あらすじ
「おはよう! こんにちは! そしてついでにこんばんは!」
玄関を出たトゥルーマン・バーバンク(ジム・キャリー)は向かいの家の家族に朝の挨拶をし、駆け寄ってくる犬を避けながら車に乗り込み会社へと向かう。
シーヘヴンでのトゥルーマンのいつもの一日は、こうして始まる。
ただこの日はちょっと違っていた。
家の前に突然空から機材のようなものが落下してきて、トゥルーマンの目の前で砕け散った。
照明のような機材を拾い上げたトゥルーマンは空を見上げるが、車から流れてくるラジオで故障機が空から部品を落としたというニュースが流れ、気にすることもなく車の運転を続ける。
そしていつものようにお店で新聞と雑誌を買い、双子の老人と挨拶を交わし、自分の保険会社のオフィスビルへ入っていく。
オフィスで朝買ってきた雑誌を見ていると、ローレンスがやってきて大口の新客が獲得できそうなのでハーバー島のウェルズパークへ行ってくれと頼まれる。
トゥルーマンは歯医者の予約があり行けないと断るが、ローレンスは月末にリストラがあるらしいので行った方がいいと言い残し去って行く。
港に着いたトゥルーマンは、既に横付けしている船に乗り込もうと桟橋を渡ろうとするが、体が動かなくなり引き返す。
子供の頃に父親とヨットで乗り海へ出て嵐に遭い、父親が海に投げ出されそのまま沈んでしまった記憶が蘇る。
あくる日トゥルーマンはいつものようにお店で新聞と雑誌を買い、会社へと歩いているとホームレスのような薄汚れた服を着た老人とすれ違うと、立ち止まりゆっくりと振り返る。
帽子を取る老人の顔を見たトゥルーマンは思わず「パパ」とつぶやく。
すると突然現れた男女が老人の両脇をつかみ連れ去っていく。
トゥルーマンはあわてて追いかけようとするが通行人たちに邪魔され、老人はそのままバスに連れ込まれると、止めようとするトゥルーマンを振り切り走り去っていった・・・。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:1998年/アメリカ/103分
- 監督:ピーター・ウィアー
- 脚本:アンドリュー・ニコル
- 音楽:ブルクハルト・ダルウィッツ/フィリップ・グラス
- キャスト:ジム・キャリー/エド・ハリス/ローラ・リニー/ナターシャ・マイケルホーン
レビュー
類を見ない奇抜なストーリーに、ジム・キャリーが卓越した演技力を見せつけた『トゥルーマン・ショー』をBlu-rayにて鑑賞。
美しいシーヘヴンという町で穏やかに暮らしているトゥルーマン。
ただそこは妻や親友や通りすがりの人まですべてがエキストラであり、ただ一人その事実を知らないトゥルーマンは現実の世界として暮らしているという、架空の世界。
そしてそれを「トゥルーマン・ショー」というリアリティー番組として、生活のすべてが24時間世界中の人たちに向けてTV中継されていた。
まず生まれたときからずっと人工的に作られた世界の中で育っていくひとりの男の生き様を、世界中がTV番組として観ているという、脚本家アンドリュー・ニコルのとんでもない独創的な世界観に驚く。
そしてその完璧な世界が、海で死んだ父親役の俳優が降板させられた不満から突然番組に乱入したり、この世界はすべて偽物でTV番組だと告げる女性が現れることで、徐々にほころんでいくという展開がコメディ要素も含め実に上手く出来ている。
監督は「刑事ション・ブック」や「今を生きる」で詩情豊かな映像に、力強いヒューマン・ドラマを展開したピーター・ウィアー。
ハリソン・フォードやロビン・ウィリアムスもこの監督の手腕により、俳優としての幅を広げたように、ジム・キャリーも本作で俳優としての新境地を開拓した。
本作のジム・キャリーはまさにはまり役で、トゥルーマンの明るさと無垢な人柄に、時々見せる戸惑いと悲しみの表情、そして憂いを帯びた瞳はありえない疑似世界へ観るものを強烈に引込んでいく。
そこにはコメディ映画でみせたオーバーアクションや顔芸は一切ない。
ジム・キャリーってこんなに素晴しい役者だったのかと感心してしまった。
そして神のごとくトゥルーマンを導く?TVプロデューサーのクリストフを演じる、エド・ハリスの他を寄せ付けない風格と厳格さに圧倒的な存在感が、作品のステータスを引き上げる。
ストーリーに俳優と、すべてが私のツボにガッチリとはまった、私大絶賛の映画なのだ。
初めてこの映画を劇場で観て、外に出る頃妙な感覚に襲われた。
自分もトゥルーマンと同じ状況だったら・・・、いや、よく考えたら似たような状況にいるんじゃないだろうか。
多かれ少なかれ、自分の人生が誰かに操作されてる感を感じることはないだろうか。
どうして今こういう状況になっているんだろうか。
そんなことを感じてみょう~な気分になったのを思い出す。
管理体制の下で、操作されてることも知らずに自分の人生だと思い込んでいるトゥルーマン。
親友だと思っていた男も、マイクから聞こえてくるセリフをただ繰り返しているだけの俳優。
なんて切ない設定なんだろう。
そして偽りの世界から飛び出そうともがくトゥルーマン。
ベタな展開だが、なぜか涙が流れてきた。
人生とは誰のものなんだろう。
この一瞬も大切な自分の人生だと思うと、しっかり生きなきゃなあ~、なんて思ってしまった。
Blu-rayの特典映像について
Blu-rayの特典映像として、ピーター・ウィアー監督をはじめスタッフや俳優たちが作品を振り返る「トゥルーマン・ショーの舞台裏」というものが41分ほど収録されていた。
まずピーター・ウィアーはアンドリュー・ニコルの脚本を完璧だったと称えながら、人間ドラマというより壮大なSFに近かったためしっくりこず、映画としてもう少し明るさが欲しいと、現実味を求めて手を加えたと語る。
また制作のエドワード・フェルドマンは、本作はピーターの近未来予想図だと、
”「人は制御された環境の中で生きることになる」”
と語っていた。
あとこの世界の舞台となるリゾート地のような理想的な町を、当初屋外撮影所でとる予定だったが、フロリダに”アメリカ南部独特の街並みを再現すること”というコンセプトの元に作られた町を捜しだし出したということで、セットではなく本当にこんな町があったことに驚いてしまう。
ただここでとろうと即決し製作準備に入ろうとしたが、町の開発者に承諾を得られず撮影を拒否されたとのこと。
そこをなんとか制作のエドワードの説得のおかげでなんとか許可を得たという。
さらにキャスティングについて、当初クリストフ役には別の有名俳優を予定していたが、ピーター・ウィアー監督が撮影開始後に、イメージが違うと降ろしてしまい役者がいなくなったと制作のエドワードが語る。
しかし代役探しは難航し、撮影中止は免れないギリギリのところで、エドワードの元へ一本の電話が入る。
「エド・ハリスを使わないか」
クリストフのシーンは撮影所で最後にまとめて撮影したとのことで、起用後すぐに撮影に入ることになったエド・ハリススは、短期間の準備で役作りをすることになり苦労したと笑う。
あと特典映像としては、視覚効果についてのドキュメントや未公開シーンなどが収録されていた。
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