視し、外へ車椅子を押して出て行く。
アーサーは病弱なマリオンが、合唱団に入って歌うことを心配していたが、ある日、合唱コンクールへのオーディション参加へ向けて練習をしていたマリオンが倒れてしまう。
恐れていたガンが再発し、余命数か月と診断される・・・。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:2012年/イギリス/94分
- 監督・脚本:ポール・アンドリュー・ウィリアムズ
- 音楽:ローラ・ロッシ
- キャスト:テレンス・スタンプ/ヴァネッサ・レッドグレーヴ/ジェマ・アータートン/クリストファー・エクルストン
- 主題歌:セリーヌ・ディオン 「Unfinished Songs」
レビュー
“歌わにゃいかん 理由ができた。”
2013年最高の「泣ける」感動作!!という触れ込みで、ネットでもかなりの高評価をうけ、ぴあ初日満足度ランキング第1位というよくわからないものまで獲得した『アンコール!!』をBlu-rayにて鑑賞。
映画紹介で書かれるあらすじから、ほとんどどんな感じの映画かわかってしまう、いわゆるありがちな映画の印象があり、これまで観る機会がなかったが、偶然見た予告編で速攻Blu-rayをAmazonで注文してしまった。
まさか予告編でウルウルさせられるとは。
ストーリーの前半は、倒れてしまったマリオンに懸命に愛情を注ぐアーサーの姿が描かれていく。
自分は誰にも理解されなくてもいい、妻にだけわかってもれえれば他は何もいらないと、いじらしいほど献身的に看病するアーサー。
そしてその愛情を優しく受け止め、アーサーに心をゆだねるマリオン。
積み上げられた信頼と、うらやましいほどの夫婦愛がそこにある。
コンクールの前に予選として、審査員を呼んで街の人たちを前に合唱を披露することになるんだけど、そこでマリオンがソロで歌うことに。
マリオンはアーサーに向けて「トゥルー・カラーズ」を見事に歌い上げるんだけど、このシーン、もはや画面が見えないくらいの涙大決壊だった(^^;)
ただこのあと、当然アーサーはマリオンを温かく迎えると思っていたのに、ふてくされてしまう。
それは合唱団のみんなと歓び合っているマリオンを離れてみていたアーサーが、自分のこの頑なな性格のために、妻を長い間幸せに出来ていなかったんじゃないかと落ち込んでしまうため。
そんな中、コンクールを前に妻のマリオンは亡くなってしまう。
世界中でたった一人、自分のことを理解して愛していてくれた人が、突然いなくなってしまうという喪失感と哀しみは、映画だと分かっていても、見続けることがただ辛いという気分になってしまった。
このままこんなきつい感じで最後まで行かれたら、観るのを止めようと思ってしまうほどだったが、後半アーサーがひとりになってしまってから、作品は更に生きる喜びと輝きを増していく。
亡き妻のためにも、素直に愛情を伝えれていなかった息子のためにも、いままでの頑なな生き方を変えようとするアーサーと、それを優しくそして温かくサポートする音楽教師エリザベスと合唱団の仲間達。
予定調和の展開ながら、割り切れない繊細な心理描写が随所に挿入されていて、上手い演出にどんどん引き込まれていった。
アーサーは戸惑いながらも新しい扉を開き、歌うことで新たな第一歩を踏み出す。
いままで自分は何をやっていたんだろう。
自分にとっての人生を豊かに送るための何かってなんだろう。
そんなことも思いながら、ラストに待っているだろうカタルシスを期待し、次第に胸が熱くなっていく。
キャスティングについては、やはりテレンス・スタンプとヴァネッサ・レッドグレイヴの名優二人の、セリフ以上に夫婦の絆を感じさせたナチュラルな演技が素晴らしい。
テレンス・スタンプといえば、私はすぐに「プリシラ」の年配のゲイを思い出すが、年齢を重ねてほんといい顔になってきましたねえ。
監督のポール・アンドリュー・ウィリアムズが、テーマはアーサーの贖罪だと語っていた。
亡くなった妻のためにも、そして息子や支えてくれた人たちのためにも、ここはカチカチの殻を破って、歌わにゃいかん。
人はひとりで生きていけるけど、人と関わることで幸せの歯車は回り始める。
自分の気持ちは素直に正直に相手に伝えてこそ意味がある。
愛情を出し惜しみしちゃあだめ。
音楽教師のエリザベスが、アーサーに向かってこう言う。
「生きづらそうな性格ね」
このセリフって、私も含め身に染みる人、たくさんいるだろうなあ。
踏み出す勇気さえあれば、もっと楽に生きれる。
もっと人生をエンジョイできる。
なんとか一歩前進したアーサーの、これからの生き方を暗示させるだけでよかったということか、ラストは思いのほか静かにあっさりと終わってしまう。
ああ~、ここで終わりかぁって思った瞬間、エンドロールでセリーヌ・ディオンの歌が流れてきた。
本作のために書き下ろしたという、この主題歌「Unfinished Songs」の歌詞がほんとに素敵だった。
”最高の時はこれから来るのよ♪”
しばらく心の温もりも最高の余韻に、どっぷりと浸ることに(^^)
観る人に生きる勇気と幸せを感じさせてくれる、おすすめの作品です。
そして観る前に、必ずタオルを用意しといてくださいね(^^)
Blu-rayの特典映像について
Blu-rayの特典映像で、監督やスタッフ・キャストのインタビューが13分ほど収録されています。
さらにNG集に未公開シーンなども収録されています。
その中で「ブレンダの助言」というタイトルで、こんな未公開シーンあります。
息子にも愛想を尽かされ、もう無理だとエリザベスに告げアーサーが出て行くシーンの後に続くシーンだと思うんだけど、去って行くアーサーの背中に、マリオンの友人のブレンダが声を掛ける。
「ひとりで腐るのを止めれば、天国のマリオンが喜ぶわ」
アーサーはみんなが大好きだったマリオンの夫ということで、一応合唱団に受け入れられるんだけど、そこにいる団員とのエピソードがほとんど無かったので、これは入れても良かったんじゃないかなあ。
そして予告編も入ってたんだけど、観たらやっぱり泣いてしまった(笑)
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