あらすじ
今日もデイビット・マン(デニス・ウィーヴァー)は商談に向かうために、ハイウェイを乗用車で走っていた。
約束の時間が気になったが、天気もよくラジオから流れるDJのくだらない話も心地いい。
途中で前をゆっくりと走る古びた大きなトラックが道をふさぐ。
対向車も何もない一本道、デイビットはそのトラックの横を追い越していく。
しばらくするとさっき追い抜いたはずのトラックが猛然と自分の車を追い越して、またノロノロと前を走る。
先を急いでいたので、またトラックを追い越そうとするが、今度はトラックが蛇行して前に行かせないように邪魔をする。
何度も追い越そうと試みるが、トラックは蛇行を続け一向に抜かせる気配がない。
デイビットはただならぬものを感じるが、不意にトラックの窓から腕が出て、先に行けと合図する。
やっと嫌がらせを止めたかと、対向車線に出たとたんに対向車がそこまで来ており危うく正面衝突になりかける。
デイビットはトラック運転手の悪意に恐怖する。
そしてその悪意はますますエスカレートしていく・・・。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:1972年/アメリカ/90分
- 監督:スティーブン・スピルバーグ
- 原作・脚本:リチャード・マシスン
- 製作:ジョージ・エクスタイン
- 音楽:ビリー・ゴールデンバーグ
- キャスト:デニス・ウィーヴァー/ジャクリーン・スコット/エディ・ファイアストーン/ルー・フリッゼル
レビュー
スティーブン・スピルバーグが弱冠25歳という若さで撮りあげた、今や伝説となったサスペンスの傑作『激突!』をBlu-rayにて鑑賞。
TVで何度も再放送されて、その度にその面白さに釘付けにされた。
Blu-rayにTV放送でカットされた場面でもあるかな、なんて思ったが、オリジナルも90分という短さで、全部観てた(笑)
商談のために、ハイウェイを走っていたデイビットは、前をのろのろと走っていた古びた大型トラックを追い越すが、そのことをきっかけにその大型トラックは執拗にデイビットの車につきまとい、次第にその行為はエスカレートしていく。
踏切で停車してる後ろから押してきたり、やり過ごしても先で停車して待っており、たまらずガソリンスタンドで警察に電話をかけてると、トラックは電話ボックスに突っ込んできた。
トラック運転手の明らかな殺意を感じたデイヴィットは、ある決心をする・・・。
ただ何気なく追い越したトラックが、ひたすら主人公の車を追い回すという、単純なストーリーなのだが、とにかく目が離せない。
バックミラーに映る猛スピードで接近するトラックに、サイドミラーにチラチラと見え隠れするトラックなど、いつしか観ている方もトラックが近くに来ていないか、画面の隅々を注意して見ている状態になっている。
その大型トラックが現れたときのモンスターのような威圧感と、けたたましくクラクションを鳴らし、エンジンをうならして猛然と追ってくるトラックに、不安と恐怖を感じていく。
ともすれば車が追いかけっこしているだけの単調なシーンを、複数のカメラによりあらゆるアングルから撮られる臨場感と、車両の下地面スレスレに設置したカメラが捉える、トラックが爆進するスピード感が凄まじい。
さらに観るものを最後まで離さない抜群の演出力は、既に映画監督を意識して本作を撮ったスピルバーグにとって、単なるヒットメーカーへの序章に過ぎなかったであろう。
車窓から覗く景色が嘘くさい合成を嫌い、セットではなくすべてをロケで撮影したにもかかわらず、本作はわずか13日で撮り終えている。
当初本作はTV放送用に製作されたものだったので74分と短かく、劇場公開するためには90分必要ということで、新たに踏切でのシーンを加えたとのこと。
ヨーロッパや日本で劇場公開された本作は一躍注目を浴び、そしてたった3年後の75年に、大ヒット作「ジョーズ」は公開される。
運転手の顔も現れず、どうして殺意まで抱くのかもまったく分からない恐怖。
何気ない日々の中で、理不尽に事件に巻き込まれる恐怖。
トラックはそんな狂った現代に蔓延する悪意の象徴のようであり、かえって昔観たときより底知れぬ恐怖を感じる。
ラストシーンを観てすぐにある作品が浮かんだ。
そう、スピルバーグの『ジョーズ』。
よほどこの本作のラストシーンというか、トラックが落ちていく迫力の映像が気に入ったのか、ジョーズのラストシーンがまったく一緒なのだ。
後でメイキングを観ると、スピルバーグ自身が見事にそのことを語っており、”私もやるね!”と自画自賛だったのであ~る(笑)
特典映像の撮影秘話について
Blu-rayの特典映像に、スピルバーグ監督による撮影秘話というのが35分ほど収録されていて、当時を振り返って語るスピルバーグの、若さ故の野心がたぎるエピソードが素敵でした(^^)
ただ一点、このBlu-rayが残念だったところがあった。
それは主人公デイビッド・マン演じるデニス・ウィーバーの吹き替えの声優さんが、録画して何度も見た「日曜洋画劇場」での穂積隆信さんではなかったこと。
次またBlu-rayが新たに発売されるときは、ぜひこちらの「日曜洋画劇場」版日本語吹き替え音声を収録して欲しい(^^)
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