映画『アマンダと僕』レビュー ★★★☆

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 学校の終業ベルが鳴り、たくさんの子供たちが沿道に溢れ出てくる。
その中にいた少女アマンダ(イゾール・ミュルトリエ)は、時間になっても迎えが来ず、親たちと連れ立って家に帰って行く友人たちを見送っていた。

迎えに来るはずの母親の弟ダヴィッド(ヴァンサン・ラコスト)は、雑用として働いているアパートの入居者が約束の時間より30分ほど遅れてやってきたため、アマンダの元へ行けずにいた。
急いで学校まで走っていくダヴィッド。

 アマンダとダヴィッドが家に帰ると、すぐに小学校から留守電が何件も入ったと慌てて母サンドリーヌも帰ってきた。
7歳の子を放置して仕事かと、サンドリーヌからなじられたダヴィッドは怒って出て行く。
二人の関係を心配するアマンダ。

 サンドリーヌに宿題をみてもらう間、アマンダはテーブルの上に置いたあった「エルヴィスは建物を出た」という本について、どういう意味か尋ねる。

サンドリーヌは、昔”エルヴィス・プレスリー”というアメリカの人気歌手がいて、彼のコンサートが終わっても帰らないファンに、困った係の人が舞台のマイクで”エルヴィスは建物を出ました”と、ファンに向けていった言葉が有名になり、”望みはない””おしまい”っていう表現で使われるようになったと説明する。

 一方アパートの前でまたスマホを手に入居者を待ってるダヴィッドへ、名前を呼ぶ女性が現れ、ダヴィッドは「君がレナ?」と聞く。
レナ(ステイシー・マーティン)が持っていた大きなトランクを引き、部屋まで案内したダヴィッドは、浴槽のシャワーの切替レバーが逆になってるので気をつけるようにといい、蛇口をひねると自分の頭に降ってきたシャワーの水を浴びてしまう。
その様子を見て、微笑むレナ。

 翌日サンドリーヌが英語教師として働く学校へやってきたダヴィッドは、先日の迎えが遅れたことを誤り、ついでに賃貸契約書を英語に訳して欲しいと頼む。
「謝罪はうわべだけね」と笑うサンドリーヌ。

 ある朝、公演の木を伐採していたダヴィッドに、ジョギングをしていたレナが声を掛けてくる。
走り去っていくレナに、ダヴィッドは思い切ってスマホでレナを食事に誘うメッセージを送ると、遠くでメッセージを見たレナは「いいわよ」と返事をする。

 それから数日後、ダヴィッドはレナと一緒にサンドリーヌと新しい恋人の4人で、ピクニックへ行く約束をするが、当日ダヴィッドは電車が遅れたため、レナに先に行ってと連絡する。

急いで自転車を漕ぎ約束の公園に到着したダビッドは、恐ろしい光景を目の当たりにしてしまう。
そこには血だらけで倒れた人や、そんな人たちを必死で介抱している人たちが大勢いた。
ダヴィッドは呆然と立ち尽くし、その視線の先にサンドリーヌが倒れている姿を発見する。

一夜が明け、サンドリーヌの家で泣き明かしたダヴィッドは、安らかに眠っているアマンダが起きてくるのを待っていた。
しばらくして起きてきたアマンダは、ママがいないことを気に掛けるが、ちょっと散歩に出ようとアマンダを誘うダヴィッド。

近くの公園にやってきた二人はベンチに座ると、ダヴィッドはアマンダの手を握り、昨日銃を持った男たちがピクニックや散歩に来ていた人たちを撃ち、その中にママもいてもう二度と会えないことを告げる・・・。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:2018年/フランス/107分
  • 監督・脚本:ミカエル・アース
  • キャスト:ヴァンサン・ラコスト/イゾール・ミュルトリエ/ステイシー・マーティン/オフェリア・コルブ/マリアンヌ・バスレー/グレタ・スカッキ

レビュー

 第75回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門マジック・ランタン賞、第31回東京国際映画祭 東京グランプリ/最優秀脚本賞、第44回セザール賞 主演男優賞/オリジナル音楽賞ノミネートなど、世界中で絶賛されたミカエル・アース監督作『アマンダと僕』をBlu-rayにて鑑賞。

 ある日パリで起こったテロ事件により姉を失ってしまった青年ダヴィッドとその姉の娘アマンダは、突然の悲劇を現実として受け止められず、涙と苦悩の日々をおっくっていた。
ダヴィッドが抱える一番の問題は、親を失ってしまった姪のアマンダの親権をどうするかだった。

ぎこちなく始まった二人の共同生活は、最初は母親の死をまだ受け入れられないアマンダの反発もありギクシャクとし、ダビッドも悲しみが癒えないうちアマンダにどう接したらいいか戸惑い、自信を無くし追い込まれていくが、少しずつお互いの心を通わせていくなかで、二人は次第に希望の光を見いだしていく―――。

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 まず、印象に残っているのはパリの街並みを、楽しそうに自転車をこいで走っていくダヴィッドとサンドリーヌ、そしてダヴィッドとアマンダのシーン。

まあこんなに車が行き交う道路のど真ん中を悠々と自転車をこいでるこの人たちに、若干の違和感は感じてしまったが、ミカエル・アース監督のこだわりのロケシーンで映し出される、優しい光に包まれたパリの街並みや自然、そして風にそよぐ木々のざわめきが、とにかく優しくそして美しく描かれていた。

そんな美しいパリの風景は、主人公たちに降りかかる悲劇や苦悩で、観ているこちらも辛くなっていく心情を穏やかに和らげていく。

 いつまでも悲しみの淵から抜け出せずにいた二人は、それでも現実を受け入れ、新しい第一歩を踏み出そうとする。
そんな二人の姿は、観る前は激しく感情を揺さぶられ涙が溢れるような作品なんどろうという先入観をかわし、とってつけたような奇跡もなく、ただ穏やかな日常をリアルに押さえた演出により、より深い感動を呼ぶ。

さらに2015年、実際にパリで同時多発テロが起き130人もの犠牲者を出した事件により、深く傷ついたフランスの人たちに向けた希望という名の光を感じさせ、監督の復興への力強いメッセージを受け止める。

キャスティングについては、やはり最近のフランス映画ということで、知ってる人は誰ひとりいなかった(^^;)

それでもあえて感情を抑えた主演ヴァンサン・ラコストのリアルな演技は、心の葛藤を繊細に演じ分け、絶妙な瑞々しさで共感を呼ぶ。

そして姪のアマンダ役、イゾール・ミュルトリエの初めての演技とは思えない屈託のなさや、子供らしい幼さと脆さは、あくまでも自然体で観るものにストレートに感情をぶつけてくる。
素晴らしい。

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 また、レナ役のステイシー・マーティンの可憐さに大注目だったんだけど、他にどんな作品に出演しているのか調べてみると、これが結構衝撃でした(^^;)
まずオーディションにより出演を獲得したデビュー作が、「奇跡の海」や「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のラース・フォン・トリアー監督の「ニンフォマニアック」という作品で、物語は色情狂の女性の話らしく、作品は観てはないがネットで調べて出てくる画像や動画を観ただけで引いてしまった(^^;)

作中で唐突に流れたある生々しいワンシーンに違和感を感じたんだけど、そういうことかと納得すると同時に、他の作品にも観られるフランスの女優さんの裸に対する潔さに感心してしまう(^^;)

 幸せが舞い降りてくる寸前の兆しで終わるあっさりとしたラストも、あとからじわじわと染みてくる、素敵な作品でした。

Blu-rayの特典映像について

Blu-rayの特典映像として、ミカエル・アース監督と主演のヴァンサン・ラコストの、来日インタビューと舞台挨拶の映像が収録されていて、二人がテロ事件のことや印象に残ったシーンについて答えていた。

監督はテロ事件の翌日の、ほとんど人がいない街をみて愕然とし

”そういうときにわき起こる特別な感情を映像にしたかった”

と語る。
また撮影でのこだわりについて、光の美しさを表現するために16ミリフィルムで撮影をしたとのこと。

ヴァンサン・ラコストは、印象に残ってるシーンについて、駅のシーンをあげ、カメラを遠く離れたところに置くことで、周りの人たちには撮影だと気づかれない中で、自分は泣きの演技をし現実化と錯覚する瞬間があり、

”彼らの現実と僕らの虚構が同じ場所で存在していたんだ”

と語る。

2019年の初日舞台挨拶での様子も収録されていたんだけど、日本が大好きだと語るヴァンサン・ラコストが、後ろのスクリーンに寄っかかりすぎて、スタッフに注意され体を起こすとスクリーンがちょっとへこんでた、なんてシーンもあり、思わず笑ってしまった。

あと予告編もあり、その中でハリウッド・リポーターの

”人間が立ち直る力を、感動的に祝福している”

という文字現れ、この短い言葉の中に詰まったワードセンスの素晴らしさに、自分のレビューのつたなさを実感させられ、ちょっとへこんでしまう(^^;)

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