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映画『ドクター・スリープ』レビュー ★★★

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 1980年フロリダ州のある森の中、家族でキャンプに来ていた少女は、一人花を摘みに歩いていると、湖畔で帽子をかぶった女が、切り株に腰掛け歌っている姿を見かける。
何かに引き寄せられるように、その女に近づいていく少女。

帽子をかぶった女ローズ(レベッカ・ファーガソン)は少女の気を引くように、帽子から花を取り出すマジックをみせるが、気がつくと数人の男や女が周りを取り囲んでいた。
不安になり逃げようとする少女の腕を抑えたローズがささやく。
「特別な女の子なんでしょ?」

 同じ頃オーバールック・ホテルからなんとか脱出したトランス母子は、フロリダに暮らしていた。
しかしダニーはいまだにあのホテルでの悪夢にうなされていた。

真夜中に目が覚めたダニーは、部屋から出ると浴室から不穏な気配を感じる。
気になったダニーは恐る恐る近づいて、そっと浴室のドアを開けると、かつてホテルの237号室にいた、あの体が腐った女がいた。

トラウマに苦しんでいたダニーは、ある日ベンチに座って遠くを眺めていると、ホテルのシェフだったディック・ハルランが現れ、隣に座り語りかけてくる。
「オーバールック・ホテルの飢えた幽霊たちが、どこまでもおまえの特別な力(シャイニング)を狙ってやってくる」
そしてディックはダニーに、おもちゃの箱を手渡しながら、昔自分がおばあさんに教えてもらった魔法の話をする。
それは頭の中に箱を置き、死霊たちを封印するというものだった。

2011年ニュージャージー州。
ダニー(ユアン・マクレガー)は酒場で酒をあおり、自我をなくすことでシャイニングを抑えていたが、そのせいでアルコール依存症になっていた。

一方、ニューヨーク州ロングアイランドの映画館で、シャイニングを使い財布を盗む15歳の若い娘アンディの様子を、後ろの座席から興味深そうに見つめるローズ(レベッカ・ファーガソン)と仲間の男ががいた。

また、ニューハンプシャー州アニストンの自宅で、誕生日を祝ってもらっている少女アブラ。
誕生会で帽子からスプーンを出す男のマジックを見て、自分も使えると言い出す。
その後部屋に戻ったアブラの両親は、天井にぶら下がる無数のスプーンを見て驚いていると、後ろでアブラが「アブラカタブラ」と唱えると、天井のスプーンが一斉に落下する。

その瞬間、その大きなシャイニングに気がついた者が2人いた。
バスで眠っていたダニーと、次のターゲットを探していたローズだった・・・。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:2019年/アメリカ/152分
  • 監督・脚本:マイク・フラナガン
  • 音楽:ザ・ニュートン・ブラザーズ
  • 原作:スティーヴン・キング
  • キャスト:ユアン・マクレガー/レベッカ・ファーガソン/カイリー・カラン/クリフ・カーティス

レビュー

 1980年、スティーブン・キング原作、スタンリー・キューブリック監督のホラー映画の傑作「シャイニング」の、まさかの続編をマイク・フラナガンが監督した『ドクター・スリープ』をPrime videoにて鑑賞する。

「シャイニング」という完璧な作品の続編を、キングが書いてたというのもまさかだったけど、こんなに観る前からハードルが上がりまくった映画も珍しいよね(^^;)

 前作はホテルに巣くう死霊たちに、ダニーの父親(ジャック・ニコルソン)が狂気に陥り、家族をオノで殺そうとする作品だったが、本作はこのときの少年ダニーが40年後に、同じく大きなシャイニングをもった少女アブラと意思を通じ合うようになるんだけど、そのアブラの力を狙っているカルト集団が現れ、ダニーがそれに巻き込まれていくというストーリー。

 タイトルの「ドクター・スリープ」とは、ダニーがアルコール依存症から抜け出すため、病院で清掃の仕事を始めるんだけど、そこで死期の近い患者の手を握り、その能力で患者を安らかに黄泉の世界へ旅立たせるようになり、患者から先生と呼ばれるというところからきたもの。

 見終わった今思うことは、私はホラー映画は嫌いではないので、結構観てるんだけど、ここまで怖いというより不快感を激しく感じた作品はちょっとないかな

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 劇中では特別な力をシャイニングと呼んでいるが、超能力のようなこの力をもつ能力者の生気を吸って、吸血鬼のように何百年も生き延びている集団が、今回新たに現れるんだけど、続編と言いながら何かその集団と前作がリンクしない。
なので一番期待していた「シャイニング」の空気感が、全く違う殺伐としたものに変わっていた。

そしてその集団がターゲットにしているのは、シャイニングをもつ大人ではなく子供で、一人また一人とさらっていく。
しかもそのさらった子供を苦しめて殺すと、さらに上質な生気が吐き出されるということで、まさかの子供をナイフで刺しまくり拷問するという、ただただ不快指数が馬鹿上がりする描写に、たまらず観るのを一旦中断する。

キングの原作を読んでいないんで、そんな不愉快な描写を原作でも生々しく表現しているのか知らないが、あそこまで描写する必要があったのか驚きだった。

公開されるや、キングはあれだけキューブリックの「シャイニング」には批判的だったのに、本作については「原作者として誇らしい」なんて言っている。
さらにタランティーノや評論家からも絶賛だったが、興行的には上手くいかなかったようだ。
たぶんここら辺のあり得ない子供たちへの虐待描写が、影響してるんじゃないかなあ、なんて私は思ったが。

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さらにそのカルト集団が、アブラを狙っているという展開が、ひどい事態を予感させるため、続きを観たのは翌日になってしまった。

自己の欲望のために他人の命をなんのためらいも無く、当然のように奪う悪意の塊のような存在による恐怖。
「シャイニング」の周りの温度が急激に下がっていくような、心の芯まで凍えるような恐怖。
それとは全く違う、ローズがアブラを探しているシーンにもあった、地球を俯瞰で見下ろしている邪悪な意識を、身近に肌で感じさせ、観る者を追い込んでいく本作の恐怖は、凄まじい限りだ。

私は悪意の象徴となっているローズというキャラクターに、あり得ないほどの敵意を抱き、最後ひどい目に遭って欲しいとさえ願ってしまったことにも、不快感を感じてしまった。

 子供の頃のダニーに語りかけるディックが
「この世は飢えている、邪悪な連中はいつも腹を空かしている」
という台詞がある。
現実の世界ではその邪悪な連中は霊体ではなく、生きた生身の人間なのだと思うだけでに戦慄する。

ただそんな悪意に対抗する光の存在も示し、脈々と受け継がれるであろうその光の力に、わずかな救いは感じるが、あまりにも儚く不安は拭えない。

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「シャイニング」のような上質な恐怖を期待して観ると、肩透かしを食らってしまうかも知れないが、明確な悪意による恐怖が凄まじく、連続殺人鬼に立ち向かっていく超能力者っていうクライム・ホラーみたいな感じで観ると大丈夫かも(^^)

だいたい本作の印象的なシーンは、エレベーターの前に波のように吹き出す血しぶきや、双子の少女と、どれも「シャイニング」のもので、いかにキューブリックの作品が別格の傑作だったというのを再認識させられる。
しかも同じシーンを再現してるんだけど、空間の広がりとか、光の加減など空気感が微妙に違ってて、なにかTVの安い再現シーンを観てるみたいで、完璧に再現されてないところもまた惜しい。

結局あまりにも不快に感じるところが多々あり、何度も観れないので私的には評価がちょっと低くなっています。
っていうか、もう観ることは・・・ないかも(^^;)

ただ、映画とラストが違うと言われるキングの原作を、今猛烈に読んでみたいと思っている(^^)

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