映画『ジョジョ・ラビット』レビュー ★★★★☆

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あらすじ

 第二次世界大戦下のドイツ、今日からドイツ少年団(ユングフォルク)に入隊し、特別週末キャンプに参加する10歳の少年ジョジョ・ベッツラー(ローマン・グリフィン・デイヴィス)は、総統のためなら命も投げ出すと意気込むが、空想の親友のアドルフ(タイカ・ワイティティ)には自分は無理かもと不安を打ち明ける。

そんなジョジョをアドルフはおまえなら出来ると鼓舞すると、元気を取り戻したジョジョは家を飛び出し、街の中を意気揚々と駆け抜ける。

 草原に集まった少年少女たちの前に現れたキャプテン・クレンツェンド大尉(キャプテン・K)(サム・ロックウェル)は、合宿ではまず銃剣や手榴弾の使い方、塹壕盛り方、地図の解読にカムフラージュ、奇襲のかけ方、銃の撃ち方を訓練すると説明する。

それを聞いているジョジョに友だちのヨーキーも含め、集まった少年少女たちは期待に胸を躍らせ目を輝かせる。

早速始まった訓練では全員が無邪気に厳しい戦闘訓練をこなしていき、凶悪なユダヤ人について学び、そして本を次々と炎の中に投げ込んでいった。

二日目ジョジョたちは森の中に集められていた。

そこで若い教官が臆病な戦士はいらないと、勇気をためすことになり、まず最初から目を付けられていたジョジョがみんなの中から選ばれる。

ジョジョが前に出ると、若い教官はウサギをジョジョに手渡し、「クビをへし折って殺せ」と冷たく命令する。
そこにいる全員が「殺せ」と大合唱が起きるなか、ジョジョはウサギを逃がそうとウサギを離すが、すぐに捕まえた教官はウサギのクビを折ると、それを遠くへ投げ捨てた。

教官はジョジョを臆病者の”ジョジョ・ラビット”と罵り、全員が”ジョジョ・ラビット”の大合唱となると、ジョジョはその場から森の中へと逃げ出す。

 森の奥で一人泣いていたジョジョの元に現れたアドルフは、実はウサギは勇敢でずる賢く強いんだ、ウサギになれと励ます。
勇気を取り戻したジョジョは、アドルフと声を張り上げながら走り出す。

 キャプテン・Kが手榴弾の投てき訓練をしているところに、突然雄叫びを上げながら走ってくるジョジョ。
ジョジョはキャプテン・Kの投げる寸前の手榴弾をその手から奪うと、そのまま走り抜け勢いよく手榴弾を放り投げる。
しかし木に当たった手榴弾は跳ね返って、なんとジョジョの足下に落ちそのまま爆発してしまう。

 血だらけで病院へ運ばれるジョジョ。
薄れていく視界の中、駆けつけた母親を見るジョジョはそのまま意識を失う。

しばらくして回復したジョジョは足を引きづりながら鏡の前に立つと、顔に残った生々しい傷を指でなぞる。
そんなジョジョを優しく抱きしめる母ロージー(スカーレット・ヨハンソン)は、生きてるだけでママは十分だといい、リハビリのために一緒に外に出ようとジョジョを連れ出す。

 キャプテン・Kのいる軍の施設に一緒にやってきたロージーとジョジョ。
ロージーは出迎えたキャプテン・Kの股間を蹴り上げると、あんたのせいだと言い、自分の仕事中は息子に責任ある任務を与えてと言う。

その日からジョジョは一人スローガンのビラ配りと召集令状の配達を行うことになった・・・。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:2019年/アメリカ/108分
  • 監督・脚本:タイカ・ワイティティ
  • 音楽:マイケル・ジアッチーノ
  • 原作:クリスティン・ルーネンズ
  • キャスト:ローマン・グリフィン・デイヴィス/トーマシン・マッケンジー/タイカ・ワイティティ/スカーレット・ヨハンソン/サム・ロックウェル

レビュー

 妄信的にヒトラーを心酔する少年の目を通して、第二次世界大戦下のドイツを描いたタイカ・ワイティティ監督作『ジョジョ・ラビット』をBlu-rayにて鑑賞。

本作は第92回アカデミー賞では作品賞を含む6部門(作品、助演女優、脚色、編集、美術、衣装デザイン)にノミネートされ、うちアカデミー脚色賞を受賞している。

 第二次世界大戦下のドイツに暮らす10歳のジョジョには、彼だけに見える空想上の友だちアドルフがいた。

アドルフに励まされて青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿に参加したジョジョだったが、訓練中にウサギを殺すように命令されるも、出来なかったことで臆病者の”ジョジョ・ラビット”と全員から笑われてしまう。

そんなある日、自宅で物音を聞いたジョジョは、屋根裏に隠れていたユダヤ人の少女エルサと出会う。

 始まってすぐ明るいマーチのコーラスが流れ、ビートルズの「I Want to Hold Your Hand」に乗って熱狂する人々の前に現れたのは、ビートルズではなくアドルフ・ヒトラー。

集団ヒステリーのように民衆はヒトラーを崇拝し、ナチズムは民衆を魅了しホロコーストへと駆り立てる。

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 青少年たちにナチスのイデオロギーを刷り込む軍事訓練は、ボーイスカウトの活動のように明るく楽しく行われ、主人公の少年ジョジョもわくわくで参加する。

 まず戦時下のドラマだと勝手に暗いイメージと構えていたところで、意外な明るい作風に戸惑うことになる。
街並みは色彩鮮やかに輝き、行き交う民衆の服装もカラフルに描かれていく。

あくまでも少年の目を通して描かれる戦争映画ということで、目に映る世界はどこまでも明るくそして民衆たちは一見普段と変わらずに過ごしている。

そしてジョジョ自身が生み出した空想の友だちアドルフに、励まされながらも自然にヘイトをコメディ仕立てですり込まれていく。

ただ母親のロージーに制御出来ないほどに洗脳されたジョジョが見たそんな世界は、物語が進んで行くにつれ次第に影を落としていく。
中盤でジョジョは、ロージーと広場で絞首刑でつるされる人たちを目の当たりにし、厳しい現実を突きつけられる。

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さらに自宅の屋根裏に匿われていたユダヤ人の少女エルサに出会い、植え付けられた愛国心に次第に違和感を感じることで、物事を自分自身で考えていくようになる。

 悪意の塊の中に飲み込まれていく中で、個々の人間性が失われていく恐怖。
戦いの果てに残るものは虚しさしかなく、命というものの尊厳は集団ヒステリーに飲み込まれる。


ただ集団に飲み込まれることなく自分を見失わないものの中で、母親のように自分の意思で行動を起こすものと、大佐のようにその意思を隠して殉じる運命に身を委ねるものがいた。

こんな異常な状況でなければ、みんな普通の暮らしを送り、普通に誰とでも笑い合える人生を送っていただろうと思うだけで、胸がキリキリと痛み切なくなってしまった。

 実際に戦時下のドイツにおいて、当たり前のようにヘイトがすり込まれる社会では、理性や分別がまだ未熟な少年少女を洗脳し、少年兵として戦場に送り出すという悪魔の所業が実際に行われただけでなく、今この現代においてもなお実際の戦場で行われているという事実に恐怖する。

ただタイカ・ワイティティ監督はそんな闇のような世界のなかで、自由と平和への願いを胸に生きた人々の姿をあえてコメディ仕立てに描き出し、戦争という悲劇を際立たせる。

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 キャスティングについては、やはり主役のジョジョを演じたローマン・グリフィン・デイヴィスくんの、いじらしいまでのひ弱さの中でみせる、無垢な笑顔と透き通るような瞳に、目が離せなくなる。

そしてジョジョの母ロージーを演じるスカーレット・ヨハンソンは、芯の強さを宿す魅力的な女性像と、ジョジョへの愛を陽だまりのような笑顔と温かいで眼差しで包み込む優しさを最高の演技で表現し、アカデミー賞助演女優賞にもノミネートされた。

 さらに私が一番心を引かれた人物が、サム・ロックウェル演じるキャプテン・K。
ヘイトの虚しさを一番理解しつつもそれを隠し、国家によって妄想を植え付けられ集団ヒステリーとなって命を失っていく同志とともに、殉じていった生き様がたまらなく切ない。

 そしてジョジョが生み出した空想のアドルフを、自ら喜々として演じるタイカ・ワイティティ監督
ジョジョとの別れ際に「今までありがとう、これからは一人で生きていくんだぞ」的な、勇気づけるセリフを語らせることなく跡形もなく別れさせたところに、監督のヘイトに対する強いメッセージを感じた。

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 そして本作が凄いところは、最初に見たときより2回目に観たときの方が、最初の笑えるシーンも無性に切なく、戦争の悲惨さを噛みしめて見ていくことになり、涙が流れていた。

軽やかに新たな一歩を踏み出す爽やかなラストも、とっても可愛らしい大好きな作品です。

映像特典のメイキングについて

 Blu-rayの特典映像にメイキングというタイトルはなかったけど、キャスト・スタッフ紹介で監督や俳優たちそれぞれが語る、30分ほどのインタビューが収録されていた。

まず製作のカーシュー・ニールが、タイカ監督が見せたかったのは

”「子供の目で見る世界と、子供が大人から受ける影響だ」”
と語る。

またタイカ・ワイティティ監督は

”「母が教えてくれた原作で、少年が屋根裏で少女を見つけ母親に言えない事態になるという展開からいい映画になると思ったが、原作は劇的でコメディー要素は一切なかったため、自分のコメディスタイルを取り込もうと思い、空想を加えドラマと笑いが入り交じるものにしようと考えた」”
と語り、さらに

”「ギャグ的要素が物語の邪魔をしちゃいけない、一番のメッセージを消さないように気をつけた、ヘイトより愛をというメッセージだ」”
と語っていた。

さらにスカーレット・ヨハンソンやサム・ロックウェルが、脚本が秀逸だったと絶賛していた。

そして衣装デザイナーのマイエス・C・ルベオは、
”「ロージーは希望と命の象徴ですべての感情を色で表現する、服装で感情を隠さない」”
と、衣装のこだわりも語っていた。

 他には未公開シーンで収録されている、アドルフがもだえながら床を転げ回りながら去って行くなが~いシーンや、NGシーンで本物の笑顔で笑い崩れる俳優さんたちの姿などが見れる。

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Amazon.co.jp: ジョジョ・ラビット (字幕版)を観る | Prime Video
戦時下に生きる人々の姿を、スカーレット・ヨハンソンほか実力派キャストでユーモアを交えて描いた感動のヒューマン・エンターテイメント。

DVD/Blu-ray

Amazon.co.jp : ジョジョ・ラビット

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