映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』レビュー ★★★★☆ 

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あらすじ

 ハイウェイを一人歩いている老人。
すぐにパトカーがやってきて、その老人を保護する。

 年老いた父親ウディがまた警察に保護されたと連絡があり、息子のデヴィッドは急いで実家に駆けつける。
ウディに訳を聞くと、自分宛てにこんな手紙が来たと見せる。

“モンタナ州のウディ・グラント様 我々は貴殿に100万ドルをお支払いします”

デヴィッドその手紙は明らかにインチキであり、雑誌を購読させるためのものだと説得するが、頑固なウディは賞金を受け取りに、リンカーン州まで行くといって聞かない。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:2013年/アメリカ/115分
  • 監督:アレクサンダー・ペイン
  • 脚本:ボブ・ネルソン
  • 音楽:マーク・オートン
  • キャスト:ブルース・ダーン/ウィル・フォーテ/ジューン・スキッブ/ステイシー・キーチ

レビュー

 「アバウト・シュミット」や「サイドウェイ」など、監督に加え脚本まで手がけ傑作を輩出する、アレクサンダー・ペインの『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』をBlu-rayにて鑑賞する。

本作はアカデミー賞の作品・監督・主演男優・助演女優賞にノミネートされるなど、この年の数多くの映画賞にノミネートまたは受賞した素晴らしい作品です。

 大酒飲みで頑固で、最近ちょっと忘れっぽくなっている父親ウディのもとに送られてきた、宝くじ当選通知の手紙。
賞金100万ドルを受け取りに、歩いてでも行くときかない父親(ブルース・ダーン)に、次男のデヴィッド(ウィル・フォーテ)は詐欺だと知りながらも車に乗せ、一緒にモンタナ州から遠くリンカーン州に向かって走るというロードムービー。

 テレビでキャスターまで務める兄と違い、AV機器店でオーディオの販売員をしている弟にもっとハメを外し自由に生きて欲しいと不満を持つ父親。

子供の時から酒に溺れる姿しか記憶になく、日々母親のケイト(ジューン・スキッブ)に口うるさく叱られる父親を哀れに思っている息子。

父親と息子は、お互いに相手がだめな人生を送っていると思い込んでいる。

観ている間、ずっと自身の父親との距離や、若かりし頃の父親の姿を想像し、そして自身の人生をも振り返ることになり、この親子のギクシャクした関係が面白いんだけど、たまらなく切ない気持ちにも。

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 そして父親と距離をとっていたデヴィッドは、旅の途中で訪れた父親の故郷ネブラスカの町で、父親の意外な一面を知ることになる。

昔から変わらず無口だったが、人を信じやすく人に頼まれると断れない善人の姿を目の当たりにして、デヴィッドは次第に不器用に生きてきたこの父親に、深い慈しみの眼差しを向けるようになっていく。

 台詞を極力省き、その場その場で顔の表情や微妙な空気感を作ることで、心の機微を表現する絶妙な演出が素晴らしい。

デヴィットが運転する車の隣の座席で、口を開けて眠っている父親を静かに見つめるシーンがあるんだけど、黙っていてもデヴィッドの気持ちが手に取るように分かるんだよねえ。
素敵なシーンです。

そして父親の兄貴の家を訪ねたときの、デヴィッドがリンビングのソファーに座る無表情の伯父と、いかにもたちが悪そうな息子二人の中に入って行くときの、あの気まずさといったら(笑)

さらにその故郷では、100万ドルが手に入ったと言うことで、わかりやすく欲望をむき出しに近づいてくる輩たち。
そしてそんな連中に、一喝をかます母ケイトのすがすがしいほどの罵声。
最高のシーンで、思わず拍手を送ってた(爆)

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感じの悪い人や人に迷惑をかける人を、自分には関係なく端から見ることの可笑しさは、背徳感を感じながらも、クスクスと笑ってしまう(^^;)

所々に盛り込んでくる人間の愚かさに、アレクサンダー・ペイン監督の笑いのツボというか、独特の皮肉が効いてくる。
ラストでデヴィッドが下す決断も秀逸です。
最後に尊厳を取り戻す父親を、息子と同じように優しく見つめている自分がいる。

観終わった後は、改めて自身の親子関係について想いを巡らし、見えない絆がたまらなくめんどくさく、そしてたまらなく愛おしくなっている。
素敵な映画でした。

特典映像のメイキングについて

 Blu-rayの特典映像に収録されているメイキングで、アレクサンダー・ペイン監督が、とくにこだわったという撮影前のキャスティングとロケハンの話が入っていた。

ウディ役は当初ポール・ニューマンを考えていたが、監督が脚本を読んでウディ役にすぐに頭に浮かんだのがブルース・ダーンだったと語っていた。

ブルース・ダーンは監督も役も最高だなんて初めてだったと語り、ウィル・フォーテはこれまでの必ず全裸になるような役と違って、本作では一度も服を脱がなくて良かった、なんて嬉しそうに笑っていた。

白黒フィルムによる撮影については、ペイン監督は脚本を読んだときから、脚本が素朴で限りなく白黒向きだった語っている。
白黒の町並みや景色は風情をたたえ、人の表情や感情までもが叙情的に映し出される。

とにかくキャストからスタッフに至るまで、総ての人が監督を絶賛していてた。

ああ~、自分はやっぱり派手な作品も好きだが、こういう普通の日常の中でくり広げられる、何気ない出来事を静かに優しく切り取るハートフルな作品に、無性に心惹かれるんだと確信する。

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