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映画『Dearダニー 君へのうた』レビュー ★★★

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

1970年代のロックの大スター ダニー・コリンズは、ステージで大観衆を前に当時のヒット曲「ヘイ・ベイビードール」をのりのりで披露したあと、楽屋でなぜか落ち込んでいる。

何年も新曲は書いておらず、若い妻は浮気をし、薬づけの上に歌への情熱も失っていると感じたマネージャーのフランクは、誕生日に驚きのプレゼントを持ってくる。

それは43年前にダニーへ届くはずだった、ジョン・レノンからの手紙。

そこには今の堕落してしまった自分を予見するように、
「金持ちで有名になることで君の音楽は堕落しない。音楽と自分自身に忠実であれ。」
と書かれていた。

そんなジョンの言葉に目が覚めたダニーは、すぐにニュージャージへの旅の支度を始める。

目的は新しく曲を作ることと、30年前酔った勢いで関係を持ってしまった女性の、顔を見たこともない息子に会いに行くことだった。

作品データ(ネタバレあり)

レビュー

 ”人生は何度でも輝く。離した手も、またつなげる”

 ジョン・レノンの30年前の手紙が発見されたという実話から、ダン・フォーゲルマンが発想を膨らませ初の監督作品となった『Dearダニー 君へのうた』をBlu-rayにて鑑賞。

「フェイク」や「ディアボロス」以来、アル・パチーノの出演作は観てなかったので、久しぶりに観てみようと思い本作を観ることに。

アネット・ベニングもずいぶん久しぶりだしね(^^)

 最初にこれは実話を元にした映画だと字幕が出る。

当時もちょっと話題になったその実話とは、イギリスのフォークソング歌手スティーヴ・ティルストンが、デビューして間もない頃に受けた雑誌のインタビューで、「富や名声を得たら音楽作りに大いに影響が出る」と答えた記事を読んだジョン・レノンが、彼に送った手紙が30年の時を経て現れたというもの。

この実話を膨らませた脚本の段階から、主役のロックスターはアル・パチーノと決めていたという無鉄砲なフォーゲルマン監督も凄いが、まったくイメージがないミュージシャン役のオファーを受けたアル・パチーノの意欲も凄い。

冒頭からアル・パチーノがかつてのロックの大スターとしてステージに登場し、無難に歌声を披露するシーンは、絶頂を過ぎたスターの哀愁と相まって、思ったより違和感は無かった(^^;)

ただ、もう最初からアル・パチーノの役じゃない感が止まらないんだよね(笑)

でもジョン・レノンの手紙読んでから、心機一転まっとうな人間になろうと決心し、ニュージャージーに到着してから、やっと颯爽と振る舞う姿や、矢継ぎ早にテンポよく会話するパチーノが観れて、なんだかほっとする。

いつも深刻な表情に、ハイテンションで大声をだしているイメージが強いパチーノだが、本作はあくまでもローテンションで、情けない表情や笑顔に、楽観的なキャラクターが新鮮だった。

改めて思ったが、アル・パチーノってコメディ映画に出演したことってあったかなあ。
彼の出演作を全部見た訳ではにので分からないけど・・・。

そんな中、もっとも彼がらしさを見せたシーンがあった。

それは息子の家の隣人が、庭の手入れをしているところに現れ、全く違う名前を大声で呼ぶところ(爆)
このわずかな傍若無人ぶりが発揮されるシーン、好きです(^^)

さらにパチーノが醸し出すオーラが役と一体になり、出会う人がそのオーラに圧倒される様が、とても面白く描かれていて楽しい。

そんな中やはり一番の見所は、パチーノとアネット・ベニングの、観てるだけでわくわくしてしまう掛け合いですね。

この二人が一緒に同じ画面に映り、テンポよく演技合戦を繰り広げているシーンを観れただけで、本作を観た甲斐があったと確信する。

つい先日、「グリフターズ/詐欺師たち」を観たばかりだったので、アネット・ベニングもそれからずいぶん歳を重ねてたけど、スタイルといいキュートな笑顔も変わらず健在だった。

できればあのメガネをちょっとでも外して欲しかったかなあ。

ただねえ、この贅沢にキャスティングした名優たちで、それなりに観ることはできたんだけど、後半に向けての演出が残念でしたねえ。

【ここからネタバレ】






まずどれも設定があざといというか、盛り上げるために息子のかわいい娘はじっとしていられない多動性障害とか、その息子はまさかの白血病で妻は妊婦って、ちょっと盛りすぎでしたね(^^;)

さらに肝心の劇中で歌われる曲が、驚くほど印象に残らない。

そこは作曲者の力不足で、パチーノのせいではなく、無理をしてミュージシャンにチャレンジした彼がほんと気の毒だった。

30年ぶりに作曲に取り組んで作った新曲が、息子の家族を想う父親としての愛が曲に乗って浮かんできたとか、もう少し家族の再生とリンクしてたらとも思ってしまった。

最後にその歌をステージで披露しないという選択も、どうだったんだろう。

それでもやはりラストのダニーと息子が手を握りあい、診断結果を待つ姿は、感動的で胸を打つものだったが。

そしてここで終わりなら、パチーノがミュージシャンである必要があったのかな、なんてことも思ってしまった。

最後に一番致命的だったのは、全編に流れるジョン・レノンの名曲を、私は「イマジン」以外あまり聞いたことが無かったこと。

ほんとうに申し訳ない!

ジョン・レノンに想い入れがあり、アル・パチーノの珍しいコミカルな演技を観てみたいという方にとっては、必見の作品だったのかな(^^;)

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