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映画『シャイニング』レビュー ★★★★★

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 コロラド州 ロッキーの山の裾野にあるオーバールック・ホテルへと向かう一台の車。
ジャック・トラビス(ジャック・ニコルソン)は冬の間閉館するホテルの管理人となるため、支配人のアルマンに会に行く。

アルマンはジャックへ冬の間ボイラーを燃やし、毎日別の部屋を暖めることで、雪の被害を最小限にとどめるのが仕事だという。

続けて5ヶ月もの間、孤独に耐えられるかと問われ、ジャックは新作の小説を書くのにちょうどいいと答える。

そこでアルマンは、1970年に起こったある事件のことを語り始める。

それはジャックと同じように、管理人として採用したグレイディという男が、急に気が狂い自分の妻と二人の娘をオノで殺し、自分は猟銃を口にくわえ自殺したという話だった。

ジャックは私にそんなことは起きないので、安心してくださいと答える。

 自宅で結果を待つ妻ウェンディ(シェリー・デュバル)に電話をし、採用になったことを伝えている一方、息子のダニー(ダニー・ロイド)は浴室の鏡に向かい、見えないトニーという友だちと会話をしている。

と、突然ダニーの頭の中に、エレベーターから波のように吹き出した血が、床一面に広がっていく情景と、廊下に双子の少女が並んで立っている姿が流れ込んでいた。

 ホテルの閉館の準備で慌ただしく人が行き交う中、ジャック一家はやってきた。
すぐにホテルの中をジャックとウェンディは案内してもらうが、ダニーは別の部屋で一人ダーツで遊んでいた。

ふと背後で何かの気配を感じて振り向いたダニーの目の前に、あの双子の少女が並んで立ち、じっとダニーを見つめていた・・・。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:1980年/イギリス・アメリカ/119分
  • 監督:スタンリー・キューブリック
  • 脚本:スタンリー・キューブリック/ダイアン・ジョンソン
  • 原作:スティーブン・キング
  • キャスト:ジャック・ニコルソン/シェリー・デュバル/スキャットマン・クローザース/ダニー・ロイド

レビュー(ネタバレあり)

 1977年のスティーブン・キング原作の小説を、スタンリー・キューブリック監督と小説家のダイアン・ジョンソンで共同脚色して製作された『シャイニング』をBlu-rayにて鑑賞する。

 誰もがホラー映画の傑作として、広く認知されている作品なので、改めてレビューして紹介する必要も無いんだけど、つい先日本作の続編となる「ドクター・スリープ」を観て、また無性に観たくなり、いかに本作が素晴らしい作品なのか、書いてみたくなった(^^;)

 雪に覆われて冬の間閉館するホテルの、管理人に採用されたジャックと、その妻ウェンディに息子のダニー。

閉ざされた空間と、そのホテルにうごめく死霊たちにより、次第に常軌を失っていくジャックは、家族に殺意を抱いていく。

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 まずオープニングの荘厳な音楽の中を、ロッキーの山並みに続くハイウェイを走っていく、一台の黄色の車を追っていく空撮シーンが、早くも待ち受ける何かの存在を予感させる。

そして前任の管理人が起こした惨殺事件の話や、ダニーに宿る特別な能力シャイニングの存在に、フラッシュバックで現れる血しぶきや双子の少女と、次々と積み重なっていく不気味なシーンの連続に、言い知れぬ不安をかき立てられ、もう最初から釘付けで目が離せない。

 本作で一番感じることは、別格のビジョンを持つキューブリック監督が作り出す、歴代のホラー作品と趣を全く異にする、上質の映像世界を体感することの歓びだ。

まず作り込まれたセットの、窓から差し込む光や各照明の照度にまで及ぶこだわりと、計算されつくした構図に、鮮やかな赤や緑の壁の色と、本編のどこを切り取っても、アート写真のような美しさ。

そしてまったく温もりを感じさせない、冷たく広がるホテルの閉鎖された空間を、目線のようになめらかに移動する画期的なカメラワーク。

ステディカムという、カメラを移動しながら撮影するときに起きるブレを、なくすための機材をいち早く導入し、ダニーが三輪車で廊下を走ったり、俳優が歩いてるときなど、どんなに激しく動いても、滑るように映し出される映像は、今観ても素晴らしい。

さらに広角レンズで得られる奥行きが組み合わさることで、移動した先で待つ得体の知れない何かに向かって、連れて行かれてるような錯覚を起こさせる。

そこにフラッシュバックで差し込まれる、血なまぐさい衝撃のシーンを加えることで、目に見えない恐怖という意識を、完ぺきに再現した映像に、ただただ圧倒される

 また、出演者たちの演技に対しても、まったく妥協を許さないキューブリックの演出は、数え切れないテイク数を費やし、その中から最高のシーンだけを選び抜いていく。

特典映像のメイキングについて

 Blu-rayの特典映像にある、当時17歳のキューブリックの娘が撮影したメイキングに、監督がいろんな場面でこだわりをみせる貴重なシーンが入っている。

娘ということでキューブリックが自由にさせていたのか、本編にも使われたシーンの撮影現場を映したり、キューブリックがジャック・ニコルソンやシェリー・デュバルに演技指導しているシーンまで入っていた。

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 特にウェンディ役を演じたシェリー・デュバルに、とにかく厳しい口調で指導しているシーンがあり、彼女を追い込むために、わざと冷たくする場面もしっかり撮影されている。

デュバルがジャックをバットで殴るシーンは、なんと127テイクも繰り返し撮影されていたとか、彼女のあの恐怖におびえるシーンは、監督から執拗にかけられたプレッシャーによるものだったんだろう。

また演技について、ジャック・ニコルソンは監督と意見が対立したときは、演技の幅を広げたいので監督に従うと言うと、シェリー・デュバルは、意見が合わないときは徹底的に話し合うと、意外なこだわりをみせていた。

 逃げ場のない閉塞的な空間で、キューブリックの完璧な演出と映像美に、大げさともいえるジャック・ニコルソンの狂気の表情と、シェリー・デュバルの恐怖におののく表情が一体となり、かつて誰も見たこともない観る者の精神を凍り付かせる、至福の恐怖を堪能する。

【ここからネタバレ】


謎のエンディングについて考察してみる

 本作で一番の謎はラストで、ホールの壁に飾られた昔の集合写真に、なぜか写り込んでいるジャックだろう。

写真には”展望ホテル 1921年 7月4日 舞踏会”という文字か書き込まれていた。
私は勝手に、ラストでジャックの魂がホテルに縛られた死霊たちに引き込まれたことで、写真に加えられたんだと思っていた。

でも再度この作品を観たときに、妙な違和感を感じたシーンがいくつかあった。

酒が飲みたいとバーに行くと、バーテンダーが現れるが、そのバーテンダーにロイドと呼びかけ、酒をインディアンは知らないとか、おまえは昔からここで一番だとか、以前から知ってるように会話するシーン。

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そういえば最初の方で、このホテルは1907年に着工、その2年後に完成し、もとはインディアンの墓地に建てられ、建築中にも襲われたことがあるという話を支配人が説明するシーンがある。

ここでスティーブン・キング原作の映画「ペット・セメタリー」を思い出した。

劇中で死者を蘇らせる墓地の話で、死者には「ウェンディゴ」というインディアンに伝わる精霊が取り憑いていると説明されてるシーンがあったような・・・。

しかもこの精霊に取り憑かれると、強い不安感と恐怖で狂っていくという精神疾患がほんとにあるようだ。

さらに本作でカットされたシーンの中に、ジャックがこのホテルに来たことがある気がするというシーンがあったという話もある。

ということから、これらをまとめ私なりに推測すると、ジャックはインディアンの呪いで、現代に転生してきたんじゃないか、なんて思ったがどうでしょう?

なんていろいろ書いてみたが、今は結局はっきりさせない方がいいような気がしている(^^)

だいたいキューブリックは意図的に、それらをはっきりさせないことで不安を煽り、数々の謎を観る者の感性に委ねているんだよね。

ちなみにこの傑作に、原作者のスティーブン・キングが憤慨していたというのは有名な話ですよね(^^)
大幅に小説と内容を変更したということで激怒し、批判を繰り返した結果、自らテレビドラマ版の「シャイニング」を製作したというのも誰もが知るところです。

とにかくこの映画、いろいろ調べれば調べるほど、いろんなエピソードが出てきて、きりが無いのだ(爆)

小説では”シャイニング”は重要なキーポイントになっているのに対して、映画ではそれほど重要に扱われてないし、ジャックを演じる役者は普通の俳優をイメージしてたのに、ジャック・ニコルソンと知ってさらに反対したとか(笑)

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それから今更知ったんだけど、私が観た「シャイニング」は上映時間119分のコンチネンタル・バージョン版というものらしく、なんと上映時間が144分の北米公開版というものがあり、既に発売もされていた。

この短い119分のバージョンがとても気に入っているので、今更どうしようかなあ~、なんて今観るのを悩んでいる(^^;)

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