あらすじ
朝日を受け穏やかな水平線の向こうに浮かぶ、一隻の漁船。
高校生のルビー(エミリア・ジョーンズ)の一日は、早朝から父フランクと兄レオと3人で、トロール漁に出ることから始まる。
漁が終わるとすぐに学校へ向かうという毎日で、疲れから授業中に居眠りをすることも。
それでも母のジョーンズを含めた家族4人の中で、ルビーだけが耳が聞こえるという環境を抱え、幼い頃から通訳として家族を支えていた。
そんなルビーも新学期を迎え、友人と一緒に部活動をどれにしようか迷っているとき、偶然気になっていたクラスメイトのマイルズが合唱部を選んだことを知り、自分も合唱部に入ることにする。
合唱部初日は不安から逃げ出してしまうが、部活顧問のベルナルド先生の話を聞き、なんとか続けることに。
そしていち早くルビーの才能を感じたベルナルドは、ルビーに名門の音楽大学への進学を勧めるが・・・。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:2021年/アメリカ/111分
- 監督・脚本:シアン・ヘダー
- 音楽:マリウス・デ・ヴリーズ
- キャスト:エミリア・ジョーンズ/トロイ・コッツァー/マーリー・マトリン/エウヘニオ・デルベス
- 公式サイト:映画『Coda コーダ あいのうた』公式サイト
レビュー
フランスで4週連続No.1と大ヒットした映画『エール』をリメイクし、第94回のアカデミー賞の作品賞・助演男優賞・脚色賞の3部門を受賞した『コーダ あいのうた』をPrime videoで観る。
この年のアカデミー賞といえば、あのウィル・スミスのビンタがすぐに浮かんでくるんだけど、ここばかりフォーカスされたせいで、私は作品賞がなんだったか全然知らなかった。
ウィル・スミスよ、いい加減にしろよ(笑)
あまりの評判の良さにBlu-rayに目をつけてたんだけど、偶然Prime videoで無料で配信されていたのを発見し、すぐに鑑賞。
ヒロインが様々な苦難を乗り越え、最後に素晴らしい歌を披露して大感動なんだろうと、始まってすぐに王道のストーリーが予測できた。
実際予測の範囲で展開していくんで、その通りに予定調和をなぞった先に待つカタルシスがどうなるのか不安に・・・。
見終わった今、予想を超えて、最高に優しい感動に包まれ、久しぶりにあったか~い涙を流しています(^^)
素晴らしいです。
まずタイトルの「Coad(コーダ)」って、名前だと思ってたんですが全然違いました(^^;)
「Children of Deaf Adults」の略語で
“耳の聴こえない両親に育てられた子ども”
という意味でした。
さらに音楽の用語で「楽曲を終わらせるために付け加えられた終結部」なんて意味もあるようです。
この二つの意味をリンクさせていたんですね。
家族を守る責任感と、自分の中で目覚めた夢への願望の狭間で、健気に日々を生きるルビーに、身近にいる大切な誰かを無意識に重ね、激しく愛を注ぐ目でずっと彼女を追っていくことに。
そしてそんな観るものの思いを汲み取っていくように、ルビーを取り巻く環境が徐々に変わっていく様が実に心地よく、合間に合間に挟んでくる下ネタの不快感を払拭していく(爆)
ほんとアメリカって、ハードルの低い下ネタが好きなんだよなあ(^^;)
ルビーを演じるエミリア・ジョーンズは、私は初めて見る女優さんで、端正な顔立ちにその力強いまなざしと素晴らしい歌声を聞き、すっかりファンになってしまった。
彼女の他の出演作品はと調べてみると、「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」に子役で出演してるようだけど、他はあまりぱっとしない作品にいくつか出てる程度。
あとはイギリスのTVドラマでレギュラーになってました。
本作は大抜擢だったんでしょうね。
これからの活躍が期待されます。
あとルビーの家族にキャスティングされた役者さんは、実にナチュラルに手話とか演技をこなして、さぞかし大変だったろうなと思っていたら、実際に聴覚にしょうがいをもたれた俳優さんだと後から知り、だからかと納得した。
しょうがいを抱えてなお逞しく生きる力強さが、自然にあふれていて、お互いを支え合う家族の絆がリアルに感じられました。
そしてやはりベルナルド先生との出会いが、未来への歯車を進めるきっかけとなり、大きな力になってましたね。
こんな運命的な出会いは誰もが渇望するものであり、こんな出会いが人生に大きく関わってくるんだから、この広い世界で誰かと出会うということは、やっぱり奇跡なんですね。
ここから後半の話になるので、ネタバレしています。
【ネタバレあり】
劇中とても印象的なシーンがありました。
後半に合唱部の発表会のシーンがあるんだけど、そこでは一緒に練習したマイルズとルビーが二人並んで歌うシーンがあります。
当然ここが一番の見せ場だなって聞いている中、突然音が全く聞こえなくなります。
それは客席にいたルビーの両親と兄の、音のない世界そのものだったんです。
聴覚のしょうがいがあるけど、明るくて賑やかで楽しい家族だなあ~なんて思っていた自分に、それは強烈な疎外感を共有するものでした。
最初の方で両親が夢見る娘をなぜ応援しないんだろう、なんて簡単に思っていたけど、そんな生やさしいことではないという現実を認識させられるものだったんです。
素晴らしい演出でした。
そして最後に気になったのが、ラストシーンで旅立つルビーが、見送る両親と兄に向かって、車の窓から贈る手話の意味ですね。
よく見ると「I love you.」の手話に、さらに人差し指と中指をクロスさせていて、これはさらに愛を強く伝えるという「I really love you.」に進化し、
“あなたたちを本当に愛している”
という意味だって。
大団円で賑やかに幕を閉じるラストシーンもいいんですが、このおさえたしっとりとした余韻がいつまでも胸に染みるラストシーンも、私は好きです(^^)
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