あらすじ
1987年アイオワ州、夕暮れに染まるトウモロコシ畑の中で、レイ・キンセラ(ケビン・コスナー)はどこからともなく囁いてくる不思議な声を聞く。
”それを作れば、彼はやって来る”
妻にも聞こえず自分だけに語りかけてくる声に、何かを感じ始めていたレイは、ある日トウモロコシ畑に浮かび上がる野球場と、一人の野球選手の姿がはっきりと見えた。
それは1919年のワールド・シリーズで、八百長試合に加担したとして球界を追放された”シューレス”・ジョー・ジャクソン(レイ・リオッタ)だった。
レイは収穫前のトウモロコシ畑を潰し、野球場作りを始める。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:1989年/アメリカ/107分
- 監督・脚本:フィル・アルデン・ロビンソン
- 原作:ウイリアム・パトリック・キンセラ
- 音楽:ジェームズ・ホーナー
- キャスト:ケビン・コスナー/エイミー・マディガン/ジェームズ・アール・ジョーンズ/レイ・リオッタ/バートラン・カスター
レビュー
89年4月全米で大ヒットを記録し、今もなおロケ地となったアイオワ州の小さな野球場にたくさんの人たちが訪れるという『フィールド・オブ・ドリームス』を久しぶりにBlu-rayにて鑑賞する。
原作はW.P.キンセラの初長編小説「シューレス・ジョー」で、32歳でこの本を読み感動したフィル・アルデン・ロビンソン監督は、6年の歳月を費やしずっと映画化を進めていた。
そして全米で公開された本作は、またたく間に評判となり日本も含め大ヒットとなる。
ただその年の第62回アカデミー賞では、わずかに作品賞・脚色賞・作曲賞にノミネートされただけだった。
アカデミーってこういう夢のようなファンタジー的なものには、結構冷たいんですよねえ(爆)
不思議な”声”に導かれるように、収穫前のトウモロコシ畑を潰して野球場を完成させたレイ。
ただ、しばらくは何も起こらず、さらに収穫量が減ったことで、貯金も使い果たしてしまうことに。
家計は圧迫され、すべてを手放さなくてはいけなくなる危機を迎えていたある日の夕暮れ、レイの幼い娘カリンが窓の外を眺めながら言う。
「球場に誰かいるわよ」
照明に照らしだされた緑の芝生の中にたたずむ、白いユニフォームを着たシューレス・ジョーのなんと美しくも感動的なシーンだろう。
主人公のレイ・キンセラを演じるケビン・コスナーの、善良なアメリカ市民を体現するようににじみ出る誠実さは、あの”声”が確かに聞こえただろうと思わせる。
1989年の「アンタッチャブル」に続く本作のヒットにより、彼はアメリカを代表する俳優となり、そのセクシーさもあわせて女性達を魅了する。
そしてレイの夢を応援する妻アニー役のエイミー・マディガンは、明るくてタフなイメージをナチュラルに演じてみせると、さらに後半からレイト一緒に行動する作家テレンス・マン役のジェームズ・アール・ジョーンズは、複雑な心情を抜群の演技力で表現し、作品を大いに盛り上げてくれる。
他にもシューレス・ジョー役のレイ・リオッタ、さらにムーンライト・グラハム役の名優バートラン・カスターなども加わり、演技派の俳優たちが織りなすアンサンブルに、胸が熱くなる。
監督のフィル・アルデン・ロビンソンは、ちょっと意外だったが本作を含め監督作品は、1992年の「スニーカーズ」などわずか5本しかない。
そんなことも含め、傑作っていろんな条件が揃って奇跡のように生まれるんですね。
あと名前は微かに聞いたことあるが、このシューレス・ジョーとはどんな選手だったんだろう。
スパイクを履かずに、裸足でプレーをしたというエピソードからシューレス・ジョーと呼ばれたこの野球選手は、大リーグでは誰もが知るベーブ・ルースやタイ・カップと並ぶ野球界のレジェンド的存在でした。
そんな彼が所属するホワイトソックスとシンシナティ・レッズが、1919年のワールド・シリーズで対戦したが、当時その戦力からホワイトソックスが優勝すると思われていたのに敗れてしまう。
さらにホワイトソックスの主力選手8人が、金銭を受け取り八百長試合を行ったというスキャンダルが起きてしまう。
1921年、裁判で全員無罪判決となったが、この事件を契機に大リーグの初代コミッショナーに就任したダンディス判事により、シューレス・ジョー含め全員が永久追放となる。
そんな志半ばで夢をあきらめるしかなかった選手達が、レイが作った野球場に現れ、再びボールを握り、バットを振ることを楽しんでいる。
奇跡というよりはありえない話なんだけど、そこにはそんなリアルを超えた素晴らしい感動があり、その後も次々と起こる奇跡は、ついにレイ自身の夢にまで及ぶ。
ラストでは幸福感に満たされた温かい涙が溢れていた。
そしてこの幸福感は、何度見ても少しも色褪せない。
そんな想いをいつまでも心の中に大切にしまっておきたい、私の大好きな作品です。
人は年齢を重ねるごとにいろんなものを失っていく。
それは自分の大切な人だったり、若いころには抱いていた夢だったり情熱だったり。
そんな何かを喪失してしまった人たちに、喪失してしまったものが何かも分からなくなってしまった人たちに、この作品は奇跡のような鮮やかで、無くしたものを甦らせてくれる。
どうしてこんな大事なことを忘れてしまってたんだろう。
ノスタルジーに包まれた遠い記憶は、胸を締め付けるほど切なく、そして愛おしい。
ただ、幽霊が見える球場として、みんなが訪れてくるという展開を、この後どうなるんだろうと考えることは、野暮なんでしょうねえ(^^;)
最後に、たぶん気がつかなかった人が多かったんじゃないかという情報を一つ。
劇中で彼の娘のカリンがテレビを観ているシーンがあるんだけど、それが「ハーヴェイ」という偶然にもつい最近私が観た映画で、2mの白い大ウサギが見えるという善良な男を主人公にした作品でした。
このウサギは誰にも見えないんだけど、このジェームズ・スチュワート演じる男の誠実さに触れていく内に、次第に見える人が現れるという、本作と重なる部分があるこの作品を、しっかりチョイスしてるんですよね(^^)
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