あらすじ
シアトルのあるホテルのラウンジで、ピアノを2台並べジャズを演奏するフランク・ベイカー(ボー・ブリッジス)とジャック・ベイカー(ジェフ・ブリッジス)の兄弟デュオ「ファビュラス・ベイカーボーシズ」 。
演奏が終わったあとのまばらな拍手に、支配人からはギャラを値切られ次のステージのオファーもない。
昔から懇意であったなじみの店では、とうとう休暇を告げられてしまう。
危機感を感じたフランクは、路線を変えるため女性ヴォーカリストを加えることを、ジャックに提案する。
さっそくオーディションを行ったが、37人すべてが音痴だったと嘆く兄弟の前に、30分遅れて生意気で言葉遣いも悪い若い女スージー・ダイヤモンド(ミシェル・ファイファー)が駆け込んでくる。
「ビジネスでは遅刻は絶対に許されない」と、フランクはオーディションを打ち切ろうとするが、「同じこった」とジャックはピアノの前に座り直す。
プロの歌手としての経験も無く、あまり期待せずに彼女の歌う「モア・ザン・ユウ・ノー」を聞いていた二人は、その魅力的な歌声に驚きの表情を浮かべる。
作品データ
- 製作年/製作国/上映時間:1989年/アメリカ/109分
- 監督・脚本:スティーブ・クローブス
- 音楽:デイヴ・グルーシン
- キャスト:ジェフ・ブリッジス/ミシェル・ファイファー/ボー・ブリッジス
レビュー
時代に取り残されたジャズ・ピアニストの兄弟が、新しい女性ボーカリストを加えたことで人気を博していく『恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』をBlu-rayで鑑賞。
スティーブ・クローブス自身が若干23歳の時に書き上げた脚本を、自ら初監督作品と公開され、大ヒットとなった作品です。
この脚本と音楽の演出が実に魅力的で、兄弟愛や男女の恋愛に加え、才能の限界やそれを発揮できずにいるジレンマを、ジャズのスタンダードナンバーでそれぞれの人生を紡いでいく。
全編を包む美しいジャズピアノの調べと、ジャジーな大人感が最高に心地いい、大好きな作品です。
本当の兄弟でもあるブリッジス兄弟の、演技を超えた会話の間やお互いの表情を見つめる視線によって、兄弟愛がリアルに伝わり、微妙なバランスで成り立っていた二人の関係が自然伝わってくる。
スージーがそんな二人の間に加わったことで入る亀裂が、なんとも切なく胸を打つ。
この二人は劇中で本当にピアノを弾いていて、その芸達者ぶりというか才能に感嘆する。
私生活でも、自分は計画的だけど、弟のジャックはジャズのようにその場で決めるとボー・ブリッジスが特典映像で語っていたが、やっぱりふたりは自で演じてたんでしょうね。
ジェフ・ブリッジスはほんと女性の扱いに問題がありそう(笑)
そしてやはり注目は、新たな才能を発揮し、観るものを魅了したミシェル・ファイファーです。
マリリン・モンローのようになまめかしく歌い上げる彼女の美しさと妖艶さは、アカデミー主演女優賞ノミネート、そしてゴールデングローブ賞の主演女優賞受賞という栄誉をもたらします。
ピアノの上を深紅のドレスで艶めかしく「メイキン・ウーピー」を歌い上げるミシェル・ファイファーを、ぐるりと長回しで映し出す官能的なシーンには、思わずため息です。
脚本を読んで、そのキャラクターを好きにならないとやらないと言うミシェル・ファイファー。
一見はすっぱで何も考えてないように見えて、実は自分の意思をしっかりと持ち、夢への希望を見失っていないスージー・ダイヤモンドは、本作でさらなる飛躍を目指す実際の彼女と重なり、繊細で力強い美しさはまさにはまり役であり、彼女の代表作となりました。
劇中で吹き替えなしで歌う彼女の歌声は、一瞬パット・ベネターが歌ってるのかと錯覚するくらいの素晴らしさで、速攻でサントラ盤買いました。
ラストについてはいろんな方が言われてるようにあっさりしていましたが、この次のドラマを予感させ、穏やかな余韻を残すこのラストも私は好きですねえ。
とても完成度が高く、なによりとてもロマンチックな映画です。
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