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映画『刑事ジョン・ブック 目撃者』レビュー ★★★★☆

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 アーミッシュの村に暮らすレイチェル(ケリー・マクギリス)は、最近夫を亡くしたばかりで、息子サミュエル(ルーカス・ハース)と一緒にボルティモアの姉を訪ねるためにフィラデルフィア駅へ馬車で向かった。

ただ駅に到着するも乗り継ぎで3時間待たされることになり、サミュエルは構内を好奇心いっぱいで歩き回っていたが、トイレで偶然殺人事件を目撃してしまう。

 駆けつけた大勢の警官たちで騒然となった駅で、刑事ジョン・ブック(ハリソン・フォード)は犯人は黒人だったというサミュエルと母親のレイチェル二人から証言を得るため、なかば強引に警察署へと二人を連行する。

署内で容疑者と思われる黒人たちをサミュエルに面通しさせ、何枚もの写真も見せるが犯人と思われるものは見つからなかった。

 その後、また好奇心から署内を歩き回るサミュエルは、いくつものトロフィーが飾られたガラスケースの中に、ある新聞の記事に写る男の写真に目を見張る。

ジョン・ブックは電話をしていたが、ガラスケースの前でじっと自分を見つめるサミュエルに異変を感じ駆けつける。

サミュエルが写真の男を指さすと、ジョン・ブックはその手を優しく押さえゆっくりとうなずいてみせる。

ジョン・ブックが見た新聞記事のタイトルには、麻薬捜査課のマクフィー刑事(ダニー・グローバー)、青少年補導で表彰されると書いてあった。

 殺人事件は意外な展開を見せ、次第にジョン・ブック自身にも危険が迫っていくが・・・。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:1985年/アメリカ/112分
  • 監督:ピーター・ウィアー
  • 脚本:ウィリアム・ケリー/アール・W・ウォレス
  • 原作:パメラ・ウォレス
  • 音楽:モーリス・ジャール
  • キャスト:ハリソン・フォード/ケリー・マクギリス/ルーカス・ハース/ダニー・グローヴァー/ヤン・ルーベス

レビュー

 ハリソン・フォードが最高の演技を示し、大絶賛を浴びたサスペンス映画の名作『刑事ジョン・ブック 目撃者』を観る。

本作は第58回アカデミー賞で、作品賞・監督賞・主演男優賞・脚本賞・編集賞にノミネートされ、脚本賞と編集賞で受賞する。

 サスペンスとしながら、冒頭黒尽くめで古めかしい衣装を着た人たちが映し出され、一瞬何世紀も前の時代劇かと錯覚を起こさせる。

ただ近づいてくる馬車にバックミラーとライトが付いているのに気づかされ、物語は不思議な感覚で静かに始まっていく。

物語の舞台はアーミッシュという、キリスト教の一派で世界から隔離されたように近代化を拒み、外社会からの汚れたものが入り込まないようにひっそりと、そして頑固に暮らす人たちが住む集落。

レイチェルとサミュエルが暮らすこの村は、厳格な規律により統制され、その生活は電気も電話もなく、音楽すらも否定し、その服装は黒を基調とし、あくまでも質素を重んじ自給自足で暮らしている。

 そんな現代文明とはかけ離れた世界で生きてきたふたりが、偶然殺人事件を目撃してしまったことで、外の世界の人間と関わることになっていく。

そして自分たちを守るために警護に就く刑事ジョン・ブックに、ふたりはいままでにない感情を抱いていく・・・。

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 まずサミュエルが殺人を目撃してしまうトイレの緊迫シーンや、ジョン・ブックがじわじわと追い詰められていく展開に緊張感を走らせる。

ただ、途中ジョン・ブックはアーミッシュの村で過ごすことになり、村人たちとの交流や緑豊かな牧歌的風景にそんな緊迫した空気を忘れさせられ、いつしか真犯人より、生きる世界の全く違うふたりの禁断の愛の行方に惹きつけられていく(^^)

このサスペンスとラブ・ストーリーが絶妙に絡み合う展開に夢中になり、一体となって向かえるラストに大きく心を揺さぶられる心地よさといったら。

 この映画はとにかく極力セリフを抑えてられていて、ルーカス・ハースの黒く大きな瞳が印象的なように、主役のフォードやマクギリスの二人も、セリフよりもその顔の表情や眼の動きだけで演技を重ねていく。

 主演のハリソン・フォードの魅力はそのキャラクターになりきる演技力じゃなくて、そのキャラクターをハリソン・フォードそのものにしてしまい、自然に息づくキャラクターに昇華させてしまう力。

演技派俳優のともすると鼻についてしまいがちな演技力は、いかにも作り物のキャラクターになってしまうが、彼はどの役であっても地でやっているような錯覚を起こさせる。

本作の刑事ジョン・ブックはまさしくそんなハリソン・フォードが完璧にマッチした作品だった。

 さらにケリー・マクギリスの屋内の自然光によって浮かび上がる姿は、服装と相俟ってまさしくフェルメールの絵画のように神々しい美しさをみせ、ジョン・ブックへの想いにより移りゆく表情がとにかく魅力的だった。

そして事件などなければ決して交わることがなかっただろうふたりが、納屋の中でカーラジオから流れるサム・クックの「ワンダフルワールド」に乗せて楽しくダンスするシーンは、胸を熱くさせるいちばんのお気に入りシーン(^^)

 このふたりの表情がほんとに素晴しい。

その表情だけで観ている方は確かにこのふたりの心情が伝わってくる。

ラストでは脚本で2ページほどあったセリフも全部削って、二人の表情だけの演技に委ねられたとのこと。

言葉を超えてあふれ出す相手への想いはどこまでも切なく、いつまでも心に残る珠玉の名シーンとなった。

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 本作は私にとってピーター・ウィアー監督を初めて注目させられることになった作品だった。

以降「ピクニックatハンギングロック」やメル・ギブソンの「誓い」などオーストラリアの初期の作品も含め、「いまを生きる」や「トゥルーマン・ショー」などどれも秀作で、私の大好きな監督となった(^^)

 なお、Blu-rayには特典映像はおろか予告編すらなかった、残念。

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