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映画『ブリット』レビュー ★★★★

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 サンフランシスコ市警のブリット刑事(スティーブ・マックィーン)は、チャルマース上院議員(ロバート・ヴォーン)から、近く行われる聴聞会の重要な証人となる男ジョー・ロスの警護を、直々に依頼される。
すぐに指定された古いホテルへ向かい、部屋の中にこもっていたロスに、ブリットは窓には近づかないように注意し、40時間自分と部下のデルゲッティ、スタントンの3人が交代で警護すると伝える。

しかしその日の深夜1時にホテルのフロントから、チャルマースと友人の二人が来ているという電話が入る。
スタントンはすぐにブリットに電話しその旨報告すると、自分が来るまで待てといわれたが、電話を切った瞬間、鍵がしてあったはずのドアからいきなり押し入ってきた二人組に、スタントンとロスはショットガンで銃撃され、重傷を負ってしまう。

救急車の中、ブリットはベッドに横たわるスタントンから、部屋の鍵をロスが開けたこと、そして犯人の白髪の男の特徴を聞く。

まもなく二人が搬送された病院へやってきたチャルマースは、ブリットの無能ぶりを激しく叱責する。
そんな中、病院へ再び白髪の殺し屋がやってくる・・・。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:1968年/アメリカ/113分
  • 監督:ピーター・イェーツ
  • 脚本:アラン・R・トラストマン/ハリー・クライナー
  • 音楽:ラロ・シフリン
  • キャスト:スティーブ・マックィーン/ジャクリーン・ビセット/ロバート・ヴォーン/ロバート・デュヴァル

レビュー

 以降のアクション映画に多大な影響を与えた、サンフランシスコの坂道を猛スピードで追跡するシーンが、今なお語り継がれるピーター・イェーツ監督の「ブリット」をBlu-rayで観る。

 たぶんずいぶん前に一度は観ているはずなのに、この有名なカーチェイスのシーン以外記憶がなく、初めて観るように最初から最後まで、ずっと痺れるような緊張感を味わうことができた(^^)
忘れっぽいということが、こんなことに役立つとは。

 オープニングから伝わってくる空気感が、ちょっと前に観た「ダーティーハリー」に似てるなあ、なんて感じていたら、音楽が同じラロ・シフリンだった。
なるほど、「ダーティハリー」も本作の影響、確実に受けてるね(^^)

 徹底的にリアルを追求するために、オープンセットを使わず、サンフランシスコの街並みや空港、そして病院でも実際の病室にカメラを持ち込み、本物以上の演技はないと主な俳優以外は、すべて役者ではなく医者や看護婦をはじめ、本物の人たちを出演させている。

それによって痺れるようなリアルな空気感と緊張感、さらに生々しいスリルを生み、その中で縦横に躍動するスティーブ・マックィーンのかっこいいこと。

とにかくマックィーンの体全体から溢れるスターのオーラが際立っており、動いている姿を見ているだけで惚れ惚れとしてしまう。

出典元:https://www.amazon.co.jp/

劇中で多用されるマックィーンの顔のアップで写るブルーの瞳は、時に獣のように鋭く、時に湖のように深く澄み渡る。

さらに刑事物の定番として、彼らは常に忙しく、着る服には無頓着で、大抵は同じ服をずっと着てるんだけど、ブリットはコートやハイネックのセーターなど一人だけ着替えてるし、それを鮮やかに着こなしている。

そう、本編のどこを切り取っても、スティーブ・マックィーンの精悍さと男臭さの魅力が目に焼き付いてしまうのだ。

そしてやはり伝説となった、サンフランシスコの街の中を猛烈なスピードで爆走するフォード・マスタングとダッジ・チャージャー2台のカーチェイスのシーンは、圧巻のクオリティで見せる。

実際にマックィーンも運転しているが、そのほとんどはスタントのドライバーだったらしい。
さらにタイヤが外れる危険があったと、街を歩く人もすべてスタントマンを配置していたと、メイキングで語られていた。

ただ見終わった後、マックィーンは最高にかっこよくて素晴らしい作品だと感じたんだけど、ブリットってなんであんなに頑張ってんだろうって考えてしまった。

そういえば権力にも全くひるむことなく突き進むブリットの、バックボーンとなるエピソードがほぼないんだよね。
なので伝わってくるのはマックィーンという俳優自身が発する、激しい反骨心と彼のこれまでの人生の深みというか、マックィーンが刑事をしたらこんな感じなんだろうという、ブリット独自のキャラクター性が見えてこない。

 意識的な乾いた演出だと思うが、徹底的なマックィーン推しは分かるんだけど、本作には感傷的なシーンがほとんどなく、クールな見た目ばかりが強調され、微妙な情緒を感じさせるシーンをもう少し入れて欲しかったかなあ。

唯一その乾きを癒やす存在として、ジャクリーン・ビセット演じるキャシーが、恋人役として登場するんだけど、美しさで花は添えているがブリットに寄り添っている感じもないんだよね。

ラストにそのクールな演出が最高に効いてくるんだけど、感情を揺さぶられるエピソードを何か一つ、加えて欲しかったと思うのは余計なことかな(^^;)。

 それでもラストの舞台となる空港で、自分の名をあげることしか考えていないチャルマース上院議員に、唯一ブリットが感情を露わにした、

「消えろ!胸くそが悪いぜ」

とストレートに感情をぶつけるシーンは、ブリットの心の中が垣間見える一番の見所でした。

マックィーン好きには絶対に外せない、アクション映画の傑作です。

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