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映画『グリフターズ/詐欺師たち』レビュー ★★★☆

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 競馬場にやってきたリリー(アンジェリカ・ヒューストン)は、掲示板のオッズを確認し、そのオッズが一番高い馬券を大量に購入することで、その数字が下がっていくのを確認する。

一方バーにやってきたロイ(ジョン・キューザック)は、いつものようにお金を渡す寸前に、紙幣をすり替えるといういかさまをやったが、店主に見破られ、激しく腹を打ち付けられ悶絶する。

そして宝石店にやってきたマイラ(アネット・ベニング)は、持ち込んだダイヤが偽物だと鑑定されたが、色仕掛けで店員をたぶらかす。

 ロイがホテルの部屋で、腹に受けた打撲により内出血を起こして死にそうになっていたところに、8年ぶりにリリーが現れ、すぐに救急車を呼び病院へと向かった。

なんとかロイの命は取り留めたが、そのせいでリリーは競馬場へ向かうのが遅れてしまい、オッズが一番高い大穴を出してしまい、元締めのボス ボーボーは怒り、リリーがノミ屋の売り上げをごまかしたとして殴り倒し、馬乗りになって手の甲に葉巻を押しつける・・・。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:1990年/アメリカ/109分
  • 監督:スティーヴン・フリアーズ
  • 脚本:ドナルド・E・ウェストレイク
  • 原作:ジム・トンプスン
  • 音楽:エルマー・バーンスタイン
  • キャスト:ジョン・キューザック/アンジェリカ・ヒューストン/アネット・ベニング

レビュー(ネタバレあり)

 暗黒小説家ジム・トンプソンの1963年の同名小説を、マーティン・スコセッシが製作に携わりスティーヴン・フリアーズが監督した『グリフターズ/詐欺師たち』をBlu-rayで観る。

フリアーズ監督は本作で第63回のアカデミー監督賞に初めてノミネートされ、アンジェリカ・ヒューストンは主演女優賞、アネット・ベニングは助演女優賞にそれぞれノミネートされた。

出典元:https://www.amazon.co.jp/

 「心の旅」で大好きになったアネット・ベニングの出演映画を探して見つけた作品だったが、彼女の体当たりの演技は、ちょっと衝撃だった(^^;)
しかしその演技が認められたように、以降メジャー作品に連続して出演していくことになり、本作は彼女のステップアップのきっかけとなった。
 
物語はタイトルの通り詐欺師の3人が、生き残るために愛憎含めてその関係が複雑に絡み合い、次第に追い詰められていくクライム・サスペンス映画です。

 オープニングから、三人のグリフターズ(詐欺師たち)が、画面を三分割にしてそれぞれ登場するシーンが実験的で面白かったが、三人が横一列に並ぶシーンでは、アンジェリカ・ヒューストンの貫禄と、アネット・ベニングのはじける若さに挟まれたジョン・キューザックが、申し訳ないほど影が薄くなり、いきなり気の毒だった(^^;)

出典元https://www.amazon.co.jp/

 まず登場するのは、競馬の元締めから依頼され、指定された競馬場で馬券を代行で購入し、オッズを調整するというノミ行為の片棒を担ぐベテラン詐欺師のリリー。

二人目はリリーが14歳の時に生んだ息子のロイで、母親に嫌気がさし家を出たが、結局小さないかさまを繰り返すケチな詐欺師になっている。

そしてそんなロイに近づく謎の女マイラは、色仕掛けで男たちをだましていく詐欺師。

マイラの金に対する執着や、マイラに恋心を抱くロイへのリリーの嫉妬、そして自分を捨てた母親を憎む息子と、人が生み出す様々な感情のもつれは、この三角関係を歪めさせ、生き残るために腹の底で探り合う駆け引きが、ジリジリと悪い方へ向かっていく予感をかき立てていく。

心から人を信じることを否定してしまう詐欺師たちの、はまり込んでしまった泥沼から抜け出せない絶望を、受け入れるしかないそれぞれの悲壮感と虚無感がなんとももの悲しい。

 映像特典のメイキングでも語られていたが、この生々しい人間関係は、まさしくギリシャ悲劇のように、運命にもてあそばれた先に待ち受ける悲劇には、誰も抗えない。

【ネタバレあり】





 金を横領していたことをマイラにリークされたリリーが、組織から逃げるためにロイの部屋に入り込み、額縁の裏に隠していた金をかき集めるという展開は、登場人物の中で、唯一信じられていたリリーの母性愛さえも、最後は自分のエゴの前ではかなぐり捨てられる物だったという事実が痛烈だった。

ただこんな鬼畜のような行動は、現実の社会でも実際に起こっている闇であり、自分本位な思考が招く悲劇は、人間の本性を垣間見るようで空恐ろしくなってしまう。

ラストは真っ赤なドレスを着たリリーが、エレベーターでどんどん地の底に落ちていくように降りていく象徴的なシーンから、夜の街を奥へと遠ざかっていく車は、リリー自身にも逃れられない悲劇が待ち受けているだろう末路を予感させ、そのままエンドロールとなる。

素晴らしい!

特典映像のメイキングについて

 DVDの特典映像で収録されていたメイキングには、脚本家が原作を読んで「暗い」といったんは断ったとか、ジョン・キューザックがインタビューで、フリアーズ監督が初対面でぐるっと彼の周りを回り、いくつか質問しただけでキャスティングされたとかの裏話を語っていたり、15分くらいだったけどなかなか面白かった。

その中で登場したアンジェリカ・ヒューストンの、このメイキングが何年後かのものかは分からないけど、既にいいおばあちゃんになってしまっていた姿はまあいいとして、なぜか肝心のアネット・ベニングのインタビューが全く入ってなかったことだけが残念だった。

最初から最後まで、非常に練り込まれた展開ももちろんよくできていた作品だったが、小悪魔的なアネット・ベニングがみれる、ファンにとっては貴重な作品でもありました(^^)

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Prime video

このレビューをアップした時点で、残念ながらPrime videoは配信されていません。(2022/10/23)

DVD/Blu-ray

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