映画『ある日どこかで』レビュー ★★★★

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 1972年5月のミルフィールド大学、友人たちから自身が書いた脚本の舞台化を祝福されているリチャード・コリアー(クリストファー・リーブ)。

そこに観客席の一番後ろの席に座っていた老婦人がゆっくりと近づいてくると、戸惑うリチャードの手に年代物の懐中時計を握らせ、「帰ってきて」と告げそのまま去って行った。

それから8年後のシカゴ、リチャードは脚本家として成功していたが、次の舞台の創作が進まず気分転換に旅に出ることにする。

あてもなく車で走り続けるリチャードは、途中「グランド・ホテル」という看板を見つけ乗り入れる。

リチャードはフロントで一泊の受付を済ますと、案内係のアーサーにこのホテルは8年前に通っていた大学のそばにあり、評判は聞いていたが来る機会が無く今回が初めてだと話す。

しばらくしてレストランへ入ろうとするが、40分後だといわれしかたなくホテルの中を歩いていると、”歴史ホール”という銘板が掛けられた部屋が目にとまる。

吸い込まれるようにその部屋に入ったリチャードは、壁やショウケースに飾られた古い調度品などを眺めていると、一番奥の壁に飾られ窓から入ってくる光に照らされた一人の若い女性の肖像写真に目を奪われる。

すぐにアーサーにその女性のことを聞いてみると、彼女はエリーズ・マッケナという一世を風靡した女優で、1912年にこのホテルの湖畔にある劇場で公演も行われたと答えた。

それ以来エリーズ・マッケナの肖像写真が頭から離れないリチャードは、町の図書館で彼女のことを調べることに。

そこである演劇の雑誌に掲載された、晩年のエリーズ・マッケナの写真を発見し驚く。
その写真に写っていたのは、なんと8年前のあの日、自分に懐中時計を手渡した老婦人だった。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:1980年/アメリカ/103分
  • 監督:ヤノット・シュワルツ
  • 脚本・原作:リチャード・マシスン
  • 音楽:ジョン・バリー
  • キャスト:クリストファー・リーブ/ジェーン・シーモア/クリストファー・プラマー/テレサ・ライト

レビュー

 スピルバーグの「激突」やウィル・スミス主演の「アイ・アム・レジェンド」に「ヘルハウス」など、数々のホラー映画の原作で知られるリチャード・マシスンの小説「Bid Time Return」を映画化した『ある日どこかで』をBlu-rayにて鑑賞。

 壁に掛けられた一人の女性の肖像写真に心を奪われ男が、1980年の現代から1912年にタイムトラベルをして会いに行くというSFラブストーリー。

 一体どうやってタイムスリップするのかと観ていると、なんとタイムマシンでもなく時間の裂け目に飛び込むでもなく、ただその時代のことを一身に願い、”恋の一念時をも通す”がごとく、自己催眠によってタイムトラベルをしてしまう。

まああり得ないけど、観ている方もこの主人公にどうか写真の女性に会って欲しいという願いがこもり、どんな手段だろうとまったく気にならない気分になっている。

 そして舞台がたどり着いた1912年になると、景色はセピア色に一変する。

印象派の絵画のように柔らかい光で映し出される景色や、19世紀のクラシカルな衣装を身につけた人たちの優雅さに、ジョン・バリーの哀愁が漂う優しい調べが静かに重なると、日々過激な映像に晒された目には、ただそれだけで心が穏やかになっていく。

さらに淡いセピアカラーの映像は、何か50年代・60年代のオードリーやマリリンの映画を観ているような懐かしさと、余分な物を一切研ぎ落とした今ではあり得ない透き通るような純愛に、年甲斐もなく胸をときめかしてしまった(^^;)

なんて素敵な映画なんだろう。

 この過去の女性に恋してしまうリチャードには、78年のリチャード・ドナー監督作「スーパーマン」の大ヒットで一躍人気俳優となったクリストファー・リーブがキャスティングされる。

ただ彼には「スーパーマン」の力強い印象があり、この恋に悶絶するような姿があまり想像できなかったのでどうかと思ったが、誠実さの溢れる表情で見事に悶絶してくれました(^^)

なにより95年に落馬事故により首から下が麻痺してしまったクリストファー・リーブを知っているので、作品の中で観る在りし日のクリストファー・リーブの姿は、ただそれだけで胸がいっぱいになってしまった。

 次に同じくリチャードに一目で恋におちてしまうエリーズ・マッケナを、上品さと美しさを兼ね備えた素晴らしい笑顔で魅せてくれたジェーン・シーモアがとにかく素敵だった。

73年の「007 死ぬのは奴らだ」のボンドガールに抜擢されたイギリスの女優さんなんだけど、本作以降はテレビの方で活躍していた。

【ここからエンディグまでネタバレしています】





 68年の時を超えて巡り会った二人はすぐに恋に落ち、幸せな一夜を共に過ごしたが、翌朝喜びの中将来について夢を語り合っていたとき、リチャードが上着のポケットに入っていた1979年発行のコインを見つけてしまう。

突然目の前が暗くなり、視界から遠ざかっていくエリーズ。

気がつくとそこは元いた時間と空間だった。
リチャードはもう一度1912年にタイムスリップしようと、何度も自己暗示を試みるが無駄だった。

この現状を受け入れられないリチャードは、食事もとらずホテルの部屋に閉じこもってしまい、案内人のアーサーとマネージャーが合鍵で部屋に入ってきたときには、すでに息絶える寸前だった。

いつしか自分の姿と、治療を施している医者やアーサーたちを俯瞰で眺めていたリチャードは光に包まれ、解き放たれた窓の奥に広がる真っ白な空間に立つ一人の女性のもとに近づいていた。

再会を果たしたリチャードとエリーズは見つめ合い、そして手を握り合った。

 はあ~、こんなに哀しくて切ないエンディングがあるんだ。

あまりの切なさにため息しか出なかったが、二人が天国で幸せになったんだと受け入れるしかないんだよねえ。

ただ胸が張り裂けるような切なさの中にも、素敵な麗しさと不思議な安らぎを感じさせてくれたお気に入りの作品になった。

 本作はクリストファー・リーブの出演した作品のなかで、「スーパーマン」を超えて一番愛される作品になったんじゃないかあ。

Blu-rayの特典映像について

 Blu-rayの特典映像として、”「ある日どこかで」撮影秘話”という当時を監督やスタッフ・キャストが振り返るメイキングが63分というボリュームで収録されていた。

 その中で原作・脚本のリチャード・マシスンが、家族旅行で訪れたヴァージニアの劇場に飾られた、M・アダムスという女優の写真を見て、その美しさに心を奪われ、時を超えて会いに行きたいと思ったその実体験をもとに書き上げた作品だと語っていた。

 また監督のヤノット・シュワルツは、撮影について
”過去は暖かく淡い感じのイメージで描き、それとは対照的に現在はざらついた感じに描いた”
と語る。

当時はフジフィルムがコダックの物と比べてソフトで淡い感じだったので、過去の場面ではフジを使い、現代はコダックのフィルムを使ったという裏話も(^^)

 そして驚いたことに公開時はまったくヒットせず、2週間で打ち切りになったとの話も。
ただその後ネットやビデオでその人気は徐々に広まり、熱烈なファンによりカルト映画となったとのこと。

 さらにこのメイキングには、既に事故で下半身不随になったクリストファー・リーブが、”ヒーローや冒険物以外の物静かで特別な作品を探していた”など、作品に思いを馳せる貴重なインタビューも収録されていました。

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Prime video

ある日どこかで (字幕版)
現在の生活を捨ててでも、真の愛と幸せが待つ過去の世界に行こうとした若き劇作家の物語。ある日、青年リチャード・コリアー(クリストファー・リーブ)の元に老婦人が現れ、古い金時計を手渡すと

DVD/Blu-ray

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