あらすじ
ソフィー(マリオン・コティヤール)とジュリアン(ギヨーム・カネ)の関係は、二人がまだ幼かった頃無邪気に始めたゲームがきっかけだった。
お互いに賭けあうゲームは先生に汚い言葉を使ったり、校長先生の前でお漏らしをしたりと自虐的なものばかり。
それでもいつしかゲームはお互いの絆を確認しあうものになっていた。
そして二人は大人になり、それぞれが家庭を持ってなお続くゲームは、もはや破滅的でさえあった。
一番大切な愛を伝えられないままに二人は・・・。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:2003年/フランス・ベルギー/94分
- 監督:ヤン・サミュエル
- 脚本:ヤン・サミュエル/ジャッキー・キュキエール
- 音楽:フィリップ・ロンビ
- キャスト:ギヨーム・カネ/マリオン・コティヤール/チボー・ベルアーゲ/ジョゼフィーヌ・ルバ=ジョリー
レビュー
”「のる?」「のらない?」”
このフレーズが大流行し、ヨーロッパで大ヒットを記録したヤン・サミュエル監督の長編デビュー作『世界でいちばん不運で幸せな私』を観る。
TSUTAYAでミニシアター系の第3位の棚にあり、やはり世界中で大ヒットと書いてあったので思わず手にとってしまった。
ただこの邦題のとおり、なんとも不思議で強烈なファンタジーなラブ・コメディ作品でした。
イラストレイターや絵本作家としても活躍する監督が描く視覚的で詩的な映像は、『アメリ』のジュネや『ビッグ・フィッシュ』のバートンを彷彿とさせる。
しかし本作はかなりシュールなお伽噺になっている。
幼い頃から続く”相手が仕掛けるゲームに絶対にのる”というゲームの鉄則は、友情から愛情に変わっていくふたりの心を頑なにしていくという展開なんだけど、このゲームが次第に過激になっていく。
まあ周りの人々の迷惑を顧みず続けられるふたりゲームは、観ている方のストレスをおおいにかき立てることに。
しかしちょうど話の真ん中あたりで、ジュリアンがカメラ目線で見ている人達に向けてこうつぶやく。
「うんざりしたんだな、ここからが肝心なんだぞ」
ちょうどこれ借りたの失敗だったかな・・・、なんて思ってる時にこのセリフ。
映画はこちらの気持ちを見透かしたように、このセリフの後素敵な作品に変わっていく。
愛深き故に大人になりきれず、子供の無垢な心と残酷さを抱えたまま傷つけあう二人。
「地獄へ堕ちろ!」
「いいわよ、でも一緒に堕ちて」
観終わった後は、その無軌道な二人に不快な気分にさせられる人もいると思うけど、私は不思議と穏やかな気持ちになり、時間が経つにつれ二人の激しすぎる愛が切なく、そして深く心に染み入ってきた。
なんでこんな気持ちになるんだろうとしばらく考えてたんだけど、その答えはDVDの特典の中で話すヤン・サミュエル監督の言葉にあった。
”「大人になるということは、自分の感情に責任を持つこと。自分自身を受け入れること」”
でもこの映画はいいよって薦めると、絶対反感を買うと思う(笑)
なんとも不思議な映画でした。
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