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映画『バジュランギおじさんと、小さな迷子』レビュー ★★★★

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 パキスタンの小さな村に住む6歳の少女シャヒーダは、幼い頃から声を出すことができず、崖から落ちそうになるという危険な目に遭っていても、誰も気づくことができなかった。

長老のデリーのニザームッディーン廟で祈れば必ず願いが叶うという言葉から、村中で費用を出し合いシャヒーダは母親と一緒に、遠くインドのイスラム寺院に向かった。

 そして無事願掛けも終わり電車で帰っている途中、あと少しで国境を越えるところで、線路の修理により電車が止まってしまう。

そのまま真夜中となり、母親も含め乗客のすべてが眠っているなか、目を覚ましたシャヒーダが窓の外を見ていると、子ヤギが穴にはまって動けなくなっているのを見つける。

すぐに電車から降りたシャヒーダは、穴から子ヤギを助け出すがその瞬間、電車が動き出してしまい、一人置き去りに。

走り去っていく電車を呆然とみていたシャヒーダだったが、しばらくして今度は貨物列車が目の前に止まる。
慌てて乗り込んだシャヒーダだったが、貨物列車は無情にも反対方向へと走り出した。

 いつしか眠っていたシャヒーダが目を覚ますと、そこはインドの街クルクシェートラで、大勢の人が賑わう祭りのまっただ中だった。

シャヒーダが群衆の流れに任せて歩いていくと、大勢を巻き込んで先頭で踊っている男パワンの姿が目にとまる。

パワンもひとり自分を見つめている少女に気がつき、親とはぐれたと思い一緒に警察へ向かうが、時間がかかると言うことで、しばらく預かることになる。

ただ一緒に暮らしているうちに、彼女がインドと対立するパキスタン人だと知ったパワンは、それでも命がけで国境を越えて、シャヒーダを故郷へ帰そうとするが・・・。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:2015年/インド/159分
  • 監督:カビール・カーン
  • 脚本:V・ヴィジャエーンドラ・プラサード/カビール・カーン/パルヴィーズ・シャイク
  • 音楽:プリータム
  • 原案:V・ヴィジャエーンドラ・プラサード
  • キャスト:サルマン・カーン/ハルシャーリー・マルホートラ/ナワーズッディーン・シッディーキー/カリーナ・カプール

レビュー

 歴代インド映画において、「ダンガル きっとつよくなる」「バーフバリ 王の凱旋」に次ぐ世界興行収入第3位と大ヒットを記録した『バジュランギおじさんと、小さな迷子』をBlu-rayにて鑑賞。

全く知らなかった作品だったが、AmazonでBlu-rayを探しているとき、評価が★5つの満点という信じられない作品を発見し、それが本作だった。

 もうこれだけ大ヒットした作品なんで、最後にシャヒーダが母親に会えるかとか、出せなかった声がどうなるかは、ハッピーエンドを大体予想できてしまうので、そんな予定調和で進んだ先に待つ感動はどうなるかというと、・・・期待以上の素晴らしいものだった。

こんなに涙がボロボロと流れたのも久しぶりだったなあ。

 主人公パワンの登場シーンから、マサラムービーのお約束、大勢のダンスシーンで「これこれ!」と思いながら気分も上がったが、このパワンという男の性格が、話をより複雑にしていく。

ハヌマーン神に心酔するあまり、肝心なところで嘘がつけず、馬鹿正直にまっすぐに突き進むせいで、インドのスパイと思われ、国境の警備隊に捕まったり警察に追われたり、ピンチの連続でしばらくハラハラとさせられる(笑)

でも神の導きのように、パワンの誠実さに心を動かされる人たちが現れ、そんな危機も乗り越えていく。

都合がよすぎるという見方もあるが、私は自分がこうあって欲しいと願っている方へ、事態が展開していくことが実に心地よかった。

 迷子になった少女を母親の元へ届けたい一心で、インドとパキスタン、ヒンドゥー教とイスラム教という対立を超え、ただ人間の持つ誠の心のままに行動を起こすパワン。

そんなパワンのシャヒーダに注ぐ無償の愛により、心の奥に誰もが持っているはずの慈愛の心に突き動かされる人たち。

主人公のパワンを演じるサルマン・カーンは、私は初めて見る俳優だったが、20代から主役を張るというインドでは既に大スターで、もともと肉体派のアクション俳優だったんだけど、本作でイメージを一新し大絶賛だったとのこと。

ただ私はこのとってつけたような”心にラーマ心を宿す者に不可能はない”という単純なキャラクターのパワンより、この旅の途中で出会うパキスタン人記者のチャンド・ナワーブや、モスクで出会った宗教学者に、バスの車掌や上司に逆らってパワンを国境へ連れて行く警察官とか、心を打たれて二人を助けることになる人たちが実に人間らしく魅力的で、その優しさに胸を打たれる。

だいたいこのパキスタン記者がいないと、多分どうにもならなかったろうし(笑)

そして気づいたんだけど、彼が持っていたハンディカメラ、なにげにソニーでしたねえ。
なんか嬉しくなった。

そしてもうひとりの主人公のシャヒーダを演じるハルシャーリー・マルホートラちゃんの、幸せを願わずにはいられない、すべての感情を表現する無垢な眼差しと、天使のような笑顔が素晴らしい。

オーディションで5000人の中から選ばれ、初の映画出演となったが、それまでもTVドラマやコマーシャル出演とかはあったらしい。

ということは演技経験もあり、あの泣きのシーンもちゃんと理解して演技してたんだねえ、凄い。

 今なおインドとパキスタンの間での紛争は続き、そんな不安定な情勢の中で生活を送っている人々。

この映画をきっかけに、私はこの2国に何があったのかを調べることにもなったんだけど、宗教とは本来人が幸せになるためのもののはずなのに、なぜにこうも人を生きづらくさせるものなのか。

実際にはおとぎ話のような展開なんだろうが、二つの国が自由に行き来できる平和な時を、待ち望んでいる人たちもいるというメッセージを強く投げかけくる。

そして受け継がれる憎しみの連鎖が、次の世代の子供たちへ向けて断ち切られることの願いを、さらに強く感じる。

動員されたエキストラ7000人もの人たちが見守るなか、ナローワル国境検問所でパワンとシャヒーダが抱き合うシーンは、平和の象徴として描かれたが、この感動のラストシーンでさえも、二つの国に別れた人たちが中央に入り乱れて祝福し合うというシーンには、発展できないんだよねえ。

でも今こんな荒んだ時代だからこそなのか、これだけ無垢な映画も素直に受け入れられることができ、もう涙が止まらなかった。
素敵な作品でした。

 期待していたBlu-rayの映像特典は予告編のみだったけど、10ページの特製ブックレットが入ってました。

その中には、映画パフレットみたいな記事があり、ちょっと特した気分だったが、本作の公式サイトのプロダクションノートというのを見ると、なんとブックレットに書かれていたものと、全く同じものが載ってました、がっくり(涙)

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このレビューをアップした時点で、残念ながらPrime videoでは配信されていません。(2022/10/24)

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