あらすじ
1939年、ユダヤ系イタリア人のグイド(ロベルト・ベニーニ)は、友人と二人で北イタリヤの田舎町アレッツォにオンボロ車に乗ってやってくる。
途中立ち寄った家の2階から落ちそうになっていた女性ドーラ(ニコレッタ・ブラスキ)を見つけ、なんとか下で受け止めた後、「姫よ、ごきげんよう」といって去って行く。
叔父を頼りに、レストランの給仕の仕事をしていたが、街で小学校の教師をするドーラをみかけ、偶然を装い学校や劇場に現れ、驚きとともに何度も出逢うようになる。
しかしドーラには結婚を約束した男性がいて、グイドが働くレストランで結婚発表のパーティーが開かれることに。
パーティーのさなか、グイドは自らの結婚に疑問を持っていたドーラから、「連れてって」と告白され、いきなり馬にまたがって現れたグイドに、会場の人々があっけにとられる中、二人は会場から馬に乗って去っていく。
そして時は流れ、二人の間には息子のジョズエが生まれ、幸せに暮らしていたが、街には第二次世界大戦の足跡が近づいていた・・・。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:1997年/イタリア/117分
- 監督:ロベルト・ベニーニ
- 脚本:ヴィンチェンツォ・チェラーミ/ロベルト・ベニーニ
- 音楽:ニコラ・ピオヴァーニ
- キャスト:ロベルト・ベニーニ/ニコレッタ・ブラスキ/ホルスト・ブッフホルツ
レビュー (ネタバレあり)
ジム・ジャームッシュ監督作「ダウン・バイ・ロー」や「ナイト・オン・ザ・プラネット」出演で注目された、イタリアのコメディ俳優ロベルト・ベニーニが監督・脚本・主演の『ライフ・イズ・ビューティフル』をBlu-rayで観る。
本作は第71回アカデミー賞で7部門にノミネートされ、主演男優賞、作曲賞、外国語映画賞の3部門を受賞したほか、世界の映画賞を多数受賞した作品。
この年のアカデミー賞は、スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」やジョン・マッデン監督の「恋に落ちたシェイクスピア」に、ピーター・ウィアー監督の「トゥルーマン・ショー」と傑作が奇跡的にそろった、激戦の年だった。
主演男優賞に至っては、ベニーニはトム・ハンクスを破っての受賞と、当時は驚きでした。
いかに本作が世界中で賞賛されたかが分かります。
第二次世界大戦下、幸せに暮らしていたグイドは、ナチスのユダヤ人迫害により息子ジョズエと、ユダヤ人ではないドーラも志願して強制収容所に送られてしまうが、ジョズエに過酷な現実を悟られないために、必死でこれはゲームなんだと嘘をつき続けるが・・・。
公開時劇場で観て以来で、久しぶりにBlu-rayで観ると、特に設定もしていないのに日本語吹き替えで始まったこともあり、とにかくグイドのマシンガントークがうるさいうえに、ずっと適当な嘘ばかりついているので、いきなりこんなだったかと不安になる。
ただ物語が強制収容所へと移り、全く希望もない日々を失っていくだけの、観ているだけで気が滅入っていく展開の中、グイドが想像する嘘だけが、ただ一つの救いとなり、ただ一つの願いとなっていく。
収容所での過酷な強制労働の中でも、考えることは常に妻ドーラと息子ジョズエのことで、労働力にならない老人や子供がガス室に送られるという絶体絶命の危機にも、明るさを失わず機転を働かせ嘘で乗り切っていくグイド。
ラストシーンでは、最後までけなげに命の限り妻と息子のために愛を注いだグイドがたまらなく切なく、それでも人生は美しく、生きるに値するという作品のテーマをしみじみと噛みしめ、涙が溢れた。
実際に行われたナチスによるホロコーストという深刻な題材を、あり得ない展開だけど今までと全く違う喜劇の要素を巧みに溶け込ませるというアプローチで、戦時下でも愛を育み、愛を次の世代につないでいった家族の物語を、画期的な手法で完成させた作品だったと思う。
ベニーニが映像特典のインタビューで、テーマは
この映画は愛の物語だ。純真で純粋な子供を守り、愛と想像力は不滅だという希望を失わないことが大切だ。
と語っていた。
そしてジョズエ役の子役が、集中力はすぐに切れるし、台詞も覚えられないので、とにかくかわいかったけど大変だったとも語っていた(^^)
理不尽に踏みにじられる家族の絆、引き裂かれる愛、そしていとも簡単に奪われる命。
築いてきたそんな絆や愛のもろさ、育んできた命の儚さに触れてなお、人生は美しいといえる意味を考えるとき、いつしか自らもいくつもの過去を顧みていた。
そしてわずかな記憶の中でイメージする何気ないシーンにさえ、幸福感や希望を感じ心が満たされていく。
素晴らしい作品です。
最後に、日本語吹き替え版は騒々しいので、できれば原語のイタリア語で観ることをおすすめします(^^)
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