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映画『マーサの幸せレシピ』レビュー ★★★☆

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 ハンブルグにある高級フレンチレストランの、満席で賑わう店内の奥の厨房は、今日も料理人やスタッフたちで慌ただしくも活気に溢れていた。

いくつものオーダーをこなしながら的確に指示を出す、看板シェフのマーサ・クライン(マルティナ・ゲデック)のもとにオーナーが現れ、あなたの料理を褒めてくれている常連のお客様へ、挨拶をしてきて欲しいと言われる。

マーサは料理で手が離せなかったが、一旦冷凍庫に入り深呼吸をして客席へと向かう。

 マーサがあなたのファンだという老夫婦の話を聞いていると、少し離れた客席で「ふざけるな」という声が聞こえてきた。

急いでその客席に行くと、オーナーが相手をしていた男は「このフォアグラは生だ」といって、マーサに皿を突き返してきた。

マーサはちゃんと火は通してあり、理想的な仕上がりだと皿を戻す。
しかし男は完全に生だとまた皿を突き返すと、マーサは

「豚に真珠ね、レバーソーセージがいいなら大衆へ行ったらどう」といい、「もう二度と来ないで」と捨て台詞を残し行ってしまう。

厨房に戻ったマーサを追いかけてきたオーナーは、「あなたが街で2番目に優秀なシェフでなければクビよ」といって立ち去る。

 ある日厨房でいつものように、忙しく料理を作っていたマーサに電話がかかってくる。
それは姉が事故で亡くなったという知らせだった。

病院内の照明も落ちた暗がりの中、一人廊下の椅子に座り涙に暮れるマーサ。

再び病院を訪れたマーサに医者が、8歳になる娘のリナ(マクシメ・フェルステ)には母親が亡くなったことをまだ知らせていないといい、父親の連絡先を聞いてきたが、マーサは名前も知らないので連絡をとりようもないと答える。

さらに医者は、リナはショックで食事に全く手を付けていないので、あなたから説得して欲しいと言われる。

病室のベッドで痛々しい頬の傷が残るリナに、マーサは優しく声をかけるが、母親の死を知らされたリナは、だまってそっぽを向いてしまう。

 マーサは傷心の中、気丈にも厨房にやってくるが、味が濃いと戻ってきた料理と、いまだ癒えない悲しみから冷凍室に入り込み泣き崩れてしまう。

それを見たオーナーは今すぐ家に帰るよう命令する。

 次にマーサはリナに食事を持って行くが、お腹はすいていないといい、どうしてパパと暮らせないのかと聞かれる。

リナから父親の名前はジュゼッペでイタリア人だということを聞き出したマーサは、退院後は父親と連絡が取れるまで、よければしばらくの間自分の家に来てという。

退院したリナを自分の家に向かい入れ、二人での暮らしが始まったが、リナは相変わらず食べたくないと食事もとらず、マーサに全く心を開くことなく、すぐに部屋にこもってしまう。

 翌る日厨房へと戻ってきたマーサは、そこへ見慣れない男が入り込んで大音量で音楽を流し、周りのみんなと和やかに馴染んでいる姿を見て唖然とする。

そこに現れたオーナーは、その男が出産間近のレナに代わる新しい料理人のマリオ(セルジオ・カステリット)だと告げる。

作品データ

  • 製作年/製作国/上映時間:2002年/ドイツ/105分
  • 監督・脚本:サンドラ・ネッテルベック
  • 音楽:キース・ジャレット/アルヴォ・ペルト/デヴィッド・ダーリング
  • キャスト:マルティナ・ゲデック/セルジオ・カステリット/マクシメ・フェルステ/ウルリク・トムセン

レビュー (ネタバレあり)

 2002年のドイツ映画祭の最優秀主演女優賞を受賞し、最優秀作品賞にノミネートされた、サンドラ・ネッテルベック監督作品『マーサの幸せレシピ』をDVDにて鑑賞。

DVDのジャケット写真に
”「幸せ」は、ほんのちょっとのさじ加減”

なんて、素敵なコピーが書いてあり、これは絶対にいい映画だと確信する(^^)

 ハンブルクのフレンチレストランの看板シェフのマーサは、料理の腕は一流だが、ストイックに料理に向き合いすぎて、客からのクレームに度々激怒しては、オーナーから諫められ、”街で2番目のシェフでなければクビだ”といわれていた。

 そんなある日、突然姉が事故で亡くなってしまい、その娘リナを引き取り一緒に暮らすことになる。

ショックから心を開かないリナとの関係に、さらに追い打ちをかけるように厨房に新しく陽気なイタリア人シェフのマリオが入ったことで、さらにストレスを募らせていく。

 仕事への向き合い方が違うと、次第にマリオとの対立を深めていくが、ある日厨房に連れてきていたリナが、マリオが作ったパスタをおいしそうに食べている姿を見る。

マーサの幸せの歯車が少しずつ回り始める・・・。

 ただ完璧な料理を作ることにだけに、唯一の喜びを感じるシェフのマーサ。
自分の料理をおいしく食べている人たちにもまったく興味もなく、自ら自分の料理を食べて楽しむという気持ちもない。

そしてその料理を否定されるや、たちまち烈火のごとく客に怒りをぶつけてしまうという、かなりのこじれ具合をみせるマーサ。

そんな料理一筋に生きてきたマーサのもとに突然現れる、心を閉ざした幼い少女に、心優しい陽気なイタリア人シェフ。

自らも心を閉ざし、不器用に生きてきたマーサは、この二人とぶつかり合いながらも、子を想う母性本能と、男性を愛する心を次第に目覚めさせ、人生において一番大切な幸せのレシピを綴っていく。

人を幸せにするには、まず自分も幸せになること。

一人で完璧な結果だけを追求するのではなく、共に歩んでくれるものと、ただ人生の喜びや悲しみを分かち合うことが、かけがえのない幸せだと気がついていくマーサ。

 マーサの家にやってきたマリオに、散らかし放題にされた台所を見たマーサが呼吸困難になり、紙袋に深呼吸してるシーンなど、これからマーサに訪れるだろう幸せの予感に、観ている方も心が穏やかに、そして温かくなっていく。

ただ中盤までとっても素敵な作品だったのに、終盤にかけてちょっと予想外の展開になっていく。

【ここからネタバレ】




 ここまでの流れから、不器用だった人とのふれあいに、喜びを感じるようになったマーサが、今までの完璧だと思っていた料理に、この思いやりの愛情が加わることでさらに料理の腕が上がり、レストランがもっと繁盛するんだろうなあ、なんて思っていた。

ところが愛を知ったマーサのはずだったのに、相変わらず料理を批判した客を怒鳴り、挙げ句の果ては世話になったオーナーへの迷惑も顧みず、店を出て行ってしまうという所業にでてしまう。

ここでちょっとマーサに共感できなくなってしまった。

おまけに迎えに来た父親と共に、イタリアへと去って行ったリナに情が移ってしまい、なんとリナの気持ちも分らずに、独りよがりにリナを連れ戻そうとイタリアへ向かってしまうというのは、なにか違う気がした。

まあ都合上、マーサはマリオと結婚し、リナも連れ戻して幸せに暮らしていくというエンディングとなるが、この展開、どうだったのかなあ(^^;)

それとなぜラストに料理を絡めなかったのか、料理自体がもう置いてけぼり状態に。
惜しいなあ~

そんなことで幸せ感を若干失ってしまったが、それでもそのマイナスを大きく補う幸せの要素があった。

マーサ役のマルティナ・ゲデックのエレガントな美しさはもちろんだが、それはオープニングやエンディングで流れる、まさしく幸せを感じさせるピアノとサックスのジャズの調べ。

この曲はキース・ジャレット・カルテットによる「Country」という曲で、アルバム「My Song」に入っていて、速攻でiTuneでダウンロードした。

この曲を聴いているだけで、極上のワインでも飲んでるようなリッチでおしゃれな、幸せ気分に浸れます(^^)

素晴らしい曲なので、ぜひ聞いてみて欲しい。

特典映像のインタビュー集について

 DVDの特典映像には、撮影風景や監督・来日インタビューなどが収録されていた。

ネッテルベック監督が、活気あるレストランや厨房の撮影に苦労したという話の他に、子役を使う知識が全くなくて、ただ飽きないように楽しませる努力をしたけど、子供には本気で接するべきだと学んだ、なんて語っていた。

それはもし子供たちが悪いことをしたら、しっかり怒らなくちゃいけない、だって(笑)

またドイツ映画業界の話が出てきて、ドイツのプロデューサーは、企画に重点を置き出演や莫大な製作費、売れるコメディに弱いなんて裏話も。

 本作は2007年にハリウッドにて、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ主演で「幸せのレシピ」としてリメイクされる。

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Prime video

このレビューをアップした時点で、残念ながらPrime videoでは配信されていません(2023/5/28)

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