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映画『ストレイト・ストーリー』レビュー ★★★★☆

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 アイオワ州ローレンス、のどかな昼下がり、73歳になるアルヴィン・ストレイト(リチャード・ファーンズワース)は、娘のローズ(シシー・スペイセク)が外出した後、家の中で倒れてしまう。

バーに集まっていた友人のひとりが、いつまでもやってこないアルヴィンの様子を見に、家までやってくる。

友人は外から名前を呼ぶが返事がないため、裏口に回り部屋の中に入ると、アルヴィンは床に横たわったまま「ここだよ」と答える。

そこにちょうど帰ってきたローズは驚き、すぐに友人の車に乗り病院へと向かったが、病院の前でやっぱり行かないとごねるアルヴィンをローズは必死に説得する。

診察を終えたアルヴィンに、医者は腰の手術をすすめるが「嫌だ」と断り、歩行器が必要だといわれても「いらん」と突っぱねるため、両手に杖だといわれる。

さらに目のかすみは糖尿病のせいかもしれないし、タバコを止めないので初期の肺気腫だと思われるし、循環器系の持病もあるので、今のうちになんとかしないと取り返しがつかないことになると告げられる。

アルヴィンは医者から突きつけられた病状の数々に、自らの老いを再認識させられたが、それでもタバコは止めず、心配するローズには先生から100まで長生きすると言われたという。

 そんなある日、10年来口も利かず絶縁状態だった兄ライルが、心臓発作で倒れたという電話が入る。

アルヴィンは周りの反対も聞かず、兄が住むウィスコンシン州マウント・ザイオンへと、時速8Kmの芝刈り機トラクターにまたがり560Kmあまりの旅路へ出発する。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:1999年/アメリカ/111分
  • 監督:デヴィッド・リンチ 
  • 脚本:ジョン・ローチ/メアリー・スウィーニー
  • 音楽:アンジェロ・バダラメンティ
  • キャスト:リチャード・ファーンズワース/シシー・スペイセク/ハリー・ディーン・スタントン/ジェームズ・カダー 

レビュー

 「ブルーベルベッド」や「ロスト・ハイウェイ」など、悪夢的迷宮世界を描き続ける、鬼才デヴィッド・リンチ監督が描くロードムービーの傑作『ストレイト・ストーリー』を観る。

 本作は1994年のニューヨーク・タイムズに掲載された記事で、車なら一日で行ける距離をトラクターで6週間掛けていったという老農夫の実話。

その記事を読んだメアリー・スウィーニーが、ジョン・ローチとともに脚本を書き上げ、リンチに持ちかけて映画化された。

実話だということも驚きだったが、初めて本作を観たとき、日常に潜む狂気を描いてきたリンチが、こんなにもハートフルな素敵な作品を作ったということがなにより驚きだった。

まあオープニングの、太った女性が庭で日光浴をしている横、窓際にゆっくりとカメラが近づいていくと、大きな物音とうめき声が聞こえるという、いかにもな不気味シーンはリンチワールドだったけど(^^;)

 見渡すばかりの広大なトウモロコシ畑に、どこまでも遠く遙か彼方までまっすぐにのびていく一本道。

アルヴィン・ストレイトはオンボロトラクターにまたがり、仲違いしてしまった兄と和解するためだけに、そこをゆっくりゆっくりと走って行く。

その横をそこのけそこのけと強引に抜き去っていく大型トラックに、力強く自転車をこぎ軽々と走り去っていく若者たち。

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自分のたどってきた道、そしてこれから先進んでいく道。

そこにはゆっくりと進んでいたからこそ感じる、家族への想いに、肌に触れる自然の風やたたきつける雨のしずく、そして目に映る美しい風景がある。

旅の途中で出会う、家出した少女や、芝刈り機の修理の間庭を開放し世話をやく男との、何気ない会話。
そして今まで語ることができなかった、過去の悲痛な記憶を吐露しあう老人。

行きずりだが、だからこそ素直に通い合う心の温もりがなんとも心地よく、優しい空気に癒されていく。

 キャスティングについては、やはりアルヴィン・ストレイト役を演じた79歳のリチャード・ファーンズワーズの、人生の深みと優しさを感じさせる青い眼差しが素晴らしい。

リンチ監督に「その役のために生まれてきた役者」と言わしめた彼の、豊かな表情からにじみ出てくる優しさと、気高い魂を感じさせる威厳が、スクリーンから伝わってくる。

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 ただその年のアカデミー賞主演男優賞にもノミネートされたリチャード・ファーンズワースは、公開翌年の2000年にガンの苦痛に耐えかねて自殺してしまう。

図らずも本作は彼の遺作となってしまい、その事実を知って改めて思い返すと、アルヴィンのシンプルだが発せられる一言一言に、しみじみと自らの人生を顧みることに。

そしてアルヴィンが命がけで貫いた決意とその命の儚さは、痛烈に胸に刻み込まれる。

 ラストは言葉少なにぎこちなく見つめあう兄弟の姿に涙。

Blu-rayのジャケット裏に、

”これは、愛すること、許すこと、そしてそうした人の心の動きをシンプルに描いた映画だ”

という、デヴィッド・リンチの言葉が載っていた。

”許し”がテーマだったようだが、私にとってこの作品は、

 のどかで美しい風景に満天の星空、そして旅先でふれあう人々との交流に、内から湧き上がる優しさと心の温もりがただ愛おしく、そしてその感情をギュッと抱きしめたくなる。

そんなことを感じさせてくれた作品だった。

傑作です。

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 当時劇場で購入したパンフレットを読み返してみると、「ストレイト・ストーリー」でリンチは変わったのか?というテーマで、評論家たちそれぞれがリンチへのこだわりを述べ、いずれも変わっていないと分析していた(笑)

 私がリンチらしさを感じたのは、トラクターを追い越した車が鹿をはねてしまうシーン。

運転席から降りてきた女性は、音楽を鳴らしたりライトを付けたりとやれることは全部やったのに、週に一頭は鹿にぶつかると、ヒステリックに喚く(^^;)

なんという不条理な世界(笑)

 ただ、ああ~、面白いこと書いてるって当時も読んでただろうに、忘れてしまったのかまったく初めて読む内容のように感じてしまう。

こんなとこで自らの老いを認識させられるとは・・・(^^;)

 Blu-rayの特典映像は、残念ながら予告編だけでメイキングは入っていなかった、残念(涙)

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