あらすじ
医師のルイス・クリード(デイル・ミッドキフ)は、一家でシカゴからメイン州の田舎町にある新しい家に引っ越してくる。
車から降りた娘のエリーはすぐに駆け出し、家の横にある大きな木につるされたタイヤに飛び乗ると、妻のレイチェル(デニーズ・クロスビー)はチャイルドシートに座っていた幼い息子のゲイジ(マイコ・ヒューズ)を抱き上げ、ルイスと笑顔を交わす。
そんな時エリーはタイヤを揺らしながら、家から森の中につながる小道が目に入り、「道があるよ」と叫ぶ。
大きくタイヤを揺らしているエリーに、レイチェルが気をつけるように言ったとき、乗っていたタイヤのロープが突然切れ、エリーは地面に落ちてしまう。
激しく泣き声を上げるエリーのもとにルイスとレイチェルは慌てて駆け寄るが、二人が目を離している間に、ゲイジが家の前の道路の方へよちよちと歩いて行く。
そこに猛スピードでクラクションを鳴らして走ってくるトラックに気がついたルイスとレイチェルは、慌てて駆け出すが、不意に現れた老人が間一髪でゲイジを道路から抱き上げ、ギリギリで回避する。
老人はこの道路は頻繁にトラックが走っているから危ないと忠告すると、自分は道路の向かいの家に住んでいるジャド・グランドール(フレッド・グウィン)だと笑う。
そこでレイチェルはジャドに、家の裏の道はどこへ続くのかと聞いてみたが、ジャドは「ちょっと曰くがあり、今度案内するので話はその時に」と言葉を濁す。
その夜、ルイスは外に出ると、テラスでビールを飲んでいるジャドをみつけ、家を訪ねる。
ジャドはルイスにビールを手渡すと、例の道について話し始める。
「あの道は、道路とトラックのせいで出来た」といい、あの道の先にはペットの墓があり、この道路で死んだたくさんの犬や猫が埋められていると言った。
ルイスが学校に初出勤の日、騒然とした中トラックにひかれたヴィクター・パスコー(ブラッド・グリーンクイスト)という青年が担架で運び込まれてくるが、ルイスの懸命の治療も空しく息をひきとってしまう。
ルイスは頭から血を流しながらベッドに横たわって動かないパスコーのまぶたを閉じると、突然パスコーは目を見開き起き上がってルイスの肩に手をかけ、
「男の心はまるで岩のようにかたいものだ、ルイス」と語りかけてきた。
自分の名前を知っていることに驚くルイスに、パスコーはこれからもまた出てくるといい残すと、倒れそのまま動かなくなった。
その夜、レイチェルと一緒にベッドに寝ていたルイスは大きな物音に目を覚ますと、部屋のドアに頭が血だらけになったままのパスコーが立っているのに気がつく。
パスコーは「一緒に行くところがあるんだ」といって外へと歩いて行く。
戸惑いながらも「なんで来たんだ」というルイスに、パスコーは「あんたを助けたい」と答える。
月明かりの中、霧に包まれた小道を一緒に歩いて行くパスコーとルイス。
墓地へ到着すると、パスコーはその先の森の中を指し、
「この先の土地へは絶対に入ってはいけない、この境界の向こうの土地は腐っている」
と忠告して消える。
そんなある日、妻レイチェルと子供たちが感謝祭で帰省している間に、エリーがかわいがっていた猫のチャーチがトラックにはねられて死んでしまう・・・。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:1989年/アメリカ/103分
- 監督:メアリー・ランバート
- 脚本・原作:スティーブン・キング
- 音楽:エリオット・ゴールデンサール
- キャスト:デイル・ミッドキフ/フレッド・グウィン/デニース・クロスビー/ブラッド・グリーンクイスト/マイコ・ヒューズ
レビュー
”ホラーの帝王”と呼ばれるスティーブン・キングが、自ら「あまりの恐ろしさに発表を見合わせている」と噂された同名小説を映画化した『ペット・セメタリー』をBlu-rayにて鑑賞。
シカゴから田舎町に一家で引っ越してきた医師のルイス・クリードは、新しい生活を和やかに過ごしていたが、娘の大事な猫がトラックにはねられて死んだことで、一家の平和は崩れ始める。
ルイスは隣人の老人ジャドから聞いた山奥にあるミクマク族の墓地に猫の死体を埋めると、翌朝猫は生き返って家に戻ってきたが、生きていた頃の面影はなく悪臭を放ち凶暴化していた。
そんなある日、ルイスの目の前でゲイジが大型トラックにはねられて亡くなってしまい、悲しみを抑えきれないルイスは、ゲイジをあの墓地に埋葬し生き返らせようとするが・・・。
オープニングからただ森の中に作られたいくつものペットの墓を静かに映し出していくという、なんとも不気味なシーンに早くも胸のざわつきが止まらない。
そして一見穏やかに始まったクリード家の新生活は、いきなり家のすぐ横を猛スピードで走り抜ける大型トラックや、ルイスが初出勤の日にいきなり血みどろの青年が担ぎ込まれるなど、ジワジワと不穏な空気に包まれていく。
そんな時娘がかわいがっていた猫が大型トラックにひき殺され、隣人の老人の余計なお節介というレベルを超えた無謀な企てにより猫は生き返るが、そのことをきっかけに恐怖の幕が上がる。
ここから、なぜか家政婦が胃痛が我慢できないと自殺してしまったり、妻レイチェルが未だにトラウマに苦しむ、幼いときに亡くなった不遇な姉の境遇などの悲痛なエピソードに続き、遂に息子のゲイジに悲劇が訪れる。
スティーブン・キングにより描かれる、愛するものを突然失ったものの深い悲しみと喪失感は、家族への愛深き故に、決しておかしてはいけない自然の摂理に逆らい、命をもてあそぶという人間の業の深さを際立たせる。
積み重ねられるこれら様々なシチュエーションは、クリード家をまるで悪魔に魅入られたように、ルイスを避けられない破滅への道へと誘い、観ている方はもはや幽霊のパスコーと一緒に見届けるしかないというもどかしさがのしかかる。
こういう作品の主人公って、「止めろ、止めろ!」とか「行くな、行くな!」っていう方を選択するのは分ってる。
分ってるが故に、そこへたどり着いた先に向かえる衝撃の結末は、恐怖を超えて胸を締め付けるほどの切なさに包まれ、報われない愛にいいようのない虚しさを味わわされる。
キャスティングについては、知ってる俳優さんはひとりもいなかったが、それがかえって一家団欒のシーンでリアリティを与え、本作で一番の肝でもある家族愛を上手く演出できてたと思う。
特にゲイジを演じるマイコ・ヒューズくんの愛らしさは、こんな映画に出しちゃいけないんじゃないかとさえ思わせた(笑)
当時本作は劇場で観たが、このラストの衝撃が一番印象に残っているが、それと同じくらいに印象に残っているのが、おぞましい程の特殊メイク。
最初の方でトラックにひかれたパスコーが担架で運び込まれるんだけど、頭が崩れ肉片がむき出しになった生身感と、そこからドロドロと流れ落ちる血のグロさといったら(^^;)
今回Blu-rayで再見することになったが、今観てもCGとは違う生々しさにぞっとする。
恐怖と人生の悲哀を融合させた、意外な趣さえも感じさせるホラー映画です。
なお、本作は2019年にリメイクされていて、ひょっとしてとAmazonプライムを調べてみたら、なんと無料で配信されていたので、続けて観てしまった(^^;)
全体的にトーンがさらに暗く、オリジナルからかなり変更されていた後半は、ただ家族同士が殺し合ってるだけというなんとも微妙な出来に、ちょっとガッカリしてしまった。
Amazonで『ペット・セメタリー』を観る
・Prime video
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