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映画『ドライビング Miss デイジー』レビュー ★★★★

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 1948年ジョージア州アトランタ、一人暮らしの元教師デイジー(ジェシカ・タンディ)は、メイドのアデラに「買い物に出かけるわ」と言い残し、愛車のキャデラックに乗り込む。

エンジンを掛けガレージからバックで出るためにギアを入れ、アクセルを踏み込むが、運転を誤って車は垣根を突き破り、隣の家の敷地へ。

 息子のブーリー(ダン・エイクロイド)は高齢の母を心配し、新車のハドソンとあわせて、運転手を雇うことにする。

何事にも頑ななデイジーは、息子と一緒にやってきた黒人のホーク(モーガン・フリーマン)を受け入れられず、何をするにも否定的でいたが、ある日ホークの粘り強い説得によりようやく車に同乗する。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:1989年/アメリカ/98分
  • 監督:ブルース・ベレスフォード
  • 脚本:アルフレッド・ウーリー
  • 原作:アルフレッド・ウーリー
  • 音楽:ハンス・ジマー
  • キャスト:ジェシカ・タンディ/モーガン・フリーマン/ダン・エイクロイド/パティ・ルボーン

レビュー

 第62回アカデミー賞の作品・主演女優・脚色・メイクアップの4部門を受賞した名作『ドライビング Miss デイジー』をDVDで観る。

本作もブルーレイ化がいまだにされず、ずっと心待ちにしている大好きな作品です。

 主人公デイジーは、元教師ということもあり、凝り固まった倫理観に縛られ、自らを生きづらくさせている、いわゆる頑固おばあちゃん。

そんな頑なな意思と、自覚の無い無意識の偏見がもたらす孤独が、いつも表情を険しく曇らせている。

 当時80歳で主演女優賞を受賞したジェシカ・タンディは、デイジーの長年自らも厳しく自制してきたであろう頑固さと、周りを巻き込んでなお憎めない可愛げを、熟練のバランスで魅せる。

気さくで聞き上手なホークの誠実さに、次第に心を開いていく彼女の、時折みせるようになる笑顔のなんとチャーミングなことか。

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「あっ、今笑った」
なんて、淡々と流れるストーリーに合わせて、ずっと彼女の移り変わる表情を見逃さないように追っている(^^)

 さらに屈託の無い優しさで、そんなデイジーの心をほぐし、信頼を得ていくホークを演じるモーガン・フリーマンの、穏やかな眼差と、キャリアが醸し出す豊かな空気感が、作品にさらなる深みをもたらす。
素敵な俳優さんです。

 いつしかこの二人の名優が交わす、日常の些細な会話ややりとりを、ずっと観ていたいという心地よさに浸っていく。

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 そんな25年に渡って培われる友情がこの作品のメインなんだけど、根底には人種差別があり、黒人というだけで店のトイレが使えないとか、警察官に露骨な態度で尋問されるシーンが映し出される。

その時代の厳しい偏見の実態も、本作はメッセージとして発信している。

そしてキング牧師の演説に出ててくる「無関心」というワードに、デイジーが自らを省みるように、それを見ている自分の胸にも小さな痛みを感じる。

 ただストーリーは心を開きかけたというところから、突然一気に15年ほど飛んでしまうので、一瞬取り残されそうになってしまう。

ふたりはもう何年も会っていないという展開だったが、それでもその間にもゆっくりと育まれたであろう友情を想像し、その友情は生涯にわたって続いていくんだろうと予感させるラストシーンに涙。

 年老いていろいろなものを失っていく中で、誰もが切望するであろう、心を許せる友人の存在がもたらす幸福感。
何度観ても優しい温もりに、心満たされる素晴らしい作品です。

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