映画『セラヴィ!』レビュー ★★★★★

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 結婚式に出す料理の見積もりが高いやテーブルの花もいらないなど、格式あるホテルでの挙式ではあり得ない値引きを執拗に要求してくるカップルに、ついマックス(ジャン=ピエール・バクリ)は短気を起こしてしまい、逃げるように立ち去ってしまったふたりを見つめてため息をつく。

ただこの日は大きな結婚式が控えており、現場のことも気がかりだったマックスは急いで車で現地へ向かうが、途中義弟のジュリアン(ヴァンサン・マケーニュ)を拾って乗せると、そのだらしのない服装に着替えもせず仕事場へ向かうのかと呆れる。

 今回の結婚式場の舞台となる17世紀建造の古城に到着したマックスは、早速自分の代理として現場を任せていたアデル(アイ・アイダラ)が、急きょ代理で来てくれることになったバンドメンバーのジェームスと、荷物の搬入で激しく罵り合う声を聞く。

マックスはふたりの間に割って入ると素早く指示を出し、アデルに「何度言えば分るんだ、現場をかき乱すな」と叱責する。

 30年間ウェディングプランナーとして、数々の結婚式をプロデュースしてきたマックス。
この大がかりな結婚式も入念に準備をしてきたつもりだったが、次々とアクシデントが重なっていく・・・。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:2017年/フランス/117分
  • 監督・脚本:エリック・トレダノ/オリヴィエ・ナカシュ
  • 音楽:アヴィシャイ・コーエン
  • キャスト:ジャン=ピエール・バクリ/ジャン=ポール・ルーヴ/ジル・ルルーシュ/ヴァンサン・マケーニュ/アイ・アイダラ

レビュー

 本国フランスで初週観客動員数1位を記録すると、公開1ヶ月で興行収入25億円を突破する大ヒットを記録した、エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ監督作『セラヴィ!』をDVDにて鑑賞。

 物語はベテランのウェディング・プランナーのマックスがプロデュースする、ある一夜のトラブル続出の結婚式で繰り広げられる人間ドラマ。

 まず始まってそうそう、だらしない部屋着で仕事場に向かおうとする妻の弟のジュリアンが登場し、続いて現場ではマックスの代理として指名していたアデルがバンドメンバーにキレて喚き散らしてるし、マックスの友人でもあるカメラマンのギイは写真も撮らずにひたすらオードブルをつまみ食いする始末。

さらに新郎がシックで上品にという希望とは逆の演出をするバンドのボーカル兼司会のジェームスと、だいたい何をやるのかすらも理解していない未経験者のサミーなど、とにかくマックスの足を引っ張るだろうものたちが次々と揃っていく様に、これはとんでもない結婚式になるだろう予感をかき立てられる。

そしてこれは絶対に面白くなるだろうと確信する(^^)

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 ただしばらくするとこのトラブルメーカーたちが、こういう人っているよなあという身近に感じる強いクセを、さらにちょっとずつ増したキャラクターになっているため、あまりに社会人としてあり得ない姿にだんだん腹が立ってくる(笑)

まあここのフリが大きいほど最後が・・・、なんて分ってるんだけどね。

 そんなスタッフたちをひとつにまとめて、なんとかこの難局を乗り越えようと孤軍奮闘するマックスの姿を見て、すぐに思い浮かんできたのが、デール・カーネギーの「人を動かす」という本だった。

職場や家庭における人間関係を良好にするノウハウが詰め込まれたこの本を題材に描かれたように、次々とマックスが直面する課題と対応が、まるで組織のメタファーのようで実に面白い。

まさしくデール・カーネギーの「人を動かす」の中で書かれている、人は自尊心の塊であり、誰かに強要されて動くものではなく、人は自ら考えることで意欲をかき立てられ、そこで初めて自分の意思で動くもの。

そして誰もが自分は何も間違っていないと思っているもの。

そんなことを考えさせてくれる、社会人にはぜひ観て欲しい作品・・・。
なあんて、見終わって感じたことはそんなことじゃなかった(笑)

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それは仲間と全員で何かを成し遂げることの達成感と、結婚式という幸せの象徴ともいえる一大イベントで感じる幸福感を、観ている側も劇中の人たちと共に感じていたこと。

すべてのキャラクターに等しく注がれる監督の優しい眼差しは、登場するすべての人物を映画の中で生き生きと息づかせ、いつしかそんな登場人物たちと自分も一緒に笑い一緒に歓び合い、ラストでは素晴らしい幸せ気分に満たされていた。

こんな素敵な作品があったんですねえ。

見終わった後すぐにパンフレットをネットで注文してしまった(^^)

 キャストについては、勝手ばかりするスタッフたちに振り回されるマックスを、私の大好きな作品「家族の気分」のジャン=ピエール・バクリが演じる。

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古典劇などで舞台にも立っていたバクリの卓越した演技は、マックスの長年ウェディング・プランナーとして培ったキャリアから覗かせる自信と苛立ちを、より切なくも可笑しいものに変える。

あとバクリ以外は見たことない俳優さんばかりだったが、芸達者な個性派揃いで素晴らしいキャスティングだった。

【ここからネタバレあり】






 式の最後に新郎のピエールが大きな風船を付けて空に舞い上がるというサプライズの余興が始まるが、あろうことか下でロープを掴んでいたアデルとジェームスが、見つめ合ってキスしたことからロープから手を離していまい、どこかに飛んでいってしまう。
このシーン大好き!

さらにタイミングを見て花火を打ち上げる方も、操作が分らずサミーが適当にスイッチを連打したことで、一斉に花火が暴発し、出席者が悲鳴を上げて逃げ惑い停電までしてしまうという大失態を犯してしまう。

あまりの失敗続きで、遂にマックスはスタッフたちに抱いていた不満を爆発させてしまい、後は自分たちで考えてなんとかしろと言い捨て、現場から離れてしまう。

 ただ図らずもマックスが投げ出したことで、残された者それぞれが自分に責任を持ち、自分で工夫することをそれぞれ考えることになり、大逆転の素晴らしい成果を生み出す。
とっても素敵なシーンです。

そしてマックス自身も、己の考えに固執していたことに気づくと同時に、ウェディング・プランナーとして幸せに立ち会える歓びを改めて噛みしめる。

終わり良ければすべてよし。
見終わった後、誰もが幸せな気分に浸れる、素敵なフレンチコメディだった。

DVDの特典映像について

 DVDの特典映像として、監督とキャストのインタビューが、合わせて約8分ほどとちょっと短いけど収録されています。

その中で、エリック・トレダノ監督が
”零細企業の社長が経験する一夜を通して、彼の欠点や人間関係を描きたかった”
と語っていた。

また”笑い転げて欲しい”というオリヴィエ・ナカシュ監督は
”裏のテーマに気づけばなお楽しい”
なんて言い、それが何だったんだろうかと今猛烈に気になっている(^^;)

答えはいつ配達されるのか分らないパンフレットに載っているのだろうか・・・。

あとは予告編2本です。

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