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映画『デッドゾーン』レビュー ★★★★★

出典元:https://www.amazon.co.jp/

あらすじ

 授業を終えた高校教師のジョニー・スミス(クリストファー・ウォーケン)は、恋人のサラ(ブルック・アダムス)と遊園地でジェットコースターに乗るが、途中突然頭に痛みが走り不思議な感覚に陥る。

サラを家まで送り届けたジョニーは、サラに家に入らないかと誘われるが、「待つほどいい」とそのまま帰ろうとする。
そんなジョニーにサラは駆け寄り、急に降り出した雨の中、二人は抱き合い結婚を誓い合う。

 その帰り道、フロントガラスが霞むほどの大雨の中を車で走っていたジョニー目の前に、突然居眠り運転で脱輪し横倒しになったタンクローリーが現れ、衝突してしまう。

 ベッドで目を覚ましたジョニーに、この病院の院長ウィザック(ハーバート・ロム)と名乗る男が、気分はどうかと声をかける。

ウィザックはジョニーが大変な自動車事故に遭い、ひどいケガをしたことを伝えるが、自分の身には包帯もなくどこもケガをしていないことを疑問に思う。

そこへ現れた両親とウィザックは、ジョニーが交通事故で昏睡状態に陥り、既に5年が経過し、今長い眠りから覚めたことを説明する。

すぐにサラのことを聞くが、既にサラは他の男と結婚したことを知らされ、悲しみに打ちひしがれるジョニー。

 ある日、ベッドで眠るジョニーの病室に入ってきた看護婦が、汗ばんだジョニーの顔をタオルで拭おうとした瞬間、その手をジョニーが激しく掴む。

そのまま起き上がったジョニーの目の前には、激しく炎が燃えさかる部屋の中、泣き叫ぶ少女の姿があった。

ジョニーは看護婦に、まだ間に合うのですぐに娘の所へ向かえと叫ぶ・・・。

作品データ

レビュー (ネタバレあり)

 スティーヴン・キングの同名小説を、独自のグロテスク・ワールドを描き続ける鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督が映画化した『デッド・ゾーン』を、久しぶりにDVDにて鑑賞。

 クローネンバーグ監督が生み出すその世界は、時に不気味でありグロテスクであるけど、その中にはいつも社会から阻害された者たちや異形のものたちの悲しみが描かれており、人間の本質を突く作品は他のサスペンス・ホラー映画と一線を隔す。

1984年のアヴォリアッツ国際ファンタスティック映画祭で、批評家賞、ヒッチコック・サスペンス賞、黄金のアンテナ賞を受賞する。

 本作はクローネンバーグ監督の最高傑作であり、私の大好きな作品です。

 交通事故により昏睡状態に陥ったジョニーは、5年を経て目を覚ましたが、なぜか触った相手の過去や未来が見える能力を身につけていた。

その能力により数々の奇跡を起こすが、どれもジョニーには辛い結果となり、いつまでも心が癒される日はやってこなかった。

そんなある日、偶然握手をした上院議員候補のスティルソン(マーティン・シーン)という男が、大統領となり、核ミサイルのボタンを押すというシーンを予知してしまう・・・。

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ショッキングな映像に最後まで見ごたえ十分のストーリーと、どれをとってもいうことなしの満点です。
なにより本作はあの得意のグロテスクがほとんどないんです。(笑)

 クローネンバーグ作品といえば、最初に『スキャナーズ』を観て異様なラストにめまいを起こし、『ビデオドローム』でホントに自分の頭がおかしくなるような錯覚を起こし、『ザ・フライ』でまさかの涙を流しました。

ただどれも素晴らしいカルト作品ではあるんですが、正直いってあまりにもグロのインパクトが強く、そう何度も観れるものではありません(^^;)

特に『ビデオドローム』の異常さといったら、正気を失いそうで二度と観たくないというか、いまだに観れてません(爆)

そんなクセのある作品と比べて、本作は何度観ても素晴しいです。

昏睡状態の中で最愛の恋人を失い、能力を身につけたせいで最後まで苦しみの連鎖から抜け出せず、それはあたかも神にもてあそばれてる様です。

クリストファー・ウォーケンも最高の演技をみせ、いつも悲しみが宿るその瞳は、特殊な能力により社会から孤立し、はみ出したものの切なさと孤独を強烈に映し出します。

そしてその悲しみは全編を通して観るものの胸を締め付けます。

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【ここからネタバレあり】






 家も引っ越し、ひとり静かに暮らしていたジョニーの元に、上院議員候補のスティルソンの選挙運動として、かつての恋人サラが夫と一緒に訪ねてくる。

忘れかけていたサラへの愛情が、再び蘇ってきたことで涙するジョニーに、なんの偶然かスティルソンと握手をしたことで、破滅的な未来を予知をしてしまい、能力を授かった運命に導かれるように、彼を暗殺することを決断する。

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演説会場で待ち伏せ、ライフルで射撃するが失敗し、反対に側近の男に撃たれてしまう。

ただ最悪の未来は阻止することができた。
そしてここから深い悲しみと切なさで胸が張り裂けそうになるほどの、究極のエンディングを迎える。

銃で撃たれたジョニーは死ぬ間際に、愛していたサラの腕の中にいます。

ジョニーは「さよなら」といい、サラは「愛している」と答える。
涙するジョニーは、静かに息を引き取る・・・。

ここでエンドロールとなり、私はしばらく動けませんでした。

最後にこんなにも切なく残酷な二人の純愛を重ねてくるという、こんな完璧なエンディングがあるんですねえ、素晴らしい。

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特典映像のインタビュー集について

 DVDの特典映像には、クローネンバーグ監督やプロデューサーにマーチン・シーンの、インタビュー映像が収録されていました。

マーチン・シーンの途中でタバコを吸ったり、自分のことを自ら職人気質の役者だとか、役者について熱く語るシーンには全く興味は無かったんだけど(爆)、クローネンバーグが映画作りについてこだわりを語るシーンが貴重でした。

”身近な現実だと思っている世界こそが幻想で、映画を作るというのは世界をそのまま再構築することであり、作品の中で起こったことは全部が現実なのさ”

と、クローネンバーグ監督が語っていた。

クローネンバーグの世界が、他のホラー作品と一線を画す恐怖を感じさせるのは、こういう非現実的であり幻想的な世界を、常に現実的に表現しようとしているところなんだと、勝手に理解する。

 あの粘着性のグロテスクな場面からクローネンバーグはどうもって敬遠されてた方は、安心して観て欲しいです。
いやいや、とにかく多くの人に観て欲しい超オススメの映画です。

最後にメーカーさん、早くBlu-ray化してください!

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