あらすじ
裕福な家に育ち19歳となったハロルドは、なぜか母親の前で狂言自殺を繰り返し、一人ほくそ笑んでいた。
彼の趣味は、知らない人のお葬式に参列すること。
そんなある日、ハロルドはいつものように参列した他人のお葬式で、同じように見ず知らずの人のお葬式に参列しては、自動車を盗んで猛スピードで走り去っていく老婆モードに出会う・・・。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:1971年/アメリカ/92分
- 監督:ハル・アシュビー
- 脚本:コリン・ヒギンズ
- 音楽:キャット・スティーヴンス
- キャスト:バッド・コート/ルース・ゴードン/シリル・キューザック/チャールズ・タイナー
レビュー
史上もっとも思いもよらないといわれた60歳差のカップルを描き、今もなおアメリカでカルト的な人気を誇るハル・アシュビー監督作品『ハロルドとモード/少年は虹を渡る 』を観る。
ただそんな人気の作品なのに、映画雑誌「CUT」の特集で、“世界の映画オタクが選んだ史上最高の映画ベスト500!”の65位にランキングされていたのを読むまで、私は全く知らなかった。
あろうことかタイトルさえも知らなかった。
そしてずっとレンタルでもなかったところに、いきなりDVDで発売されたのを発見し、即購入した。
始まって20分ほどは、金持ちの坊ちゃんが母親の関心を得るために、自殺のふりを繰り返しているだけ(っと最初は思ってた)で、退屈のあまり眠くなり、まず初見は途中で見るのを止めてしまった(^^;)
思いがけず数日寝かせることになり、後日万全の態勢で再び最初から見ることに。
同じシーンのあたりでまた眠気が襲ってきたが、モードの奔放な行動に振り回されながらも、生を謳歌する姿に、ハロルドが次第に閉ざしていた心を開き始める展開から、一気に作品にのめり込んでいった。
1972年に公開され、反体制へのメッセージ性から当時全盛だったアメリカン・ニューシネマのくくりに入れられている本作だが、あらゆるものへの怒りを衝動的・破壊的に表現した従来の作品群の中では、異色ともいえる人生の賛歌を描いて見せた作品だったんじゃないだろうか。
扱っているテーマは重いのに、全体の空気はユーモアに溢れ、名台詞を連発するモードに、いつしかハロルドと同じように心が解放され、人生観を見つめなおしていた。
ハロルドの狂言自殺については、エンディングのキャット・スティーヴンスの歌を聴きながら、彼は本当に自殺願望があったわけではなく、人生の目標を見いだせず、ただそういうことでしか自分を表現できなかったんだろうなあ、なんて思えた。
当時のヴェトナム戦争によって病んでいったアメリカの若者たちの、無気力・無関心の象徴がハロルドであり、その対極として描かれていたのがモード。
ラストでモードが選択する決断は、ハロルドに身近に命の尊さを示すものだったんだろうか・・・。
観終わった後もいろんな想いを巡らされる作品だった。
それから、途中モードの腕を一瞬映すシーンがあるんだけど、あの意味を観てる時になにも気づかなかったことが、なんとも悔やまれる。
あそこ気が付かないかねえ~、私(^^;)
ただねえ~、やはりこの年の差カップルの、恋の成就はきついです。
そこだけは寸止めにしてほしかったなあ(^^;)
まあそのあたりの自由な突き抜けた表現が、アメリカン・ニューシネマなんだろうけどねえ。
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