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映画『オリーブの林をぬけて』レビュー ★★★☆

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

テヘランから北へ350キロ、ケヘルの地で新たな映画の撮影のために、主役の娘のキャスティングを行っている。
後日主役に選ばれたタヘレを迎えに行くが、タヘレは友達から借りてきた服を着たいとごねてしまう。

「オリーブの林をぬけて」の撮影が始まってすぐ、タヘレの夫役の若者が、女性の前では台詞が出てこないと役を降ろされる。
替わりに連れられてきた雑用係のホセインを迎えて、撮影はすぐに再開される。

しかし今度はタヘレの台詞が出てこず、撮影は中断される。
監督がホセインに事情を聞くと、しぶしぶ告白をはじめた。

実は以前タヘレに会っていて、その時一目惚れし、その日に母親に結婚の話をしたが、激しく反対され、その後も何度か再会したが全く相手にされなかったと語る。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:1994年/イラン/103分
  • 監督・脚本:アッバス・キアロスタミ
  • キャスト:ホセイン・レザイ/モハマッド・アリ・ケシャワーツ/ファルハッド・ケラドマンド

レビュー

 アッバス・キアロスタミ監督コケール・トリロジーの三作目となる「オリーブの林をぬけて」を観る。
以前観た「友だちのうちはどこ?」が大好きで、本作は映画好きの間でも評価が高かったこともあり、いつか観よう思っていたところ、AmazonのPrime videoにありました(^^)

 コケルー・トリロジーの2作目となる「そして人生はつづく」の一場面で登場する、新婚夫婦を演じた男女の恋愛模様を、ドキュメンタリー風に綴っていく物語。

 始まってすぐ、監督役の俳優さんが自分以外はすべて地元の人って言うシーンがあり、「友だちのうちはどこ?」も出演者全員が地元の人たちだったので、今回もプロの俳優さんは監督役以外出演していません。

たぶん演技経験が無いであろう出演者の、表情がとにかくリアルで、撮影シーンやその現場の様子などの映像が流れるので、しばらく今回はメイキングのようなドキュメントかなあ、なんて思ってた。

このドキュメント風に撮影された意味は、すぐに判明する。

そこには日本とは違うイランという国の、独自の生活様式や慣習などが随所に映し出され、厳しい経済事情の中でも逞しく生きる地元の人たちの姿は、作品を通して観るものへの熱いメッセージとなっていた。

また結婚事情についても、ちょっと調べてみたらイランでは求婚は99%が男性からとか、「こういう人がいるけどどう?」みたいな、親戚や近所の人とかの紹介により、女性がOKであれば家族ともどもの付き合いが始まるとか。

そして一番大事なことは、お互いの家族の経済や教育レベルが合っているか、家族の了承があるかどうか。
そんな事情も本作で語られます。

 なかなかはっきりと意思表示をしないタヘレに、ほぼ一方的に求婚を続けるホセインの一途な行動を、そんなお国事情を理解できていればいじらしいと感じるのか、私はちょっと引いて眺めている(笑)

だいたいホセインのタヘレが自分を好きだろうという根拠が、最初の出会いで自分を見たタヘレの目だって言うんだから、その一点でなぜ結婚を承諾してくれないのかと迫れるのか(爆)

撮影の合間に、タヘレがホセインに目も合わせず、ずっと本を見てるんだけど、ホセインがプロポーズの返事を口にするのが無理なら、ページをめくって欲しいって言うシーンがある。
タヘレと一緒に、観ている自分もずっと彼女の手元を凝視している。

そう、ずっとこの恋のゆくえをヤキモキしながら見続けているんだよねえ。
何度もNGを繰り返して、何度も同じ階段のシーンを繰り返し見せられる傍らに(笑)

そしてこの恋の結末は、最後までこの作品を見続けた者へのご褒美のように、最高のラストシーンで締めくくられる。

【ラストシーン ネタバレ】



 小高い丘に固定されたカメラが、ロングショットで野原を奥へと歩いて行くタヘレと、その後を追ってオリーブの林を駆けていくホセインを長回しで映し出す。

もう二人が白い小さな塊ぐらいになったとき、やっと追いついたホセインに、ずっと無視して歩き続けていたタヘレが立ち止まり、振り返って向き合う。

あまりに遠すぎて、声も聞こえず表情も見えない。
ここで見ているほうは、タヘレが何らかの返事をしただろうと推察する。

再び歩き始めたタヘレと、ちょっと立ち止まっていたホセインは、タヘレとは反対の方向、カメラの方へ猛然と林の中をかき分けながら走ってくる。

ここでエンドロールとなり、長時間ワンショットで見つめていた恋のゆくえは、結局見ている者の想像に委ねられる。

強烈なインパクトと素晴らしい余韻を残すラストシーン。
まいりました(^^)

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