映画『偉大なるマルグリット』レビュー　★★★

あらすじ

　1920年、パリ郊外のある貴族の邸宅で、サロン音楽会が開かれていた。

数々の歌声が披露され、集まった貴族たちは満足げに微笑む中、満を持して当主ジョルジュ・デュモン男爵の妻マルグリットが登場する。

さっそうと“夜の女王のアリア”を歌い始めたマルグリットだったが、そのあまりの音痴に、貴族たちは一様に薄笑いを浮かべ、あるものは顔をしかめる。

しかし歌い終わった後、儀礼的に巻き起こる拍手喝采に、マルグリットは満足げに微笑んでいた。

作品データ

レビュー

　“マダムの歌声には、本人だけが知らない〈秘密〉があった。”

　フランス国内で初登場第１位を記録し、100万人を超える観客動員を達成した、『偉大なるマルグリット』を観る。

　音痴だったがそのおおらかな歌声で大人気となったフローレンス・フォスター・ジェンキンスという、実在のアメリカのソプラノ歌手をモデルにしているという情報は知っていたので、完璧にコメディと思って観ていた。

ただ最初の方は、その破天荒な歌いっぷりに、クスクス笑いながら見ていたんだけど、マルグリットのひたむきな音楽への思い入れに、心無い好奇心の目にさらされるマルグリットが次第に切なくなってきた。

本人だけが音痴だという現実を知らないという、まるで裸の王様状態が観ていてつらくなってくる。
そんな観る者の心配をよそに、なんと大ホールで歌いたいと言い出してしまう始末。

マルグリットが頑なに歌い続ける意味。
物語が進んでいくうちに、それはマグリットが夫に向けて、本当の自分見てほしい、そしてそんな自分を愛してほしいというメッセージだったことが明かされていく。

ただ実在の“音痴の歌姫”をモデルにしてるんだから、こういう辛いドラマの後に、まあハッピーエンドがあるんだろうと、淡い期待を抱く。

ただねえ、さすがフランス映画、そんな安い希望も、見事に打ち砕かれるラストが待っている。
ええ～！これで終わり・・・。

観終った後に、どういう映画だったのかしばらく考えさせられる。
ここからはネタバレだが、

【ネタバレあり】

　まさかの自分の歌声が録音されたレコードを聴いて、とうとう真実をマルグリットは知ってしまうんだけど、そのあまりの衝撃に気を失い倒れてしまう。
そこへ夫が駆け寄り彼女を抱き上げるというシーンで、この映画はいきなり終わってしまう。
この後どうなったんだろう。

マルグリットはもしかしたら死んでしまったんじゃないだろうか。
音痴という真実と引き換えに、彼女が一番望んでいた夫の心を取り戻したいという願いが成就される。
マルグリットの一途な思いを想うほど胸が締め付けられる。
真実を知らなかった方が良かったんじゃないかとも思えない。
答えがないのだ。
いつしか頭の中で、マルグリットの天真爛漫な歌声が聞こえてくる・・・。

フランス映画って、やっぱり一筋縄では見れないわ。

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