あらすじ
サンフランシスコのとあるビルの屋上、プールで泳いでいる女性に銃の照準を合わせた男は、引き金を引き女性を射殺する。
事件現場にやってきたサンフランシスコ警察の刑事ハリー・キャラハン(クリント・イーストウッド)は、周囲を見渡し、狙撃場所の検討をつけ、あるビルの屋上へ向かった。
屋上へ着いたハリーは、そこで狙撃に使われた銃の薬きょうと、犯人と思われる「サソリ」からのメモを発見する。
そこには
「サンフランシスコ市当局へ、俺に10万ドル払うまで毎日一人づつ殺していく」
というメッセージが・・・。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:1971年/アメリカ/102分
- 監督:ドン・シーゲル
- 脚本:ハリー・ジュリアン・フィンク/R・M・フィンク/ディーン・リーズナー
- 音楽:ラロ・シフリン
- キャスト:クリント・イーストウッド/アンディ・ロビンソン/レニ・サントーニ/ハリー・ガーディノ
レビュー
監督ドン・シーゲルとクリント・イーストウッドのコンビによって、その後の刑事ドラマに多大な影響を与えた『ダーティハリー』を久しぶりにBlu-rayにて鑑賞。
久しぶりに観たが、ここまで無駄なシーンがまったくない完璧な作品だったんだと、改めて感心する。
サンフランシスコが舞台となっているんだけど、ほとんどがロケで撮影されていて、有名なゴールデン・ゲート・ブリッジや教会に、大きな十字架が立つ公園などが登場する。
カメラアングルが人目線で撮影されたそれらロケ地の臨場感は、まるでそこでほんとうに事件が起きているようなリアリティがあり、ハリーを始めそこに映し出される誰もがその地で息づいているような演出が素晴らしい。
なにより伝説となるハリー・キャラハンというキャラクター誕生の瞬間を、本作で見ることができる。
ハリーのキャラクターを決定づけるシーンがそうそうにあるんだけど、このシーンがとにかく最高にいかしているのだ。
ハリーがお店でホットドッグを頬張ってる最中に、偶然銀行強盗に遭遇し、44マグナムを片手に一人また一人と撃ち倒し、最後に撃たれてうずくまっている犯人に「さあ、どうする?」と拳銃を突きつけてニヤっと笑うシーン、もうたまらないです(^^)
主演がクリント・イーストウッドということもあり、ハリーという男のキャラクターは、荒野の用心棒のガンマンが、現代の刑事として現れたという印象を強く感じる。
またハリーの奥さんが、酔っ払い運転の車に突っ込まれて亡くなったというエピソード以外、ハリーの人となりを語るシーンがほぼないため、彼の奥底に潜む信念は、観ているものに委ねられるというところも、当時としては斬新な設定だったんじゃないかなあ。
まさにどんな手段を使っても悪を許さない、ただ正義を遂行するシンボリックな存在として描かれている。
あと本作以外観たこと無い俳優さんだったけど、連続殺人犯のサソリを演じたアンドリュー・ロビンソンの、鬼気迫る異常者ぶりが、作品の緊張感をラストシーンまで衰えること無くあおり続ける。
完璧な傑作です。
特典映像のインタビュー集
Blu-rayの映像特典で、「ダーティハリー」シリーズについていろんな監督や俳優が語るインタビューが収録されているんだけど、誰もがハリーのアンチヒーローぶりや名台詞に熱狂していて、映画人に多大な影響を与えた愛すべき作品だったことが分かる。
またインタビューでは当時の勝利のない泥沼のベトナム戦争や、犠牲者より被疑者の権利を保護する法に、自分たちも含め大きな不満をもっていた人々から、共感を得たキャラクターだったと語っている。
そして素晴らしい作品を生み出した監督のドン・シーゲルを、みんながリスペクトしたとも語っていた。
こうして法律や権力に縛られず、自らの信念に従って行動を起こすハリーの姿は、以降の刑事ドラマにおけるシンボルとなる。
昔VHSのビデオで録画した、淀川長治さんの日曜洋画劇場で放送された「ダーティハリー」を、私は何度も観ていたので、購入したBlu-rayに当時の日本語吹き替えがしっかり収録されていたことに感動してしまった。
そしてやっぱりクリント・イーストウッドの吹き替えは山田康雄さんしかいません。
ただ、もう捨ててしまったVHSのビデオテープには、淀川長治さんの名解説まで入ってたんですが、そこまではさすがに入ってなかった、残念。
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