あらすじ
夫婦生活に不満を抱くケイト(アンジー・ディギンソン)は、精神科医のエリオット(マイケル・ケイン)のカウンセリングを受けていた。
エリオットはケイトにその不満を、夫に直接伝えるべきだと助言する。
ある日性への欲求を抑えきれないケイトは、美術館で行きずりの男と関係を持ってしまう。
男の部屋で目を覚ましたケイトは、横でまだ眠っている男を起こさないように静かに部屋を出ようとしたが、なにかメッセージを残そうと机の中を覗いたとき、中にあった診断書から男が性病に感染していたことを知る。
失意の中慌てて男の部屋を飛び出すケイト。
エレベータに乗ったが、男の部屋に指輪を忘れたことに気づき、乗ってきた階へのボタンを押す。
戻ったエレベータの扉が開いた瞬間、突然何者かカミソリで切りつけてきた。
一方下の階でエレベータを待っていた、高級娼婦のリズ(ナンシー・アレン)の目の前で、下りてきたエレベータの扉がゆっくりと開く。
そこでリズの目の前飛び込んできたのは、血まみれで横たわりながらも、必死で手を伸ばすケイトと、エレベーター内の鏡に映った犯人の姿だった・・・。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:1980年/アメリカ/109分
- 監督・脚本:ブライアン・デ・パルマ
- 音楽:ピノ・ドナッジオ
- キャスト:マイケル・ケイン/ナンシー・アレン/アンジー・ディキンソン/キース・ゴードン
レビュー
独特のカメラワークと映像テクニックで、現代サスペンスの第一人者の名を世界に知らしめたブライアン・デ・パルマの代表作『殺しのドレス』を、久しぶりにBlu-rayにて鑑賞する。
昔デ・パルマといえば「キャリー」ぐらいしか知らなかったが、このポスターの挑発的でいてセンスを感じさせるデザインに惹かれてビデオを借りたのを思い出す。
今回観たのは完全版だったのか、観た事ないシーンが結構入ってた。
調べたら上映時間が昔観たバージョンより約4分程長くなっていた。
同じくサスペンスの神様といわれたアルフレッド・ヒッチコックの「サイコ」へのオマージュ的作品といわれるが、当時デ・パルマはやっと現れたヒッチコックの後継者って感じだったなあ。
再婚した夫との不満を抱くケイトは、美術館で会った男と、関係を持ってしまう。
しかし偶然見た男の診断書から性病にかかっていることを知り、慌てて部屋を飛び出しエレベーターに乗ったが、そこで突然現れた何者かに、カミソリでメッタ斬りにされる。
下の階でエレベータを待っていた、高級娼婦のリズは、開いた扉の中にいた血だらけのケイトと、鏡に映った犯人の姿を見たことで、今度は自分が狙われるようになってしまう。
リズとケイトの息子ピーターは、協力して真犯人を追っていくことに・・・。
「サイコ」へのオマージュよろしく、冒頭のシャワーシーンから目線のように艶めかしく動くカメラワークに、顔や目のアップだけで恐怖心理を伝える演出が、ヒッチコックを髣髴とさせる。
また以降デ・パルマの十八番となる、美術館でケイトが迷路の中をさまようがごとく長回しでうつろうカメラワークが素晴らしい。
今回初めて気がついたんだけど、ケイトの心情のように途中でカメラがグラッと揺れて不安定になったりと、かなり細かい演出がされていたんだと感心する。
そしてやっぱり一番のシーンは、もちろんアンジー・ディギンソンとナンシー・アレンのフルヌードのシーンではなく、ケイトがエレベータで襲われるシーン。
最初に振りかざしたカミソリが、ケイトの手のひらにザクッと食い込み、そのまま振りぬく時の痛々しさ。
そのあと滅多切りから、血だらけの腕がエレベータの扉に何度も挟まれて揺れるシーンまで、残酷なんだけど目を離せない見事なカットの連続。
エレベータの中の鏡にスローモーションで映る、血だらけのケイトが助けを求めて手を差し出す姿とカミソリを構える犯人、そいて鏡を見つめるリズの三人が、一つのフレームに揃うショッキングなカットに身震いする。
そしてどこかリアリティのない、ずっと漂っているような浮遊感を感じさせる映像の美しさと、背景の隅々にまでこだわり抜いたカット割りと演出も見事。
完璧なストーリー展開に、衝撃のラストまで見応え十分のサスペンス・スリラーの傑作だ。
ただヒッチコックと明らかに違うところがある。
それはこのわずかに上品な味わいを残すポスターとは程遠い、卑猥で下品な演出(爆)
まあ嫌悪感を感じる程じゃないんだけど、その品の無さは、そんなとこそんなにねちっこく撮る必要があるのってくらいしつこい(笑)
そんなシーンより、ヒッチコックのように女優さんのエレガントな身のこなしや、美しい表情でも入れて欲しかったかな(^^;)
まあそれがデ・パルマだといえばそうかもしれないが・・・。
キャストについては、やはり当時デ・パルマと結婚していたリズ役ナンシー・アレンの、コケティッシュでいてキュートな魅力が光る。
彼女自身にとっても、次回作の『ミッドナイト・クロス』とあわせて代表作となった。
その後デ・パルマと離婚してからは、「ロボ・コップ」以外あまり見なくなったのは寂しい話です。
特典映像のメイキングについて
Blu-rayの特典映像は190分もあり、いまだに全部は観れてない(^^;)
そんな中でも見所は、やはり40分ほどのメイキングです。
美術館のシーンや、エレベーターでのシーンなど、当時のエピソードを監督や俳優達が語ってくれています。
このメイキングは公開から約20年ほど経ったもののようで、久しぶりに見たナンシー・アレンの、相変わらず魅力的な姿に感激し、シャワーシーンではお湯がぬるく勢いもなくて最悪だったと語る笑顔が、最高にキュートでした(^^)
かたや体当たりでケイト役を演じたアンジー・ディキンソンは、公開時は48歳だったということで、このメイキングでは美しい立派なおばあちゃんになってました。
さらにケイトの息子ピーター役のキース・ゴードンは、ふさふさだった髪が・・・(^^;)
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