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映画『ミツバチのささやき』レビュー ★★★★

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 1940年頃のスペイン、カスティーリャ平原を走ってくる一台のトラック。

オユエロス村の公民館に到着したトラックをみて、子供たちが「映画だ!」といって集まってくる。

村人たちはそれぞれが椅子を持ち込み、一杯になった公民館の中、この日上映される作品は「フランケンシュタイン」。

白い壁に映し出されたモノクロの映像を、周りの子供たちや大人たちと一緒に、食い入るように見つめているイザベルと妹のアナ。

 一方フェルナンドは蜂の巣箱の点検が終わり、映画の声が漏れる公民館の前を横切り、自宅の大きな屋敷に帰ってくると、妻テレサを名を呼ぶが返事がない。

家政婦のミラグロスは、テレサは出かけていないこと、そして娘たちは映画に行っているという。

6歳になる少女アナは、横で一緒に映画を見ている姉のイザベルに小さな声で、フランケンシュタインは少女を「なぜ殺したの?」と聞くが、「あとで教えてあげる」とだけイザベルは答える。

 その日の夜、ベッドで並んで眠っているイザベルとアナ。

アナは眠りかけているイザベルに、昼間見た映画について、「怪物はなぜ少女を殺したの?」そして「あの怪物はなぜ村人に殺されたの?」と聞く。

イザベルは「あれは映画でつくりものだから、怪物は本当は少女を殺してないし、怪物も死んでいない」と答える。

そして、「あの怪物は精霊なので目に見えないけど、目を閉じて「私はアナよ」と呼びかければ、お話しできるわよ」と教える。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:1973年/スペイン/99分
  • 監督:ビクトル・エリセ
  • 脚本:ビクトル・エリセ/アンヘル・フェルナンデス・サントス
  • 製作:エリアス・ケレヘタ
  • 音楽:ルイス・デ・パブロ
  • キャスト:アナ・トレント/イザベル・テリェリア/フェルナンド・フェルナン・ゴメス

レビュー

 世界中で数々の映画賞を受賞した、ビクトル・エリセ監督の長編第一作目となる『ミツバチのささやき』をBlu-rayにて鑑賞する。

 絵本をめくっていくようなオープニングから、その絵に”昔むかし・・・”と文字が入った後に物語は始まる。

1940年頃のスペイン、カスティーリャのある村で「フランケンシュタイン」が上映される。
姉のイザベルと一緒に映画を観たアナは、イザベルからあの怪物は精霊だと教えられ、それを信じてしまう。

さらにイザベルに、平原の中ぽつんと立っているある廃屋に精霊がいるといわれたことで、アナは一人その廃屋へ訪れるようになるが、ある日戦地から逃げそこに隠れていた脱走兵にあってしまう。

アナはためらうことなく傷ついて座っている脱走兵の男に近づき、持っていたリンゴを差し出す・・・。

 見終わったあと、呆然となりどういう映画だったのか思い返してみる。

純粋に好奇心を抱く子供たちに突きつけられる現実の厳しさ。

そして主人公となる少女アナ・トレントの澄み渡った泉のように深く清らかな瞳と、絵画のような美しい景色や屋内の風景だけがあった。

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一点の曇りもないその瞳に映る世界は、目に見えないもの、手に触れられないものまでも見通しているよう。

幼い頃の心の記憶は、時間とともに消えていく。

ただそれは思い出せないだけで、心に刻まれた遠い記憶はいつまでも消えず、心の奥に積み重ねられていて、今の自分が出来上がっている。

自分たちも今は忘れているだけで、子供の頃にはそういうものが見えてたんじゃないだろうかという気持ちが溢れてくる。

 そして風景から、自然光が差し込む薄暗い室内など、どこを切り取っても絵画を思わせる静寂と詩的さと美しさを称える、名画のようなシーンの数々。

例えば冒頭の、母親のテレサが手紙を出しに駅にやってくるシーンでは、遠くから走ってくる機関車と、自転車に乗って走ってくるテレサをカメラは同時に映し出し、流れるようにホームまで移動したテレサの前に、機関車が駅に入ってくるという動きをワンショットで捉える。

その計算され尽くした構図と色彩の背景に、絶妙のバランスで溶け込む登場人物たちを、美術館の静寂の中で名画を鑑賞するように心を研ぎ澄ませただ見つめている。

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映像美と静けさの中、何かのささやき声が聞こえてくるような現実と幻想が入り交じった世界観に、想像をかき立てられる空気感が、たまらなく心地いい。

そんな印象を感じれたのも、偶然まだ夜も明け切ってない、早朝の5時に本作を観たことにある気がし、その静まりかえった時間帯に目覚めたことに、勝手に奇跡さえ感じた(笑)
素晴らしい!

ただ、そんな感想の片隅に引っかかってくるものがある。

 そう、評判通りの難解な作品なのだ(^^;)

本作はミニシアター系の傑作といったら、必ずそのタイトルが上がってくるという名作であり、評論家からも絶賛された作品ということで、映画好きがこぞって観た作品なのだ。

ただそんな映画好きたちが、ことごとくその解釈に困ってしまったという難解な作品でもあった。

かくいう私もずいぶん前に映画の批評本で知り、早速見たんだけど、「・・・」になってしまったことを思い出す。
深読みをしなくてはいけないのかと思ってしまうほど、とにかく思わせぶりなシーンが多い。

フェルナンドのミツバチの観察日記に書き込まれる

”蜂の動きが時計の歯車のように見える”とか、
”巣の中での様々に動き回る蜂の群れの、報われることのない過酷な努力”、
”唯一の休息たる死も、この巣から遠く離れねば得られない”

などのセリフをはじめ、蜂の巣を思わせるガラスの色と窓枠が入ったベランダのドアや、「フランケンシュタイン」のなかで語られる意味深なセリフの数々。

そして家族の話のようでもあるのに、なぜか一家団欒のシーンがほぼないとか、テレサの手紙やフェルナンドの懐中時計にいたるまで、明確な答えは語られない。

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封入特典のリーフレットについて

 ただその答えはBlu-rayの封入特典としてはいっていたリーフレットの、作品解説でなんとなく解明した。

当初本作は「フランケンシュタイン」をめぐる映画をというで、商業的なホラーもので企画されていたが、製作費がたらないということに。

そこで巨大セットもなく撮影期間も4週間ぐらいのスペイン版「フランケンシュタイン」ではと、エリセ監督自らが提案し、それが採用されたとのこと。

またアナが「フランケンシュタイン」という空想の映画から、現実の世界に影響を受けてしまうとう設定については、監督自身が子供の頃からハリウッド映画をたくさん観て育っており、中でも「自転車泥棒」やロッセリーニの「戦火のかなた」に大いに影響を受け、自分なりのやり方で抵抗を続け、映画をレジスタンスの手段として使おうとしたと語っている。

そう、本作製作時の1973年は、フランコ政権下で体制批判を公にすることは不可能であったため、抑圧されたスペイン国民に向けてのメッセージを、本作は巣箱の中のミツバチのシーンや数々のセリフのなかにメタファーとして差し込んでいた。

 ただそんな背景やメタファーを理解してなくても、本作の魅力は捉えどころのない神秘的ですらある空気感と、繊細に移り変わるアナの無垢な瞳に、名画のような詩的な映像美を、余計な先入観を捨てただ堪能することにあるのかも(^^)

なんて偉そうに語ってしまったけど、とりあえずお茶の間で「○曜ロードショー」を観るような感覚で観ると、その魅力は伝わらない気がする(爆)

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