あらすじ
汽車が通過するはずのトゥーカムケリア駅で、非常綱を引いて無理やり急停車させ、悠然と馬を引いて降りていくダグラス・モーティマー大佐(リー・ヴァン・クリーフ)。
凄腕の賞金稼ぎとして名をはせるモーティマーは、酒場の店主から賞金1,000ドルの男が2階の部屋にいることを聞き出し、その部屋のドアをノックすると、いきなり中から発砲してきた。
慎重にドアを開けると、男は既に窓から抜け出し、馬に乗って逃げようと走り出したが、モーティマーの射程距離の長い改造銃で仕留められる。
保安官事務所へ賞金を受け取りに行くと、別の賞金首2,000ドルのカバナーという男の張り紙があることに気づく。
保安官に場所を尋ねると1週間前にホワイトロックスにいたという情報を伝えた。
さらに保安官は、同じことを聞いてきたモンコという新顔の賞金稼ぎがいたことを教える。
一方ホワイトロックスの酒場に現れたモンコ(クリント・イーストウッド)は、そこにいた保安官にカバナーがいる場所を尋ねると、すぐそこで背を向けて座っている男だと答える。
モンコはそのテーブルのトランプを取り上げ、挑発するようにその男にポーカーの勝負を仕掛ける。
そんな中、保安官は理髪店にいた本物のカバナーに、賞金稼ぎが現れたことを知らせる。
モンコはポーカーで勝ち、賭けたのは命だと偽の男を締め上げているところに、背後でカバナーが手下二人を連れて入ってきた。
鏡越しに3人を確認したモンコは、振り向きざま目にもとまらぬ早撃ちで3人を撃ち倒す。
深夜ある建物をよじ登る男たち。
そこは留置所で、中にいるインディオを脱獄させるためにやってきた手下たちだった。
警備の兵士たちを殺し脱走したインディオ一味の情報はすぐに知れ渡り、賞金10,000ドルが賭けられ、お尋ね者の張り紙があちこちで貼り出される。
ここら辺りで一番大きいエルパソ銀行を狙うだろうと予測したモーティマーは、エルパソへ向かう。
時を同じくして、モンコもエルパソにやってくる・・・。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:1965年/イタリア・西ドイツ・スペイン/132分
- 監督:セルジオ・レオーネ
- 脚本:セルジオ・レオーネ/ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ
- 音楽:エンニオ・モリコーネ
- キャスト:クリント・イーストウッド/リー・ヴァン・クリーフ/ジャン・マリア・ヴォロンテ
レビュー
「荒野の用心棒」の世界的ヒットにより、同じ”名無し”を主人公にし、クリント・イーストウッドとセルジオ・レオーネ監督が再びタッグを組んだ『夕陽のガンマン』をBlu-rayにて鑑賞。
エンニオ・モリコーネのメインテーマ曲に合わせて、銃声が響き渡るオープニングから、ワクワクが止まらない(^^)
ストーリーは偶然出会った二人の凄腕ガンマンが、同じ賞金首を狙っていることを知り、その賞金を山分けにすることで、14人からなる極悪の一味を協力して退治するというシンプルなもの。
ただこのシンプルなストーリーを彩る個性的なキャラクターたちが秀逸で、最後まで見応え十分に中だるみすることも無く、132分を一気に観ることができた。
前作同様に埃まみれの帽子にポンチョをまとい、ひげ面にくわえタバコという、定番の出で立ちに画面に映し出されるクリント・イーストウッドの、抜群のかっこよさとその存在感が素晴らしい。
そして今回新たにキャスティングされたリー・ヴァン・クリーフの個性的な顔立ちに、一目で観るものを黙らせてしまうほどの圧巻の眼差しと、そこから発するただ者ではないオーラは、イーストウッドに全くひけをとらなかった。
いままで50年代の西部劇で脇役に甘んじてただけだったとは、驚きですね、この顔で。
そんな二人が最初に相対し、お互いの帽子を打ち合うシーンは、痺れるような高揚感で満たされる。
最初は反発していた二人が、次第に芽生えさせる友情も、やっぱりいいんだよなあ(^^)
全編を通してセリフを極力無くし、画面いっぱいのアップで映る顔の表情と眼差しだけで、そのすべての感情を観るものに委ねるレオーネ十八番の演出は、ヒリつくような緊張感を生み、画面から目が離せない。
ただ前作の「荒野の用心棒」で早撃ちとか観ていたから感じたのか、カッコいいことは変わらないんだけど、思ったほど銃撃シーンに目新しさはなかった。
それでもレオーネ監督の凄いところは、実はモーティマー大佐は、インディオと抜き差しならぬ縁があったといった、前作では無かった叙情的なエピソードや回想シーンを交え、情感溢れる演出をしっかりみせてくれたこと。
さらにそんな情感溢れる演出を一層盛り上げる、エンニオ・モリコーネのシーンにピタリとはまった、音楽がまた素晴らしかった。
マカロニ・ウエスタンに欠かせない、このモリコーネの音楽の功績は計り知れない。
そしてイーストウッドにレオーネ監督とモリコーネのタッグは、ドル箱3部作の最後を飾る「続・夕陽のガンマン」に続いていく。
特典映像のインタビュー集について
Blu-rayの特典映像に、モンコとは対照的な沈着冷静なモーティマー大佐役は、最初ヘンリー・フォンダにオファーしたが断られ、続いてチャールズ・ブロンソンにオファーするも断られたというエピソードが語られていた。
その時点でまだ「荒野の用心棒」がアメリカでは公開されてなかったので、レオーネ監督の名前は知られてなかったせいだとは思うが、本作はリー・ヴァン・クリーフあればこその作品となっているので、結果よかったんじゃないかな。
あとインディオ一味のアジトが教会だと言うことにも意味があって、レオーネ監督がそれまでのハリウッドの西部劇に感じていた、神に感謝したり、聖人ぶったキャラクターが嫌いで、怒りで暴力も振るうリアルな人間を登場させる西部劇を作りたかったとの話もあった。
だから彼の作品に登場する人物は、どのキャラクターも人間臭く現実的で、ギラギラとその欲望のままに生きる姿は、観るものを引きつけるんだと分かる。
またヴァロンテの過剰な演技が次第に鼻につくようになったレオーネ監督が、抑えるため何テイクも撮り疲れさせたという、おまけのようなエピソードも(^^)
さらにクリント・イーストウッドのインタビューも入っていて、今回も特典映像よかったです。
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